90秒の別世界 短歌のとなりの物語

著者 : 千葉聡

• 立東舎 (2019年3月15日発売)

感想・レビュー・書評

[ひだまりトマトさんの感想 · 2024年5月14日]

千葉聡さんの歌文集ですね。
歌文集と言え、ほとんどショートショートです。
　「短歌研究」2015年１月ごうの～2018年６月号に連載されていた「短歌のとなりの物語」を集録されたものです。一冊にまとめるにあたり、大幅に修正し、新たに数編を書き加えられたそうです。全部で百首とショートショートが百話。
　短歌のイメージを受けてショートショートを綴る構成です。
　短歌だけを抜粋します。

　笑えるわ今朝見た夢は水道の
　　　蛇口ひねれば流れてしまう
　　　　　　　　東直子『春原さんのリコーダー』

　暗闇の宇宙のなかでうらうらと
　　　春の一日を過ごしましょうね
　　　　　　　　入谷いずみ『海の人形』

　カフカ読みながらとほく行くやうな
　　　惚れあってゐるやうな冬汽車
　　　　　紀野恵『奇妙な手紙を書く人への箴言集』

　地球には関はりもなくながれをり
　　　戸棚のうへの猫の時間は
　　　　　　西田政史『ストロベリー・カレンダー』

　ペルセウス流星群にのってくる
　　　あれは八月の精霊（しょうりょう）たちです
　　　　　　　　　　　杉崎恒夫『パン屋のパンセ』

　優等生と呼ばれて長き年月を
　　　かっとばしたき一球がくる
　　　　　　　　　　　俵万智『チョコレート革命』

　部屋中に煌めきながら散っている
　　　ぬいぐるみたちの冬の通信簿
　　　　　　　　　　　　穂村弘『水中翼船炎上中』

　ごみ箱にナイス・インした紙くずの
　　　どうということなきワン・ルーム
　　　　　　　　　　　　俵万智『かぜのてのひら』

　曲がり角きみの来ている気配して
　　　曲がりてみればつつじ咲く道
　　　　小島なお『サリンジャーは死んでしまった』

　あなたにはその立ち位置でいてほしい
　　　回り続けているオルゴール
　　　　　　　　　　　　原田彩加『黄色いボート』

　高校受験終はりたる子がマンゴーの
　　　睡りをねむる春のゆふぐれ
　　　　　　　　　　　　　　　小島ゆかり『優春』

　ショートショートは、星新一さんのような物語です。二ページで左隅に短歌を配しています。つまり見開きで一つの作品にされています。
　ユーモア混じりですので軽い読み物になっています。時間潰しには良いかな。短歌嵩ですと、左隅に有りますから、ペラペラ捲れば楽しめます。　

[advicekiyomidosuさんの感想 · 2019年8月17日]

見開機２ページで一話となるショートショート。
最後にテーマなる一句。
ショーケース的短歌入門書。

[ayaponさんの感想 · 2022年2月4日]

ショートショート×短歌。気軽に読める短歌入門。

[國學院大學さんの感想 · 2022年1月14日]

國學院大學大学院文学研究科単位取得退学。

著者プロフィール

1968年、神奈川県生まれ。高校教諭。
1998年、第41回短歌研究新人賞受賞。歌集に『飛び跳ねる教室』『今日の放課後、短歌部へ！』『短歌は最強アイテム』『グラウンドを駆けるモーツァルト』、小説に『90秒の別世界』、共編著に『短歌タイムカプセル』、編著に『短歌研究ジュニア　はじめて出会う短歌１００』などがある。歌人集団「かばん」会員。國學院大學、日本女子大学の兼任講師。

「2021年 『微熱体』 で使われていた紹介文から引用しています。」