戦後日本、記憶の力学: 「継承という断絶」と無難さの政治学

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861828140

作品紹介・あらすじ

私たちが向き合うべき戦争の記憶とは何か――。
〈継承〉の欲望と〈忘却〉の再生産。

戦後中期から現代にかけての「継承という断絶」の諸相を描く。霊園・戦跡・モニュメント・新聞・映画・小説・手記など、さまざまなメディアをとおして、戦争記憶の「継承という断絶」が生み出される社会背景やメカニズムを解明する。長年このテーマに取り組んできた注目のメディア研究者による戦争記憶の歴史社会学。

いまも毎年夏になると、「戦争の記憶」の継承が叫ばれる。だが、そこでは「継承の欲望」は語ってはいても、そこ自体に内在する「風化」「断絶」が見落とされてはいないだろうか。戦争映画や戦跡観光と いったポピュラー文化のなかで、調和的な「継承」が麗しく語られる一方、軍内部の組織病理や暴力に着目されることは少ない。だとすれば、体験や記憶の「継承」の美名に浸ること自体が、じつは見るべきものから目を背け、「風化」「断絶」を進行させているとも言えまいか。――本書「プロローグ」より

感想・レビュー・書評

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  •  近い問題を取り上げている関係上、著者の仕事は何度か参照してきたが、どうしてこんなに退屈なのだろうといつも思う。もちろん有益な情報はたくさん掲げられていて、資料的にも勉強になることも多くある。しかし、この本の副題ではないけれど、ただただ「無難」にまとめられているだけで、驚きや刺激が感じられないのである。本書では第四章の映画『野火』、第五章の映画『軍旗はためく下に』の部分に興味を惹かれたが、よく考えたらそれは、これらの映画が面白い、ということでしかない。

     上記のように感じられてしまうのは、本書においても、基本的に既知の枠組みの中で先に議論のフレームが決められて、それに合わせて言説や資料が当てはめられているように見えるからだろう。言い換えれば、著者が定めた各論のストーリー(例えば原爆であれば、「戦跡の保存」をめぐる意識の変化)に合わない言説や資料が、はじめから切り捨てられているのではないか。だから、著者の議論には思考の展開が感じられない。ただ資料が手際よく整理され、順を追って並べられている、という印象が拭えない。いろいろ有益な情報を教えてくれるが、既知の議論のフレームを批判的に更新するようなものではない。

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著者プロフィール

1969年、熊本市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。現在、立命館大学産業社会学部教授。専攻は歴史社会学・メディア史。単著に、『二・二六事件の幻影』(筑摩書房、2013年)、『焦土の記憶』(新曜社、2011年)、『「戦争体験」の戦後史』(中公新書、2009年)、『殉国と反逆』(青弓社、2007年)、『「反戦」のメディア史』(世界思想社、2006年)、『辺境に映る日本』(柏書房、2003年)がある。

「2015年 『「聖戦」の残像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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