- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784847061967
作品紹介・あらすじ
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ロシア・クライナ戦争を専門家が詳細に分析
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渡部悦和元陸将、佐々木孝博元海将補、井上武元陸将の3人が徹底討論。
日本が教訓とすべきことを明確に提言する!
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■ウクライナ侵略までの経緯
・プーチンの「大義」と「歴史観」
・ウクライナ、ロシア、ベラルーシの歴史
・NATOとプーチンの関係
・ウクライナの歴史と対ロシア感情
・クリミア併合とウクライナ紛争
■侵略直前に起きたこと
・情報戦
・サイバー戦
・宇宙戦
・ウクライナの軍事強化
・ロシア軍のずさんな作戦構想と組織
■2月24日から起きていること
・陸海空戦それぞれの推移
・情報戦、サイバー戦の推移
・経済戦の効果分析
・核兵器・生物兵器使用可能性の分析
■今後の展開
・ロシアレジームチェンジの可能性は
・プーチンの失脚はあるのか
・経済制裁の効果
・米国の利益はどこにあるか
・中国の立場はどう変化するか
・NATOの今後
■日本が教訓とすべきこと
・国家指導者のありかた
・国民と「国家防衛」の意識
・強い国家とは何か
・日本人の極端な「軍事アレルギー」
・弾道ミサイルへの対応
・軍民一体の作戦の必要性
・日本は市街戦に対応できるのか
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発行:ワニ・プラス
発売:ワニブックス
感想・レビュー・書評
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元自衛隊の将官がロシア・ウクライナ戦を分析している書です
2014年のロシアによるクリミア併合と、2022年7月時点で戦闘中のウクライナ戦について状況分析、解説、そして日本にとっての教訓を語られています。
クリミア併合は、ハイブリッド戦の成功例、オールドメイン(全領域)での戦争と位置付けています。陸・海・空・宇宙・サイバー戦・電磁波に加えて、情報・認知・心理・経済・外交・エネルギー・法律・歴史・文化・宗教などでのドメインの戦いが重要であるといっています。
現代戦も、孫子がかたるように国と国とを挙げた総力戦なのです。
(理由:なぜ、ウクライナに侵攻)
・ロシアvsNATO 緩衝地帯がないとロシアの安全保障に重大な危機が
・もともと、ロシアは平坦で、容易に攻めやすい国、そのためにロシアは「力の信奉者」として武力を解決手段として用いてきた
・プーチンはパーキンソン病?思考力の低下
(開戦前)
・国境付近で大規模な軍事演習
・ニセ情報をばらまいて、ウクライナの油断させようとした
・大隊戦術群(BTG)の多量編成と投入
・DDOS攻撃を開始
・他にもマルウエア、DNSキャッシュポインズニングによるサイバー攻撃を実施
・クリミア併合時には効果的であった、サイバー攻撃は、西側の支援を受けたウクライナに対してはあまり効果がなかったようだ。
・ウクライナは前回の学習で、ITの先進国となっている(同様エストニアも同様の国であると紹介されています)
(開戦後)
・ロシアの誤算、数日で終わるとおもったキエフ陥落どころか、頑強なウクライナの抵抗にあった
・短期戦を想定していたため、兵站が確保できなかった。
・BTGは規模が小さく、しかも兵としての練度が足りていなかった
・部隊との通信が妨害されたために、携帯をつかったところ、位置を特定されて指揮官クラスが多量に狙撃され、戦死した。
・ぬかるみのために、道に伸びきった戦線を横からウクライナに攻撃、部隊が膠着・分断された。
・ロシア人とウクライナ人とは、兄弟家族のような間がら、同胞を攻撃することでモチベーションが低下
・黒海にいた、ロシアの旗艦がウクライナの攻撃で沈没。心理的なダメージで、士気低下
・西側の対戦車砲など、近代兵器で応戦。ロシアの戦車、航空機に対抗。
・プーチンの思惑とは別に、ウクライナ軍は善戦しており、ロシア軍の意図は実現されないままにいます。(2022年7月現在)
(考察)
・ロシアに政変が起きる可能性があり
・アメリカ(西側)は、再び復権につながりつつあり。ロシアの経済的制裁などで、ドイツ(ロシアからエネルギーを購入していた)などとも連携をおこなっている。
・中国は、苦しい立場に。台湾は陸続きではないので、電撃的に20万の兵力を投入できるわけではない。
・インドは伸長か。ロシアのエネルギーを優先的に購入しており、アメリカとも中国とも距離を保っている。
・国際政治の基本原則「永遠の友もなく、永遠の敵もない。あるのは永遠の国益だけ」
(日本へのメッセージ)
・先の大戦いらい、オール・ドメイン戦を経験しておらず、オール・ドメイン戦を前提として日本の安全保障を再考すべき時期
・防衛力整備は最優先の課題である。
・日本は「各省庁でやるべき戦略」があるだけ、全領域を融合する総合的な戦略を持つべき
・加えて国家閃絡構築の必要性。
・軍事科学技術は驚くほどの速度で進化している。日本も国内に独自の防衛作業を育成し、他国に依存しない防衛体制を整備するべき
結論は、以下かと。
我が国の安全保障体制は国際標準と大きく乖離した極めていびつなものになっているが、それを抜本的に改善するチャンスです。
そのためには、今回の戦争をオール・ドメイン戦の観点から徹底的に分析して、教訓事項を具体的に生産に反映すべきである
目次は次のとおりです。
はじめに
第1章 なぜロシア・ウクライナ戦争は発生したのか
第2章 開戦日以前に何が行われたのか
第3章 2月24日以降に何が起こったのか
第4章 これからの世界を展望する
第5章 日本にとっての教訓
おわりに詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
常に状況が変化しているので、解説内容はその時点での解説と割り切る必要があります。
ただし元自衛隊の方からの日本の安全保障への提言は十分な説得力のあるものと思います。 -
元陸将・元海将による対談だが、全体的には後講釈的にロシアをやや過小評価している印象。実際に戦闘を指揮するのと他国の分析をするのとでは乖離があるのだろうが。
最後では戦況の推移を予測することの難しさについて語ってはいるものの、これからどうなるかは本当にわからない。本書は22年5月までの事を語っており「第2段階もロシアは失敗する」と予測しているものの、その後ロシアも修正を行い東部地域でジワジワと掌握地域を拡大しているので、やはりロシアは侮れないし予測は難しいということが証明されてしまっている。
とは言え、日本はここから何らかの教訓を得て、今後に備えなければならないのは確かであり、本書でも防衛面での提言が少々なされいるものの、さらなる包括的な議論が必要なのは言うまでもない。
尚「タタールのくびき」やロシア語には「安全」という単語がない等々の歴史・文化的な背景があることは参考になった。 -
ロシアの作戦の不十分さとウクライナの善戦から、今後、日本が備えなければならないことがよくわかった。
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今回のウクライナ侵攻から得られた知見と日本の安全保障を簡潔にまとめており読みやすい。
一言で言えば、元陸将・元海将補による西側陣営の価値観、願望をベースとした評価、分析。
渡部元陸将については、これまで個人的には評価していたが、今回の対談では佐々木元海将補から早々に「西側諸国に軸足を置いた見方」と指摘されたように、従来の視点の延長線上で捉えている様に思われた。
ロシアの戦い方、ウクライナの戦い方から日本のとるべき全領域戦については、従来から言われていることであり目新しさはない。また、防衛産業について著書らには本質的な課題自体が認識されていないのではないかと危惧を抱くような記述に終始したことは残念。 -
特に目新しいことは書かれていないが、対談形式で読みやすく、ロシア・ウクライナ戦争に関して4月末ごろ時点までの概略の状況をざっと理解するのにはよいと思う(もうちょっとちゃんと理解したければ、防衛研究所の「ウクライナ戦争の衝撃」を読めばよいか)。
ただ対談形式のため、語られる内容について明らかにおかしいと思われる点も見受けられた。
P152~153でロシアの最新鋭戦車「T-14アルマータ」が今回の戦争に投入されておらず、それが今回の経済制裁の影響と書かれているが、2020年までに2300両生産する予定の戦車が投入されていない原因が、なぜ2022年3月以降に行われている経済制裁の影響なのか。
経済制裁の影響で追加で投入できないというのならまだわかるが、それでもその影響が出てくるのは本書の参照時点である2022年5月以降であり、本書中で経済制裁の影響と断じることは不可能である。
と、気になるところはあったが、まあ新書でさっと読むような本だと思うので、細かいことを気にするべきではないのだろう。