おかしな時代

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  • 本の雑誌社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860110864

感想・レビュー・書評

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  • (再録)津野海太郎「おかしな時代 『ワンダーランド』と黒テントへの日々」(本の雑誌社・2800円 | 野球少年のひとりごと
    https://ameblo.jp/old-ball-boy3412/entry-12519343652.html

    おかしな時代 - 本の雑誌社の最新刊|WEB本の雑誌
    http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860110864.html

  • 1960年から1973年にかけての著者の活動(主に、演劇と出版関係)を記した本です。当時の日本、というか東京の文化状況の一面を理解するためにはたいへん参考になる一冊です。巻末の人名索引を眺めるだけでも、ため息の出るラインナップです。とは言え、それもあくまで「一面」だけですから、それが全てと誤解せずに読むべきだと思います。

  • 2021/1/11購入

  •  「本の雑誌」連載中は、ああ、なんかやってるな、そのうちまとまったら読もう、なんて思っていたのだが、読んだらかなり面白かった。出版と演劇と、60~70年代をまさに疾走したんだろうな、という感じがビンビン伝わってくる。ひらがなの多い文体も興味深かった。

  • タイトルの書き文字を見ただけで「あっ、平野甲賀」と分かった人は晶文社ファンにちがいない。著者の津野海太郎は、晶文社の編集者として知られ、平野甲賀はその友人。副題に「『ワンダーランド』と黒テントへの日々」とあれば、表紙を見ただけで、どんな本か分かるしくみになっている。ずっと本作りに携わってきた人たちが組んでつくった本らしい。うすい表紙にピンクのギンガムチェックのカバーが分厚い本を軽やかに見せている。じっさい読みはじめると、時間を忘れる。一晩で読みきった。

    津野海太郎の名は、『季刊・本とコンピュータ』の編集長として記憶に残っていたから、彼があの佐藤信といっしょに黒テントをやっていたことにはびっくりしてしまった。もうひとつ驚いたのは、『新日本文学』の編集室にいたこと。なんと、花田清輝や長谷川四郎と同じ部屋にいて、長谷川四郎を「四郎さん」とファーストネームで呼んでいたなんて。

    これは、1960年から73年にかけて、いいかえると「六〇年安保にはじまり、東京オリンピックをへて七〇年前後の大学紛争期に至る十年ちょっとの期間」、雑誌編集と芝居の演出をかけもちしたひとりの男の回想録である、というと語弊がある。ここにはふつうの回想録のように私的な記述はほとんどない。ここにあるのは津野という編集者=演出家を核にして離合集散する人間たちの行動の記録である。

    「私じしんはふつうの人間だが、ふつうではない(かもしれない)人間とたてつづけにでくわす運があった。運も才能のうちとかんがえるなら、そういう才能が若い私にはあったのかもしれない」と、あとがきにあるが、出会って間もない小野二郎から晶文社に来ないかと口説かれるなんて、ただの運と言ってすませるわけにはいかない。が、本人が語らない以上、津野の魅力については他の人の書いたものから探るしかない。

    じっさい本の中に出てくる人の数が多いだけでなく、その顔ぶれがすごい。名前だけ羅列しても一時代の日本文学史や演劇史がかけるくらいだ。しかも、その当人の風貌や口調をさり気なく生かしたエピソードの数々。宴会に並べられた豪華な料理のようで、どれを紹介したらいいか目移りがして困ってしまう。ぜひ自分で読んでみてほしい。

    一つだけ紹介したい。無口で編集会議でもめったに口を開かない長谷川四郎の言葉。管理がきらいで芸術家ふうの風貌を持つ長谷川四郎が、なぜ編集方針にまで共産党が口を出す『新日本文学』にいるのかときいた著者に答えていわく「おれは政党の介入とか編集長の更迭とかには関心ないのだ。『新日本文学』の日本(傍点)にも文学(傍点)にも関心ない。関心があるのは新(傍点)だけだよ」。いいなあ。

    演劇にはくわしくないが、犀のマークの晶文社の本はよく読んだ。大学時代に読んだ中原弓彦(小林信彦)の『日本の喜劇人』をはじめ、都筑道夫の『黄色い部屋はいかに改装されたか?』、植草甚一の『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』等々。サブカルチャーというもののおもしろさを教えてくれたのが晶文社の本だった。

    「アングラ」と呼ばれた新しい演劇運動の勃興期、トラック二台に乗せた黒テントの悪戦苦闘の旅興行の話や、日本版『ローリングストーン』誌が『ワンダーランド』をへて『宝島』に化けてゆく話など、この人でないと書けない裏話がいっぱい。今は亡き草野大悟や岸田森との交遊も含め、現在活躍中の役者の若い頃の姿を垣間見ることもできる。

    北上次郎から回想録を書いてくれとたのまれたとき、最初はまだ早いと思ったという。その著者が『本の雑誌』に連載を始めたのは、あの時代が早くも「なんだか他愛なくまとまりのいいお話にされちまったな」という印象をもったからだ。後世による「過去の歴史化」に生来のジャーナリスト感覚が反応したのだろう。本を作るのは編集者だということがよく分かる例だ。

    本の編集に関心のある人、演劇に興味のある人なら必読。あの時代を生きた人なら文句なしにおもしろい。テープ起こしで身につけた「漢字仮名混じり文」ならぬ「かな漢字まじり文」で書かれた文章は、話し口調が生かされた読みやすいもの。快作である。

  • ホントに、ふしぎに魅力的なパワーが渦巻いてたおかしな時代だな、と思う。
    そのふしぎさおかしさを言葉でまとめあげられるこれだけの力量はそうそうないもので、後の時代から顧みるに相当重宝。

  • 「新日本文学」に関わる人たちの本を結構読んでいる。
    「ワンダーランド」の創刊号をしばらく取ってあった。あれはもう捨てたのだろうか?なぜか「宝島」になったのを覚えている。
    「ラ・ママ実験劇場」のエレン・スチュワートさんが先日、91歳で亡くなったことを知る。

  • 5000冊目!

    新潮2009年1月号書評より

  • ご本人はそんなこと思ってないようだが、時代の先端を突っ走った編集者津野海太郎さんの怒涛の10年間の回顧。スゴイぞ

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著者プロフィール

1938年、福岡県生まれ。評論家・元編集者。早稲田大学文学部を卒業後、演劇と出版の両分野で活動。劇団「黒テント」演出、晶文社取締役、『季刊・本とコンピュータ』総合編集長、和光大学教授・図書館長などを歴任する。植草甚一やリチャード・ブローティガンらの著作の刊行、雑誌『ワンダーランド』やミニコミ『水牛』『水牛通信』への参加、本とコンピュータ文化の関係性の模索など、編集者として多くの功績を残す。2003年『滑稽な巨人 坪内逍遙の夢』で新田次郎文学賞、09年『ジェローム・ロビンスが死んだ』で芸術選奨文部科学大臣賞、20年『最後の読書』で読売文学賞を受賞。他の著書に、『したくないことはしない 植草甚一の青春』『花森安治伝 日本の暮しをかえた男』、『百歳までの読書術』、『読書と日本人』など。

「2022年 『編集の提案』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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