やっぱ志ん生だな!

  • フィルムアート社
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845917082

作品紹介・あらすじ

ビートたけしがいま初めて明かす、
「志ん生」「落語」という自らの「原点」。

たけしが志ん生に勝負を挑む!



ビートたけしが最も敬愛する落語家として挙げる5代目 古今亭志ん生。戦後の東京落語界を代表し、「天衣無縫」とも言われた芸風で愛された落語家は、なぜこんなにも人の心を掴んできたのか。本書では、そんな志ん生の“凄さ”をたけし独自の視点で分析。いまのお笑い界、落語界を斬りながらとことん語る!

過去には立川談志の弟子「立川錦之助」として、近年では立川談春の弟子「立川梅春」として、落語を披露することもある。

なぜいま志ん生なのか、なぜいま落語なのか。
ビートたけしが満を持して真っ向勝負に挑む!

芸人としてトップを走り続け、映画界では「世界のキタノ」となり、「究極の純愛小説」を書き下ろし文学界に殴り込みをかけるーー常に挑戦し続ける巨匠であり、異端児でもあるビートたけしの原点である、落語家・志ん生についてたっぷり語った落語論&芸人論。

※巻末に本書内に登場する噺の情報を掲載しています

「ズブの素人が、志ん生さんと落語についてエラそうに語りました。
お笑いください、許してね!」(ビートたけし)

感想・レビュー・書評

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  • 古今亭志ん生を知らない人が読んでも志ん生に興味を持てそうな文章は流石である 解説もあり落語を知らない人も置いてけぼりにはしない作りになっている

  • 口をついて出てくるのは、5代目古今亭志ん生への
    あふれる思い。たけしの解説を読んでは、YouTube他に残る動画も観る。今の時代だからできるマルチタスクな熟読玩味。

    さて本書。戦後の東京落語を代表し、芸風は「天衣無縫」と評された古今亭志ん生。一冊丸ごと、志ん生への敬愛とその至芸を語りながら、他の落語家や漫才・映画について、技法や芸人論・お笑いについて考察も加える贅沢な構成となっている。

    志ん生は、『俺の芸を見ろ、見せてやる』といった談志のような高慢ちきな姿勢は微塵もなく、あくまでも
    落語をお客さんを愉快な気持ちにさせるためのツールと見なしているような達観の境地さえ感じる。とはいえ、芸においては❛神は細部に宿る❜の言葉よろしく
    隅々まで計算された繊細さに施され、その巧さを気づかせないところにまで昇華していると分析する。

    例えば、落語というのは座って行なわれる。そう、上半身の動きだけで複数の人物を演じきる。志ん生の場合、なんと言っても、上下(かみしも)の割り振りが絶妙であると。また、志ん生の十八番「富久」の語りは極めて映画的な手法であると説く。

    この噺は富くじと火事と幇間(たいこもち)の3つがテーマ。年末の下町で繰り広げられるジェットコースタームービー的噺。これが志ん生の手にかかるとストーリー展開・登場人物ともに俄然躍動的となり、映像的でもあると、自身の映画手法も織り交ぜ語る。

    ここで余談をひとつ。
    随分と前、たけしと糸井重里の対談の中で、たけしは「志ん生と談志」の比較論を開陳していた。確かこんな内容だった。

    「志ん生さんはすっごく先鋭的な落語時代からだんだんと年を重ね骨董品の域に枯れていく良さ、所謂『経年劣化ではなく変化』を遂げてて、いつの時代を取ってみても志ん生は良かった。でも談志さんはずっとギンギンだから、味がないんだよな。」

    上梓にあたり、たけしは「ズブの素人が志ん生さんと
    落語について偉そうに語りました。お笑いください、
    許してね!」とコメントしている。

    志ん生は圓生同様、持ちネタの多い落語家で、たけしは今でも就寝時に聴き、また幼い頃、寄席で観ていることもあり、芸人たけしだからこそ分かる巧さ・凄さを見逃さず、見抜き、嘆息する。

    本書とYouTubeの二本立てで数日間どっぷり浸り、
    あらためて古典落語はおもろいなぁとひとりごちる。
    「古くて新しい、今聴いても面白い」と評されるのは噺に出てくる人間が小狡くて、欲をかき、怠け者で、
    噂好きで、鈍臭くて、好色である…。インテリもそうじゃなくても不変であるからで、談志が喝破した
    「落語とは業の肯定である」とはよく言ったものだと
    思う。巻末には、本書で取り上げた噺について、自身のコメントも付け、並々ならぬ思いで「志ん生論」に取り組んだことがうかがえる一冊。

  • 「だいたい志ん生さんに勝っている落語家っていまだに見たことがないんだよ」

    時代を席巻したツービートの漫才。

    列島を爆笑でひっくり返した数多のコント。

    世界に名を轟かせるキタノブルー。

    小説家としても多数の著作。

    故立川談志に弟子入りし、その弟子の立川談春にも再度弟子入りしている著者が、昭和を代表する落語家古今亭志ん生を語り尽くす。

    巨匠と崇め立てられることを嫌い、笑いの最前線に立ち続ける。


    その原点は、浅草での師匠深見千三郎との出会い。

    若き日に師匠から叩き込まれた原点が、本書の中でも度々登場する。

    画家が死ぬまで筆を捨てないように、芸人も最後まで舞台に立ち続ける。

    常に戦い続ける男の、これ以上ない落語論。

    志ん生は、今でも生き続けている。

    挑み続けている。

    そして、勝ち続けている。


    【本書に登場する主な落語】
    「弥次郎」
    「粗忽長屋」
    「鰻の幇間」
    「道具屋」
    「お見立て」
    「富久」
    「黄金餅」
    「寝床」
    「火焔太鼓」
    「あくび指南」
    「大工調べ」
    「人情八百屋」
    「芝浜」
    「幾代餅」
    「野ざらし」

  • やっぱ志ん生ですよ!
    怖くて、とぼけてて、江戸っ子で、無駄がなくて、
    艶があって、フラがあって…
    とにかくやっぱ志ん生は面白い!

    志ん生に憧れて、なりたくて、なれなくて、
    談志になった談志、たけしになったたけし。

    志ん生が大好きで、誰かと語りたいような方は
    「そうそう!」とか、「そこ!それ面白いよね」とか
    はたまた、たけしの芸人目線の分析に感心したりと、
    たけしと二人で志ん生で盛り上がった心持ちに
    させられる芸談でした。

    ーーーーーーーーーー

    ああいうものは普通の努力ではつくれないんだよな。
    一生懸命やって、何度も挑戦しつづけて、
    でも偶然だかなんだかわからない領域でできあがってしまった、
    という類のすごさなんだ。
    古今亭志ん生にも、ああいうものと同じすごさを感じてしまう。

    オイラが落語の世界にいたとしたら、
    絶対に志ん生さん、それから談志さんのことは、
    追い抜いてみようと思っただろうね。
    気持ちとしては一番でないとイヤなんだ。

    おそらく本人も、感覚的にはわかっていても、
    分析できない境地なんじゃないかな。
    ある意味、データの積み重ねを超えた領域なんだよ。

    落語がいまでも聴かれているのは、
    いつの時代も人間は「相変わらず」だから、
    庶民の本質なんてそうは変わらない。

    落語に出てくる登場人物って、欲望に正直なんだけど
    体裁だけは取り繕うとするから、みんな笑ってしまうんだ。

    そこへいくと志ん生さんは、負けず嫌いではあるんだけど、根底に、あくまで落語とはお客を笑いに持っていくための道具である、という考えがあって、「俺の芸を見ろ」というふうにはならない。

    一見、まったく力が入ってないように見えるし、
    人によってはどれだけ笑わされても、
    そのうまさには気づかない。

    志ん生さんがいて、お客がいて、
    みな「この世界を楽しもう」としか考えていない。
    上も下もないんだよね。
    この空間が、自分の芸で楽しくなればいいやとしか
    思ってないのが録音からでもよくわかるよ。
    そういうフラットさをつくれるのも、
    やっぱり味があってこそなんだよな

    「なんだお前の落語、志ん生師匠みたいだな」
    と言われたことがあった。
    「だけどね、お前は映画監督とかやったほうがいいんじゃねえか」
    とも言っていたから、自分よりうまくなる可能性が
    あると思ったのかもしれない。
    まあ、談志さんのことだから、それでも負けないよ、
    というのはあっただろうけど。

    志ん生さんの落語を聴きたくて聴いているんだけど、
    いつのまにか、大好きなおじさんの噺が聴きたい、
    という感じにさせられているんだよな。

    七十代後半の志ん生さんの落語も、わりと好きなんだよね。
    滑舌は悪いし、間もちょっと長くなっているんだけど、やっぱり、うまい。
    これはこれで芸だなと思わせるものがあるんだ。

    「なんかこの人、人前で話すのが好きなだけなんじゃねえか」
    とすら思えてくる瞬間があるんだよね。

    ライブを終えたら、一緒に出た若い連中とよく飲むんだけど、
    そのときに「ウケた」っていうことぐらい、最高のつまみはないよ。
    いまだに、これほど高級な酒の肴はないっていうくらい。
    ある意味、中毒なんだろうな。志ん生さんだって。
    オイラだって、やっぱり客前に出たいと思う。

    芸人同士、だいたい並んだ瞬間に
    「どっちが勝ち」かはわかるんだよね。
    だいたいどちらかが先に頭を下げてしまう。
    オイラはいまでもほぼ負けないっていう自信があるけど
    落語に限っては、
    志ん生さんにはかなわないなっていう意識がある。

    芸人の強さってなんだと言われれば、
    それは「危うさ」なんだよな。

    動物園で人気があるのって、やはり猛獣なんだよね。
    檻があるなら近くで見てみたい。
    金払って家畜を見たってしょうがないもの。
    高座でも、芸人が舞台にいる状態だから、
    みんな安心してゲラゲラ笑うことができるけど、
    もしかして降りてきたら怖いかもしれない。

    実は破天荒なのは高座の芸のほうであって、
    そこがすごいというのがすべての始まりなんだ。
    志ん生さんは志ん生になるために酒を飲んだのではなくて
    ただ酒が好きだから飲んだだけ。
    歴史のエピソードというのは、
    勝手につくられていくものなんだよ。

    志ん生さんは間違いなくスターでもあるんだけど、
    時代状況があってのものではないのがまた、すごいんだ。

    笑いがとれなくて、いろんな芸に目をつけて吸収し、
    ギャグもいろいろと研究して、高座に上がるときには
    それをほんわかとした空気の中で客に届けていた。
    ほんわかして見えるけど、実は蓄積が効いていて、
    シュールで、技術があるのも明らか。
    だから現代の人が聞いても、普通に笑えるんだよな。

    談志さんがよくこんなことを言っていた。
    稽古をつけてもらいにいろんな師匠のところに行ったけど
    一番、稽古をつけてもらっちゃいけないと思ったのは
    志ん生師匠だな。
    …もう教える内容が毎回、違うんだってさ。

    長男の馬生さんが、
    俺たちが正しく噺を覚えても、親父が間違えてやるから、
    俺たちのほうが間違っているように思われてしまう。
    と意見したら、志ん生さんが言ったのは、
    そんなんどうだっていいんだ
    だったそうだ。
    志ん生さんからすれば間違えようが何しようが、
    志ん生の世界がちゃんと伝えられれば
    それでオッケーだと思っていたんだろう。

    なんでいまさら落語に手を出したりするのか。
    それは、動き続けることで自分を保とうと
    しているのもあるんだろうな。

  • 2018/12/20:読了
     面白かった。志ん生の落語を聞いてみたくなった

  • 落語を聴き方を教えてもらえる、そんな本かと思いました。

  • 音源漁ってみるか

  • やっぱ聴かないとな。志ん生を。

  • 鴨焼き、煮込み、冷酒にもりで〆
    近所の蕎麦屋で昼から飲りながら読む。至福

  • 落語の素養もある、たけしの評論は、的を射てますね。
    さすがです。
    書いてある通り、たしかにたけしの語り口は、志ん生に似ていますね。
    気取らず、楽しい評論ですが、志ん生の真髄が分かりますね。

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著者プロフィール

1947年東京都足立区生まれ。浅草フランス座で芸人としてデビュー後、1972年に漫才コンビ「ツービート」を結成、人間の「建前と本音」「理想と現実」との落差を舌鋒鋭く突きまくる芸風で漫才ブームの牽引役となる。テレビに進出後、『オレたちひょうきん族』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』などの人気番組を次々と手掛ける。映画監督としても『その男、凶暴につき』『ソナチネ』『HANA-BI』などの話題作を多数世に送り出す。2016年にレジオン・ドヌール勲章、2018年には旭日小綬章を受章。近年は小説執筆にも力を入れている。著書に『弔辞』(講談社)、『不良』(集英社)、『浅草迄』(河出書房新社)など。

「2022年 『浅草キッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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