インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の〈言語〉地図
- フィルムアート社 (2021年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845920280
作品紹介・あらすじ
顔文字、絵文字、アスキーアート、
スラング、ミーム……
気鋭の〈インターネット言語学者〉が
軽妙な語り口で紡ぐ、
言葉とコミュニケーションの現在地!
本書は気鋭の〈インターネット言語学者〉が鋭い分析をユーモラスに語った、デジタル時代の新たな言語学への情熱あふれたガイドブックである。
大文字の“LOL”が小文字の“lol”になる過程でどう定義や意味が変化したか、日本で生まれた絵文字がなぜ世界で市民権を得たのか、年代によって句読点の使い方が違うのはなぜか、オンライン上での会話で語尾を伸ばすのはどうしてか(「はい〜」「よろしくー」)……など、SNSやチャットなどで使われる、一見無秩序でカオティックな言葉の中にあるパターンや一定のルールをひも解き、人間の言語全般についての理解を深めていく。
また、手紙や印刷機、電話といったインターネット以前のメディアが言葉に与えた影響、方言などの共同体特有の言語とネットワークの関係、スペルチェックなどのソフトウェアがもたらす言葉の変容など、進化しつづけるテクノロジーと言語の変化との関連をさまざまな角度から紹介。
言語は人類にとって最も壮大なオープンソース・プロジェクトであり、インターネットはその言語に急速かつ興味深い方法で変化をもたらしている。オンラインコミュニティ上でおこなわれる会話は、次々に新しいスラングや専門用語を生み出し、目まぐるしいスピードで広まっていく。「弱いつながり」を多く生み出すことで言語の変化を早め、それがハッシュタグや面白動画がバズる現象にもつながっていると著者は述べる。
言葉とコミュニケーションの変容を見つめ、言語が持つしなやかな強さと柔軟さ、そしてなによりも言葉というものの面白さと興味深さを実感できる、革新的で希望にあふれた一冊!
ニューヨーク・タイムズほか米メディア各社が絶賛!
マカロックほど親しみやすい作家はいない。聡明で、気さくで、
おまけに彼女自身が誰よりも言語学の大ファンなのが伝わってくる。
――『ニューヨーク・タイムズ』
絵文字という謎の言語から、動物のミームの魅力まで、
あらゆる話題を深掘りし、デジタル時代の言語の進化をひもといている。
――『エスクァイア』
本書を読めば、インターネット上の粗野な言語が、たちまち目をみはる
ものに、そしてバグではなく価値ある仕様に思えてくるにちがいない。
――『ニューヨーク・タイムズ』
ユーモアとネコのミームがふんだんに詰まった魅力的な作品。会話の分析
から、今のわたしたちが知るメールの進化まで、幅広い話題の数々が、
本書を貴重で、面白く、楽しい本にしている。
――『サイエンス』
インターネットが言語にどんな影響を及ぼしているのかにこだわるよりも、むしろインターネット上の言語から何を学べるかに着目した一冊。
――『エコノミスト』
絵文字からGIF、「lol」や「omg」などの頭字語まで、オンライン言語が
いかにして現代のコミュニケーションの重要な一部になったのかを描き出していく。本書はまた、デジタル・コミュニケーションの進化が、今までに起きてきた言葉の用法の変化とそっくりであるということを理解するための貴重なのぞき窓でもある。
――『WIRED』
時に、インターネットが醜さと惨めさのごった煮に見えることがある。
だからこそ、インターネットには、無法な苦役だけでなく、意図的かどうかは別としてまったく新しいものを生み出す複雑な人間のシステムも存在するということを覚えておいたほうがいい。グレッチェン・マカロックは、絶えず変化するオンライン言語の探検家なのだ。
――『ELLE』
チルダが奇抜さや皮肉を表わす句読記号になったのはどうしてなのか?
わたしたちが強調のために単語内の文字を何度も繰り返すようになったのはいつからなのか? その裏話が満載の一冊だ。
――『BuzzFeed』
デジタル世界が英語をどう変貌させつつあるのかを、
熱狂的に調べ明かしている。
――『ザ・ニューヨーカー』
マカロックに感動を覚えずにいるのは難しい。
それは、彼女が誰よりも言語学を愛している魅力的な作家だから。
――『サンデー・タイムズ』
目から鱗が落ちる分析だ。
――『オブザーバー』
マカロックは、流動する世界を説得力のある形で切り取っている。
本書を読めば、言語、インターネット、そして自分自身について、
多くのことを学べるだろう。
――『フィナンシャル・タイムズ』
研ぎ澄まされた常識、巧みな解説力、心をつかむユーモアのセンス、
伝えることへの情熱。そんなグレッチェン・マカロックの洞察力あふれる説明こそが、本書に特別な魅力を与えている。
――デイヴィッド・クリスタル(言語学者)
感想・レビュー・書評
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いわゆる言語ではなく、ネットスラングとか絵文字の話が多いように感じた。そういったサブカルっぽい部分に興味がある人には貴重な本だと思う。
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インターネット上での言語に関する書籍です。
英語に関する内容が中心で、日本語に関する言及はほとんど無いので、その点は注意してください。 -
【中央図書館リクエスト購入図書】
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC0996573X -
◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC0996573X -
2022年10月~11月期展示本です。
最新の所在はOPACを確認してください。
TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00601369 -
現在、インターネットはもはや実社会と対立するものではなく、インターネットなしに実社会は成立しなくなっている。英語話者のツイッターの投稿やメッセンジャーなどでのテキスト会話を題材に、リアルタイムで変化していく言葉づかいをカナダの言語学者が楽しくポジティブに考察していく。
ひと言で言えば、本書はインターネットの普及によって21世紀に巻き起こっている〈言文一致運動〉の報告書だ。インターネット上のテキストは、書き言葉であると同時に話し言葉でもある、二つの性格を持っている。私たちは今、対面して話すときには伝わる細かなニュアンス——ジェスチャーや声のトーン、抑揚などをなんとか文字に落とし込もうと、無意識にインターネット上での新しい話し方を開拓している。しかも、この言文一致運動は権威が働きかけているのではない。若い世代ほど代謝が早く、敏感に反応する。
私はインターネット上のやりとりというと電子メールが中心だった時期を経て、メッセンジャー、そしてSNSに足を踏み入れた世代だ。自分のPCを持つのは遅かったので、本書の用語で言うと〈正インターネット人〉の後半世代? この時期に参入した人びとは、書き言葉と話し言葉の違いをインターネット上でも意識し続けており、メール時代の書式を保っている、とマカロックは言う。自分に照らし合わせるとその通りだと思う。ツイッターはほとんど話し言葉だけど、ブクログは完全に書き言葉だ。後から見返してアチャー…と思わない文章を心がけている(笑)。
デジタル・ネイティヴの世代は、書き言葉=フォーマルという認識自体が薄い。その代わり、ニュアンスを取りこぼさないよう、さまざまな工夫を凝らして細かな感情を伝えよう・読み取ろうとしている。本書で例に挙がるのは英語圏のやりとりだが、どこを大文字表記にするかやタイポグラフィックなルックにこだわるところは、日本でいう昔のギャル文字などと同じマインド。また、地方やコミュニティで単語の綴りが違う場合、標準的な綴りに寄るよりも、自分の所属するコミュニティ特有の綴りを強化する傾向が強いというのも面白かった。
記号や言葉の意味も世代によって読解が違ってしまう。年長者がピリオド代わりに多用する三点リーダが、若い人には何か言いたいことを隠している、裏のメッセージがある、と受け取られてしまうという。手紙をよく書いていた世代にとっては定型文でしかない「Dear(親愛なる) ◯◯」という呼びかけは、ただの知り合いに送るには馴れ馴れしすぎると思われてしまう。書き言葉として一旦形骸化した表現が、デジタル・ネイティヴによって再び本来の意味に立ち返っている。こういうくだけた実例を、マカロック自身のくだけた語りで解説していくのが楽しい。
そして本書は、言葉づかいが変わっていくことへのポジティブなバイブスにあふれている。自分にリプライを送ってきた相手に、大文字と小文字のニュアンスを混ぜたジョークで返事をし、「若者言葉を真剣に研究してくれてありがとう」と返されたというエピソードは、マカロックのスタンスをよく表している。ミーム画像を作ってバズった体験談や、ツイッターに生息する言語学クラスタの話などを語るマカロックは、ただの観察者になることがない。職場でも家庭でもない〈第三の場所〉としてのインターネット、という考え方も希望が持てるものだった。
私たちは「世代ごとに言語を作り直す」のだ、「言語は人類最大のオープンソース・プロジェクトなのだ」、という言葉で本書は幕を閉じる。権威から〈正しい〉と押し付けられた言葉づかいから解放された世界。言語学者と見る世界は明るい。 -
アメリカの話なので、あまりピンと来なかった。
日本や世界でどんなふうに変わったのか、共通点や相違点が書かれていたらよかったのに、いまいちだった。