- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861826573
感想・レビュー・書評
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本書は、東京の街について筆者が「足で歩いてドキュメントで裏を取るという姿勢」で取材し、書いたエッセイを集めたもの。2017年の発行であるが、書かれているものの年代は幅広く、1990年代からのものも含まれている。
取り上げられているのは、神田神保町、新宿、神楽坂、丸の内、銀座といった「街」から、「三越」「丸善」「国立国会図書館」といった、特定の「場所」、あるいは、「カフェ」や「ラーメン」といった、「テーマ」に沿ったものまで幅広い。
どのエッセイも、雑誌に掲載されたものであり、各エッセイの最後に、掲載された雑誌名と掲載年が書かれている。
「はじめに-東京五輪大作戦」というエッセイの掲載雑誌・掲載年が、「Sports Graphic Number PLUS 2000年5月」となっているのを読んだときは、「おやっ?」と思った。鹿島茂が、Numberに何かを書くのがイメージ出来なかったからだ。少し調べてみた。
当該誌の副題は、「ニッポンの挑戦 "百年戦記"。」となっており、表紙はサッカーの中田英寿が飾っている。2000年はミレニアム紀であり、過去100年の(20世紀の)日本のスポーツ界の、世界を舞台にした挑戦・チャレンジを1冊の特集にしたものであり、その編集意図はよく分かる。また、中田は1998年のフランスW杯で注目された後、イタリア・セリエAのベルージャに移籍、ブンデスリーガで活躍した奥寺以来となる海外の強豪リーグで活躍する日本人選手であり、表紙に写真が掲載されている意図が、これもよく分かる。
実際の記事に取り上げられているスポーツ選手は、中田・野茂・有森・清水(スケート)といった世界で活躍した選手。また、「マラソン」「水泳」「男子体操」「バレーボール」といった世界で活躍したことがある種目。
それらと並んで、鹿島茂の「1964年東京五輪大作戦」が掲載されている。副題は、「帝都改造計画」。
20世紀のスポーツ界にとって(というよりも、日本という国にとって)、東京でオリンピックを開催したことは、誇るべきことであり、実際に大きなチャレンジであり、「戦い」であったという文脈での記事だろう。少し無理がある気がするが、分からなくもない。
この記事は、とても面白い。「足で歩いてドキュメントで裏を取る」、すなわち、現地を訪問し、かつ、きちんと資料・記録も確認する、という学者らしい作られ方をしているので、読んでいても安心感を感じる。
その他の一つ一つの記事も、手間をかけて書かれており、読み応えがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今の風景も、懐かしくなるんだろうなぁ~
しかし2020年にアレ本当にするの?無駄な金掛けて粗悪なモノ作って汚点を残す気なのかな、、、
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変わりつづけるこの街のあの時、あの場所へ――
日本の近代を創った上野の博覧会、震災と空襲で郊外へ向かった文学者たち、1964年の五輪における都市大改造、古書街・神保町で過ごした思い出……
時代とともに絶えず変貌する東京150年の歩みを、博覧強記の文学者が独自の多彩な視点でたどりなおす。
http://www.sakuhinsha.com/nonfiction/26573.html -
面白かった。すごく参考になった。町歩きをしていると、東京がつまらない街になったのは、あの前回の東京オリンピックのせいだという意見が多く、私もおおいに賛同する想いがあるので、冒頭いきなり引き込まれた。あのオリンピックは、東京を変えるために行なったのだ。「オリンピックの招致は、東京を全面的に改造するための口実であった。」とはそれも山田なにがしのプランに基づくものだとは、来年に生き延びさせた2020オリンピックに対してもなんだか恐ろしさを感じる。
三越とか、丸善とかを語る時は、社史をきちんと読み込んで、時代を浮き上がらせて広い世界を感じさせる。上野の見方も、詳しい博覧会から語られ、上野を見る目が違って来た。「喫茶店」「カヘェ」の話も楽しく、目からウロコだ。 -
「パリ時間旅行」より読みあぐねた。漢字の固有名詞が頻出するせいもあるだろう。
国立国会図書館を探訪するエッセイで、鹿島教授の身長が178センチだと判る。押し出しの強い容貌に加えて長身。フランス人と論戦しても、位負けすることはあるまい。