ブヴァールとペキュシェ

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861827556

作品紹介・あらすじ

翻訳も、解説も、訳注もほぼ完璧である。この作品を読まずに、もはや文学は語れない。自信をもってそう断言できることの至福の喜び……。――蓮實重彦

膨大な知の言説(ディスクール)の引用がおりなす反=小説(アンチ・ロマン)の極北が、詳細な注によってその全貌が初めて明らかに!

フローベール自身は、この小説のテーマは「科学における方法の欠如について」であり、「近代のあらゆる思想を点検する」のがその野心だと述べている。これをあえて現代的なタームで言い換えてみると、十九世紀の知の言説が形づくる灰色のアーカイブに潜在的に含まれている喜劇の可能性を現勢化したのが、『ブヴァールとペキュシェ』という書物だということになろうか。……フローベールが千五百冊あまりもの本を読み、それについて逐一ノートを取りつつ、そこから拾い上げた「思想のコミック」を小説という形式にふさわしく練り上げたのが、「一種の笑劇風の批評的百科事典」なのだといってよい。それ故、ブヴァールとペキュシェの演じる一見珍妙な悲喜劇が、十九世紀という時代の直面した認識論的な諸問題を深くえぐり出していることは、実は何ら驚くべきことではない。――本書「解説」より

感想・レビュー・書評

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  • 二人の男が様々な学問に中途半端に手を出しては失敗する。滑稽というか、ユーモラスというか。19世紀半ばの学術的知識が全て詰め込まれているのだと思う。たまたま図書館で「ジャケ借り」した一冊だったのだけど、出会えてよかった。

  •  1881年、フローベール死後刊行の、未完成の遺作。
     この邦訳書の帯には蓮實重彦さんの絶賛の言葉が載っているが、私は蓮實さんの言うことに興味は無い。巻末に載っている訳者の解説も、なんとなく蓮實さんの言うことに近いような言述なので、割とそっち派の人なのかもしれない。
     しかし、これがとても変わった小説で、「これが『ボヴァリー夫人』と同じ作者?」と疑いたくなるほどに、方法論がリアリズムから飛躍している。ブヴァールとペキュシェという中年男性2人が喜劇的な主人公で、大金を手に入れ大きな邸宅に住むようになって以来、園芸術から始まって科学、文学、宗教など、あらゆるタイプの文化領域の言説の海をつぎつぎに渡ってゆく。結局はへまをしてばかりいる2人は、むしろマンガ的な笑いを誘う。フローベールは、こうした学問的な言説を百科全書的に並べ立て、哄笑の渦で吹き飛ばそうと目論んだらしい。
     そうなると、主人公2人は言説の受け皿のような存在となり、もはや歳もとらないし何度失敗しようが懲りはしない。
     さてこれは、19世紀にはありえなかったような「アンチロマン」と言えるだろうか? 確かに20世紀の小説に似た面もあるけれども、ラブレーの笑いに近いものも感じる。フローベールの作品の中ではかなり異質なもの、という気はする。
     分厚いが意外と面白くて、どんどん読み進めることができた。

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著者プロフィール

1821年生まれ。19世紀フランスを代表する小説家。主な作品に、本書のほか『ボヴァリー夫人』『聖アントワーヌの誘惑』『サラムボー』『三つの物語』『紋切型辞典』『ブヴァールとペキュシェ』など。

「2010年 『ボヴァリー夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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