エリック・オルセナ『コットンをめぐる世界の旅』作品社、読了。本書は綿花をキーワードに世界経済とグローバリゼーションを考察する。近代資本主義の原動力は綿花の加工である。フランスを代表する作家が世界各地を訪れ、綿花についての歴史と現在へと思索をはせる異色の一冊。抜群に面白い。
第1章はフランスの武力介入で話題となっているのマリ。かつては現地の人々が綿花を摘みそれを織って利用したが、今や綿花は輸出され衣料品となって戻ってくる。ちなみに繊維公社にフランス政府は40%の出資をしているという。
本書は綿花という「モノ」をキーワードにグローバリゼーションの由来と現実を叙述する一冊だが、興味深いのは、グローバリゼーションを、人間の物語として語っている点だろう。モノに関わる人々の息遣いが鮮やかな一冊だ。経済の意味を再考させられる。