昼夜日記

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860114206

作品紹介・あらすじ

昼は読み、夜は飲む!
「本の雑誌」の好評連載「坪内祐三の読書日記」に「小説現代」連載の「酒中日記」が合体!

2011年4月号の「読書日記」からスタートし、日付が重なる2014年5月から2016年7月までは、上段を昼の部(「読書日記」)、下段を夜の部(「酒中日記」)と上下に分け、昼の坪内祐三と夜の坪内祐三の行動がひと目でわかるようにしました。

昼は三軒茶屋で読書にいそしみ、渋谷、新宿、神保町で本を買いまくる。夜は神保町、銀座、あるいは五反田から飲み始め、作家、編集者たちと杯を交わしに新宿の文壇バー、猫目、風紋、風花をクルージング。盟友福田和也をはじめ、重松清、中原昌也、島田雅彦、一志治夫、黒鉄ヒロシ、亀和田武など、錚々たる面々がうごめく夜の文壇の生態と坪内祐三が愛するシブい本とシブい映画の数々が堪能できるうえ、変わり続ける東京の街並みが甦る本です。

感想・レビュー・書評

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  • 文芸評論家 坪内祐三の2011年4月〜2016年9月まで5年間の昼夜日記。

    著者の日記はこれで3冊目、何れも読了。この日記、「本の雑誌」に連載された「坪内祐三の読書日記」と「小説現代」連載の「酒中日記」が合体した400頁・2段組の豪華版。1頁の上段には昼の文芸評論家然とした「読書&古書渉猟日記」、下段は業界人との交流を記した「酒中日記」。読み応えありありの日記。

    日中は自宅と仕事場のある三軒茶屋にて執筆と読書を、神保町では古書渉猟、それ以外にも映画・演劇・美術展へも。陽が落ちると、重松清・中原昌也・島田雅彦・一志治夫・黒鉄ヒロシ・亀和田武・都築響一・康 芳夫や、編集者と文壇バーの猫目や風紋・風花で痛飲クルージング。そんな多忙なところに、2ヶ月毎に大相撲が割って入る。両国で開催時には触れ太鼓を心待ちにし、前売券をゲットして昼過ぎから桟敷に陣取る。地方場所では相撲中継を居酒屋でビールを飲りつつ観戦。稀勢の里が贔屓で、白鵬のゆるフンに憤り、親方となった貴乃花の胡散臭さを看破し、相撲雑誌も毎号熟読。

    この日記を読んだ人は、その“日常、丸ごとルーティン化”に驚くはず。文学をバックグラウンドにした広範な知識、東京に生まれ日々東京を歩き、雑誌「東京人」の編集者であったことから街ネタにも通暁し、他人の記憶違いや思い込みに対しは舌鋒鋭く鉄槌を食らわす。出版社の校正者の劣化に呆れ、片岡義男や太田和彦らを実名で筆誅。

    本書は「本」と「酒」の2大テーマに沿って書かれていることもあって、極めて具体的で活動的で開放的である。憤慨したことや酒場でキレたことはやんわりとら記す程度に留め、心情吐露や高説をぶつわけでもない。日記の形態を借りた記録文学を読んでいるような印象を抱く。

    日記文学の面白さは、その多くは他人が読むことが前提にして書いていながら、著者の人間臭さが立ち上ってくるところ。そんな下りに出会った時は、ピーピングトムではないが天井の穴から覗き見をしているような気分になる。まぁ、これが日記文学の醍醐味で、僕が読んだ中では、私小説作家の西村賢太の「一私小説書きの日乗」が出色。執筆後の甲類焼酎を水道水で割って飲み、就寝前のドカ食い、風俗で遊んだこと、手淫に耽ったこと…、読んでいる側が赤面するような赤裸々な記述が随所に。私小説作家の面目躍如といったところ。

    そんなことを日記文学を読む度に実感し、やおら日記を書き始める。日記文学の効果は高く、これまで何度も書いている。ただ、長続きはせず2年間が最長。PCに、手帳に、ノートに、日記帳にいろんなメディアに書き散らしている。日記を書き続けるコツは日記文学を読み、刺激を与え続けること。あたかも機関士が石炭をくべて蒸気機関車を走らせるように。比喩がまもなく令和だというのに戦後ばりばりで、いかがなものか…ですね。

  • 「本の雑誌」と「小説現代」の連載を一冊にまとめたもの。

    坪内氏の自宅と仕事場は、数年前まで勤務していた場所の近くにあるのだが、当時私もひいきにしていたお弁当屋さんが閉店という記述があり、ややショック。

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著者プロフィール

評論家、エッセイスト。1958年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒。「東京人」編集部を経て、コラム、書評、評論など執筆活動を始める。評論、随筆、対談、日記エッセイ、解説等多彩に活躍。『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代―』で第17回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『ストリートワイズ』『靖国』『文学を探せ』『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』『総理大臣になりたい』など多数。近著に『昭和にサヨウナラ』『文庫本を狙え!』『文庫本宝船』など。

「2017年 『壁の中【新装愛蔵版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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