高瀬舟 (立東舎 乙女の本棚)

著者 :
  • 立東舎
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845638826

作品紹介・あらすじ

人気シリーズ「乙女の本棚」第31弾は、文豪・森鷗外×イラストレーター・げみのコラボレーション!
小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 森鴎外 × げみさんコラボ作品
    「高瀬舟」読みました。
    凄く考えさせられる作品でした。

    江戸時代、寛政の頃。
    いわゆる島流しの刑を言い渡された罪人が京都から大阪に護送させられる時の高瀬舟のなかでの話。
    桜が散る春の夜、護送する(同心という)役目の羽田庄兵衛が乗せたのは、これまで類のない様な珍しい態度が気になった、罪人である三十歳ばかりの喜助という男。
    喜助の身の上話をきいて庄兵衛は心の中で
    色々考えさせられていく………。

    この作品は、自殺幇助、安楽死などの重くて難しいテーマが扱われていた。

    調べてみて、なるほど森鴎外は、東大医学部卒で、陸軍軍医でもある小説家であったからと、このテーマを取り上げた意味を感じた。

    喜助の弟を思う気持ちと、弟が兄を思う気持ちを考えると切なかったし、昔でも今でも罪にするべきか否かは、どうすることもできない問題で、やるせない。
    私が、喜助の立場になったら…
    その時、どうしたらいいのか…悩むだろう。

    また、喜助の身の上話から
    貧しいながらも
    無欲で、
    自分自身の相応の幸福感を持っている事に、
    心を動かされる庄兵衛の心情が描かれていた。
    庄兵衛は自分と比べてどうなのか…?
    とも考えていく…。

    私も庄兵衛と同じように…次から次へと欲を持ち、満足できてない、足りてないという、ネガティブな気持ちでいることもあるかもしれない。
    ただ欲を持つということ自体が、悪いわけではないとは思う。
    ある意味では向上心ともいえるとも思うし…。
    でも、今すでに自分が持っているものに対して、感謝していく、前向きな気持ちって大切だと捉えてみようと思った。

    この作品を読んでみて
    森鴎外の文章、内容、素晴らしいと思った。
    そしてげみさんのイラストも
    この作品の世界観を見事に表現されていて、
    素晴らしく、良かった!

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ヒボさん、こんにちは〜(*^^*)
      ヤット…、読まれたんですね。良かったですね〜♪

      〈高瀬舟〉
      この作品、堅苦しくなくて読みやすいのに、作...
      ヒボさん、こんにちは〜(*^^*)
      ヤット…、読まれたんですね。良かったですね〜♪

      〈高瀬舟〉
      この作品、堅苦しくなくて読みやすいのに、作者の人間に対する情感などが、淡々となんだけれどずっしりと、こちらに伝わってくる感じでしたね…

       この罪人は何か違う…。この罪人のほうが役人である自分より、なんだか幸せそうに見える…それはなぜ、なんだ……!?
      という気になるポイントにグイッと引き込まれて読まされました!
      この本を読んで「足るを知る」
      ってこと、私には難しいなと(やっぱり欲深くなっちゃってるし…などと)反省したり デシタ(笑)

      重くて難しいテーマだったり…
      イラストも作品にピッタリだったりして、いろいろとヤバかったですね、凄かったー(^^)v 
      2023/10/30
    • ヒボさん
      「足るを知る」
      わかっちゃいるんですがねぇ...
      「煩悩」があるから人間なんです!!
      (↑完全に開き直り)
      「欲」があるから頑張れる。
      「欲...
      「足るを知る」
      わかっちゃいるんですがねぇ...
      「煩悩」があるから人間なんです!!
      (↑完全に開き直り)
      「欲」があるから頑張れる。
      「欲」があるから罪を犯す。
      う~ん...
      凡人にはテーマが難しすぎるよ、鴎外!!
      参りましたね(/´△`\)
      2023/10/30
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      そうですね、
      わかっちゃいるんです…ケド…
      m(_ _)m マイリマシタ~ w
      そうですね、
      わかっちゃいるんです…ケド…
      m(_ _)m マイリマシタ~ w
      2023/10/30
  • 昨日1月19日は、森鷗外の誕生日。
    毎年、谷根千にある森鷗外記念館が、無料となります。
    友人を誘い、森鷗外旧居「観潮桜」跡地に建つ記念館へ。友人は、wikiでは、誕生日が2月17日になっているけど?と。まあ旧暦か新暦の違いでしょうとは思いつつ、受付のお姉さんに確認させていただく。
    鷗外自身が、誕生日を1月19日と公表していたので、当館ではその意向を受けて、とのこと。
    鷗外は、文久2年(1862)生まれ、まだ江戸時代、新撰組が活躍し始めた頃。誕生日は旧暦。
    観覧料安いんですけどね。
    平野啓一郎氏が、森鷗外をかなり尊敬する作家として評価されているインタビュー映像なども放映されている。舞姫の解説では、私は今まで全く読めていなかったことを知り、再読必要作品となりました。
    平野さんは、小学生の時「高瀬舟」を読んで以来、全集読破されているとのことで、鷗外の文章から多くの作品について触れていました。
    そして、ショップでは、乙女の本棚「高瀬舟」「木精」が、棚の中央部に迎えられていました。

    私も「高瀬舟」が、初めての森鷗外だったと思います。(もしかしたら山椒大夫かもだけど)
    有名で教科書にも掲載が多いので、知っている方が多い作品だと思います。
    当時、まだその名称を知らずに考えた安楽死のこと。森鷗外は知足と表現している、足るを知るということ。
    貧しくも支え合ってきた弟を殺した心優しき男。
    罪人舟で晴れやかな、男の表情。
    初読から数十年経っても、男の境地にはたどり着けない。
    げみさんの、作品と小説がすごく合っています。

    • おびのりさん
      かなさん、こんばんは。
      これは、ホントに作品と合ってました。
      ちょっとだけ、後光はいらんかなと思いましたけど。d( ̄  ̄)
      木精も楽しみです...
      かなさん、こんばんは。
      これは、ホントに作品と合ってました。
      ちょっとだけ、後光はいらんかなと思いましたけど。d( ̄  ̄)
      木精も楽しみです♪
      2024/01/21
    • おびのりさん
      あっと、1Qさんもこんばんは。٩( ᐛ )و
      あっと、1Qさんもこんばんは。٩( ᐛ )و
      2024/01/21
    • 1Q84O1さん
      あっ、おびさんこんばんは|ω・`)ノ ヤァ
      あっ、おびさんこんばんは|ω・`)ノ ヤァ
      2024/01/21
  • 二十四乙女読了です♪
    げみさんとのコラボ作、鉄板ですね。
    げみさんのイラストに魅せられましたが、内容が深い!!

    発表されたの1916年ですよ!!
    100年前に安楽死というか自殺幇助について...
    森鴎外、スゴすぎーーーー


    <あらすじ>
    この作品は、江戸時代の随筆をもとにしており、財産と安楽死がテーマとなっています。
    作中の舞台は京都の高瀬川。高瀬舟は罪人を島流しにするための小舟で、護送人が同行します。ある日、罪人の喜助が大阪へ送られることになります。喜助は兄弟殺しの罪人であり、その晴れやかな様子に同心は不思議に思います。喜助は自分の苦しい生活から解放されることを喜んでいたのですが、その背後には驚くべき理由がありました。
    喜助は弟を殺した経緯を庄兵衛に語ります。弟は病気で苦しんでおり、自分が彼を安楽死させたというのです。しかし、その行為は法的に問題視されています。作品では安楽死や倫理的な問題が探求されており、読者に考えさせる要素が詰まっています。


    人気シリーズ「乙女の本棚」第31弾は、文豪・森鷗外×イラストレーター・げみのコラボレーション!
    小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。

    次第に更けて行く朧夜に、沈黙の人二人を載せた高瀬舟は、黒い水の面をすべって行った。

    罪人を乗せる高瀬舟の上。弟を殺した喜助の護送を命じられた庄兵衛は、その不思議な様子に興味を持ち、彼に話しかけた。

    森鷗外の名作が、書籍の装画やCDジャケットなどで活躍し、本シリーズでは、室生犀星『詩集『抒情小曲集』より』、小川未明『月夜とめがね』、芥川龍之介『蜜柑』、梶井基次郎『檸檬』を担当するなど幅広い世代から支持を得ているイラストレーター・げみによって描かれる。
    名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
    自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。

    著者について

    森鷗外(もり・おうがい)
    文久2年(1862年)島根県生まれ。小説家。東京大学医学部卒業後、陸軍軍医となり、留学生としてドイツに4年間滞在した。帰国後『舞姫』などを発表し、小説家としても活動をはじめる。またゲーテ『ファウスト』などの翻訳も行った。大正11年(1922年)没。代表作に『ヰタ・セクスアリス』、『雁』、『山椒大夫』などがある。長女の森茉莉も、小説家・エッセイストとして活動した。


    げみ
    平成元年(1989年)兵庫県三田市出身。京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース卒業後、イラストレーターとして作家活動を開始。著書に『夜の隙間に積もる雨』、『詩集『抒情小曲集』より』(室生犀星+げみ)、『月夜とめがね』(小川未明+げみ)、『蜜柑』(芥川龍之介+げみ)、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)、『約束の猫』『トロイメライ』『春の旅人』(以上、村山早紀+げみ)、『げみ作品集』がある。

  • あれ?森鴎外の文体好きかも

    はい、13おネエとなる森鴎外+げみの『高瀬舟』でございますよ

    『高瀬舟』にはいろいろ語りたくなるポイントがあるんですがめんどくさいのでガッツリはしょりますw
    一応「考えさせられますね」とかそれっぽいこと書いておこう

    で文体です
    あれ?森鴎外ってこんな感じだったっけ?
    何作か読んだことあるはずなんだけど、特別好きな作家とかでなかったはず
    でもなんか心地よいかも
    あ、でもあらためて何か読み返そうとも思ってないですけど(おい)

    にしてもやっぱげみさんいいわ〜
    げみさんのイラストいいわ〜
    世界観を壊さない寄り添ったイラストでありつつ幻想的な余白も感じさせる
    他のイラストレーターの方もいいんだけど乙女感出過ぎなんよ
    おっさんにはげみさんがちょうどいいわ〜
    げみさん好きだわ〜

    あ、おっさんじゃなくておネエという立ち位置だった

    • おびのりさん
      たぶん、皆んな、「舞姫」はダメだと思う。
      「青年」は、夏目漱石の三四郎の方が良いと思う。
      歴史物で幾つか好きなのあるけど、高瀬舟と山椒大夫が...
      たぶん、皆んな、「舞姫」はダメだと思う。
      「青年」は、夏目漱石の三四郎の方が良いと思う。
      歴史物で幾つか好きなのあるけど、高瀬舟と山椒大夫が良いです。
      2023/11/03
    • ひまわりめろんさん
      よし『舞姫』読もうw
      よし『舞姫』読もうw
      2023/11/04
    • おびのりさん
      ダメンズ鴎外の巻よ。
      ダメンズ鴎外の巻よ。
      2023/11/04
  •  乙女の本棚シリーズから、森鴎外さんとげみさんのコラボ作品「高瀬舟」です。森鴎外さんと言えば、「舞姫」が好きな私ですが、「高瀬舟」が安楽死を扱った作品であることは知っていました。でも読むのは初めてかな…しかも大好きな、げみさんのイラストとなれば…もう、これは間違いないでしょっ!この作品、乙女の本棚シリーズにハマりだした当初は図書館に置いてなかったんです…でも最近入れてくれたんだけれど、予約のタイミングが遅くなって…そんなこともあったので読むのを楽しみにしてました。

     高瀬舟…島流しの刑を言い渡された罪人を護送する舟、ある夜その舟に乗せられた喜助の様子は他の罪人とは全く異なり、そのことを怪訝に思った役人の庄兵衛は、喜助にそのわけを尋ねる…。喜助は病身の弟を殺めた罪に問われることになったが、弟は自死できず苦しみ喜助に「…どうか手をかしてほしい…」と頼む…。

     なんとも、悲しいけれど…喜助の胸の内は清々しいものに…。私ならどうするか…いろいろ考えました。そして、喜助の弟の立場ならどうか…そんなことも考えました…。喜助の弟は最も信頼している兄だからこそ頼めたんじゃないか…そんな風に私は解釈しました。そして、喜助も弟だからこそ…そう考えると、結末はどうであれお互いにそれだけ大きな存在、家族の愛を描いた作品だと感じることができました。そして、げみさんのイラストはこの作品にぴったり…静寂な夜、ふたりの話す声と川の水面が揺れる音を感じさせるイラスト…幻想的でステキでした。

    • 1Q84O1さん
      やっぱり隠しておきますw
      (*´ェ`*)キャッ♡
      やっぱり隠しておきますw
      (*´ェ`*)キャッ♡
      2023/08/15
    • かなさん
      チーニャさん
      「高瀬舟」期待通りのステキな作品でした(*´▽`*)
      ホント、いろんなことを読みながら考えさせられましたけど
      読んでよか...
      チーニャさん
      「高瀬舟」期待通りのステキな作品でした(*´▽`*)
      ホント、いろんなことを読みながら考えさせられましたけど
      読んでよかったなって思えました♪
      げみさんのイラストもよかったですねぇ…!
      静かな夜の情景…この作品にぴったりでしたね♡
      2023/08/15
    • かなさん
      恥ずかしがり屋で、隠れ乙女の1Q84O1さん…

      ね、やっぱり、乙女の1Q84O1さんより
      隠れ乙女の1Q84O1さんのほうが、
      可...
      恥ずかしがり屋で、隠れ乙女の1Q84O1さん…

      ね、やっぱり、乙女の1Q84O1さんより
      隠れ乙女の1Q84O1さんのほうが、
      可愛いいっ(*´▽`*)♡
      2023/08/15
  • 乙女の本棚シリーズ♪
    森鴎外さん×げみさん

    以前に芦田愛菜ちゃんの「まなの本棚」を読んで、そこで紹介されてた作品で1番気になってたのが、この「高瀬舟」でした。
    それなのに、なかなか文学作品には手が伸びず、、(・・;)
    だけどこのシリーズなら、なぜだか手に取れてしまう〜\♡︎/

    森鴎外さん初めて読みました。
    色々考えさせられる内容だったけど、いい作品だったな〜。

    "足るを知る"という事。
    そして"安楽死"についても。

    高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟。
    その昔、罪人をこの高瀬舟に乗せて島流しにする習わしがあった。
    その道中?、罪人の話を聞いた護送人が胸を痛め、思い巡らすお話。

    自分の当たり前は、誰かにとっては当たり前じゃないかも知れない。
    分かってるつもりだけど、そのありがたみってどうも忘れがちになる。
    何かにつけ、不満ばっかり言ってるな〜って、自分を振り返ってちょっと情けなくなる思いだった。

    安楽死についてはそう簡単に決めれる事ではなく、延命治療の選択は出来ても、それ以上の事は許されてない今の現状に、やっぱり留まるほかないのじゃないかと思ってしまう。
    ただ、そこにはどうしようもない場合や、深い愛情があるからこその場合も多いんだろうなとも思えた。

    今でも京都に流れる高瀬川は、とても風情のある小さな川で、その川にそんな由来があったのかと初めて知った。

    暗い内容だけど、気持ち新たになった気分。
    げみさんのイラストも素敵でした!
    たまに読み返して、自分に喝を入れたい作品だった。


    • mihiroさん
      チーニャさ〜ん♡
      生きてるだけで丸儲けbyさんまさん です笑笑
      ね〜いい言葉ですよね!

      私も一緒です(^_^;)
      もっともっと、って思っち...
      チーニャさ〜ん♡
      生きてるだけで丸儲けbyさんまさん です笑笑
      ね〜いい言葉ですよね!

      私も一緒です(^_^;)
      もっともっと、って思っちゃいますよね〜
      今あるものにちゃんと感謝しなければ、って出来てない私にはめっちゃ刺さりました(~_~;)
      私達、ちょっとこの本のおかげで振り返る事ができて良かったですよね〜笑
      でもきっとすぐ忘れるので、たまに読まないとだ〜ゞ(≧ε≦*) 爆笑
      私の方こそありがとうございます♡♡
      2023/08/18
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      そうですね!!さんまさんの言葉ですよね。(*^^*)
      いい言葉ですよね〜!!
      そして娘さんの いまる ちゃんの名前の由来でもあるんですよね〜...
      そうですね!!さんまさんの言葉ですよね。(*^^*)
      いい言葉ですよね〜!!
      そして娘さんの いまる ちゃんの名前の由来でもあるんですよね〜♡
      2023/08/19
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      mihiroさ〜ん♡

      念願だった…、

      ピカソのゲルニカ!!

      私も観てきましたよ〜\(^o^)/
      あ、この作品のコメントと関係なかった…...
      mihiroさ〜ん♡

      念願だった…、

      ピカソのゲルニカ!!

      私も観てきましたよ〜\(^o^)/
      あ、この作品のコメントと関係なかった…(笑)
      2023/08/19
  • 乙女の本棚シリーズ、げみさんのイラストと物語が絶妙にマッチしていて、イメージが膨らんだ。
    喜助がかなりイケメンに描かれていて♡
    それにしても…この状況だと喜助はやっぱり弟殺しの罪人になってしまうのか。
    安楽死、昔も今も難しいテーマです。

  • 名作!
    罪を犯した罪人を島に送る船で、どの罪人も重たい表情なのに対して、この喜助はとても爽やかな顔をしている。
    不思議に思い、お役人様が喜助に話しかける。
    どういう事情なのか?と。
    弟は自殺しようと、クビに剃刀を当てていた。
    発見時にはもうかなりの出血量で、とても苦しそう。
    兄に剃刀を引き抜いて欲しいと、頼む。
    兄は弟が苦しそうなのを見て、医者を呼びに行こうとするが、弟は、このまま生き抜いても意味がないという。
    剃刀を引き抜いてくれた方が楽になると言う。
    兄は、弟の頼みを聞き入れ剃刀を首から引き抜くが、とにかく出血が止まらない。
    世話をしてくれる近所のおばあさんにも目撃されて、お役人に捕まってしまう。
    兄を思う弟と、弟思いの兄。
    これは犯罪なのであろうか?
    同心のお役人様(庄兵衛)も、悩む。
    でも清々しい顔をしている喜助。
    庄兵衛には、
    空を仰いでいる喜助の頭から毫光がさしているように思えた。
    とても印象深い話。
    げみさんのイラストがとても素敵。
    このシリーズ好き。

  • 教科書で初めて読んだときから、その悲しいストーリーと痛そうな描写でずっと忘れることができない小説の一つである。
    改めて読み返してもその感じは変わらない。
    弟殺しの罪で高瀬舟に乗せられた喜助の話をきいて、その不憫な境遇と顛末に懊悩する護送役の庄兵衛。「それが罪であろうか。」という問いと、朧夜の加茂川をすべって行く高瀬舟の静けさに、胸が詰まる。

  • 小学生のころ(多分)教科書で読んだ高瀬舟。
    比較的好印象で自分の中に残っていた作品だが、改めて読むと、月明かりの照る夜更けに舟の上で、自分の境遇を語る喜助とそれを聞く同心の心持ちが心地よい静けさを醸し出すなぁ、と思いました。
    その静けさをイラストがいい具合に冗長させてる素敵な絵本です。

    心地よい静けさ、というと語弊があるかもしれません。人の際限ない欲と、安楽死のための殺人という深いテーマを盛り込んだ作品なので考えさせられる点は多いのですが、それを押し付けないふんわりとした包み込む雰囲気があるのが心地よいと感じます。

    2023.1.8
    7

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著者プロフィール

文久2(1862)—大正11(1922)。石見国津和野(現:島根県津和野町)出身。明治14(1881)年東京大学医学部を卒業後軍医となり、17年~21年ドイツに留学。40年、陸軍軍医総監・陸軍医務局長になり、軍医として最高職についた。
大正5(1916)年予備役となり、6年帝室博物館長兼図書頭。公務のかたわら、小説家、評論家、翻訳家として活躍。代表作に『舞姫』(1890)、『うたかたの記』(1890)、翻訳『即興詩人』(1892~1901)、『ヰタ・セクスアリス』(1909)、『雁』 (1911)、『阿部一族』(1913)、『山椒大夫』(1915)、『高瀬舟』(1916)、史伝『渋江抽斎』(1916)などがある。本名は森 林太郎(もり りんたろう)。

「2023年 『森鷗外⑦ ヰタ・セクスアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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