日本の農業は成長産業に変えられる (新書y 217)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862484031

感想・レビュー・書評

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  • 2009年刊。著者は宮城大学副学長。民主党政権成立時あたりの書。従前の農業政策や法規制では、農業を成長産業にできないだけでなく、輸出産物化すら実現不可。せめてもう少し参入障壁をなくし、兼業農家の減少方向での方策が求められようが、本書は問題点と処方箋の例を提示。議論のテーマは①日本人の限界研究(ブランド価値を下げないレベルでの安価性追及、目標市場で追及すべき価値と捨象できる価値との峻別)の不得手ぶり、②法人化(農業参入の責任軽減)と直接金融(事業拡大機会の放棄)、③農地賃貸の許容、耕作放棄地の縮減。
    ③農業の輸出産業化の一律的否定(蘭・ベルギーとの決定的差。商社との連携と蘭を手本に)、④総合複合産業化(生産・販売・製造・商品・観光)の不十分性、⑤日本文化移出へ(マクド・ハンバーガーを世界に定着させたごとく、おにぎり等を世界商品化?。米の戦略方法論の模倣でもよいはず)。等々。ただ、党派を問わず、保守的農政(ことに自民党の旧来型族議員)を是とする議員が多い限り、お寒い状況か。岩手や新潟より、千葉県や茨城県のような大消費地に近い県の方が農産物販売高が高額な点も要注目。
    日本の農産物自体、いわゆるガラパゴス化しているとも評しうる。また、先だってのドキュメンタリーで、農産物輸出に関する蘭の国を挙げての取り組み、日本が農林水産物の輸出高が、米豪はもとより、仏・伊・蘭・ノルウェーに比しても極めて低額である点が放送されていたところ、日本農業の何かしらの問題を示唆しており、本書がその一端を示しているようだ。

  • 表題のような内容を主張している本で,勉強になった。

    【特に印象的だった点】

    コメを主軸に&国際的視野で考えるべき。コメ生産のコストは1/3まで減らせる=国際競争力を持てる。キロ1000円の高級米~キロ30円の飼料米を,経営者の判断で営農できるようにすべし。生産調整→生産拡大。「ごはん」=炊飯の普及や先物取引

    かつては,農村のリーダー(老農,篤農家)が経営=ビジネスを行った。戦後農地法は,農業者を単なる耕作者にしてしまった。

  • 確かに農政が問題の多くを占めているのであろう。その農政が変わって規制緩和が進めば、本当に実力のあるやる気のある農業経営者が躍進するはずである。

    政治の関与が大きくて規制が強かった業界は、そうなる必然性があったのも否定できない。農業、とくに米作はその最たるもののような気がする。

    法律が変わるときがビジネスチャンスなのだ、という学生時代に聞いた言葉が思い出される。

    いつ、どのように変わるのか、その変わり目にどう関わるか。

    刃を研ぐ。

  • 成長産業に変えられるかどうかについて目新しいような論は特になかったが、近年の農政の問題点を簡単にチェックできるのはいい。
    農業の形態や採算性は案外知らないことばかりです。

  • 米は、第一に時刻で消費、余ったら国外に輸出というのが世界の基本。
    まず自分たちが食べるのを確保する。
    オランダの花産業の特徴はIT化が進んでいること、農家が花を栽培するノウハウをITを駆使してシステム管理が行われている。
    地域全体の農業をどうするかといった視点でビジネスモデルをつくる人が見当たらない。
    農業への企業参入として、建設業が参入障壁が低い。ほかにも商社やイオンなどが進出している。
    トヨタの子会社豊田通商は農協が扱っていないパプリカを扱ったが、セブン&アイはJAと共同出資しているように、協調路線を歩もうとしている。
    農村は集落単位の農家の繋がりを維持するうことで成立するが、農協はそれを利用した組織である。

  • 企業が農家に参入しにくい理由に「農地法」がある。

    これの当初の要旨は農地は耕作する者が所有すべきで、他人に耕作を任せてはならないということである。

    これは何度も改正されているのだが、70年に改正されたときに「効率的な利用」という文言が付け加えられた。

    これにより借地が許容されないといった考えは払拭されたのだがいまだに様々な制限がある。

    農業とTPPといった話がよく話題に上がるがまずはそういった制限を取っ払うことで市場化してみるのはどうだろうか。

  • 今、徐々に農業が注目を浴びてきていますが、正直農業はもうかる産業だとは思えません・・・。
    この本は農業が儲かる産業になるために何が必要なのかが述べられています。また、今の農政や農地法などの制度の問題なども書いてあり、これらの問題をクリアできば、農業は変わる。そんな気がしてきます。

  • 日本の農業を成長産業に変えるには、自給率向上にこだわった政策を捨て、質の高い農産物を積極的に輸出、そして、その輸出を支える農産物取引市場の設立の主導権を握ること。このことによって日本の農業を儲かる産業にし、成長産業へとすることと説いています。

    特に、農業の現状を、国外との比較や、国内の成功例を交えながらひととおり解説もしているので農業政策・農業経済の入門的にも仕えるとおもいます。

    ある程度興味のある人向けです。ぶっちゃけ専門書なので、予備知識なしではあんまりおもしろくないかも。

  • 農協、減反政策、関税による保護政策をやめて、
    自由な競争原理を取り入れる事で、日本の農業は
    世界で競争力を持つようになる。という意見。

    特に日本が食文化の中心に位置づけてきたコメついては
    米価維持をやめて安いコメも作れるようにするべき。

    行政に翻弄されてきた日本の農業を、いかに健全に
    立ち直らせるかが、熱く語られている。

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著者プロフィール

宮城大学名誉教授

「2023年 『農林水産法研究 創刊第1号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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