火山噴火・動物虐殺・人口爆発 (歴史新書y) (歴史新書y 2)

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862485434

感想・レビュー・書評

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  • 新書文庫

  • だからどうしなければいけない、ということはどこにも書かれていなかったと思う。地球の環境の歴史にはこういうことがあったという事実がつづられている。そして、環境問題を考えるにあたっては、その歴史をひもとくことも大切であるということが最後に書かれている。森林の破壊についてはかなりのページ数がさかれているが、20世紀初頭にアメリカで切り倒されたという巨木の写真が大変印象的だ。また、スイスの自然が一度は破壊されているという話を読むと、人間の身勝手さを感じずにはいられない。燃料として、住宅等の建築資材として材木が伐採された。さらに、農耕地を広げるためにも無駄に伐採されている。ほかに、水産資源の乱獲について、大型哺乳類の絶滅、感染症、火山の噴火が環境に及ぼす影響などが論じられている。しかし、何よりも最大の問題は人口爆発なのであろう。少子化といって騒いでいる国もあるが、世界的には今後も人口は増え続ける見込みのようだ。我々人類のために犠牲になったものがどれほど多いかをもう一度じっくり考え直してみたい。

  • 人間恐い。ほとんどの大型哺乳類が人間によって全滅している。魚も毛皮になる小動物も。火山の気候への影響力は文明を滅ぼす程。いつ起きてもおかしくないが、起きたら人口が増え過ぎた人間は、今までとは較べられない規模でダメージを受けるかもしれない。

  • 毎週決まって何冊かの本を読んでいる生活を送っていますが、凄い本に出会ったなを思うときがあります。ミシュランガイドを真似て自分で星をつけて評価していますが、この本は私が出会った本でベスト50には入ると思われる三星モノでした。

    古代4文明を勉強したときに、どうして今は砂漠地帯が多いのだろうと思ったのですが、もとは緑豊かな場所の木を切り尽くしてしまったので今に至っているのですね。木を切り尽くし、動物を絶滅(一部民族の大幅な減少を含む)させ、その上に君臨している人類はあとどれほど栄えることができるのでしょうか。

    人類にも自然を大事にしてきたグループと、それを開発という名のもとに破壊してきたグループがあります。神様はどちらに味方するのでしょうか、絶滅に追いやられている植物や動物、そして微生物からは最近警告を受け続けているような気がしますが。

    昔の生活には自分だけでは戻れないとは思いますが、皆一緒なら諦めざるを得ません。このような事態になならないように、何ができるのか考えさせられた本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・17世紀中ころにロンドン市民を対象に行われた最古の平均寿命の調査では、わずか18.2歳であった(p18)

    ・環境が自然に復帰した例は極めて例外的、15世紀のアンコールワットの都市放棄、16世紀のマヤ文明の衰退ののちに森林回復、14世紀にペストにより無人になったヨーロッパの農村が森林に戻った例、朝鮮戦争後に設定された非武装地帯等(p34)

    ・コロンブスは1492年に到着した後に39人の水夫をイスパニョーラ島に残して帰ったが、1年後に戻ると全員が殺されていた(p45)

    ・イスパニョーラ島にはコロンブス以前には50万人住んでいたが、植民地化されてから27年後には1.1万人、翌年天然痘が流行してから3000人、40年後には数百人(p47)

    ・東アフリカの主食であるウガリの原料が、次第に土着のヒエ、アワから、トウモロコシに変わったがトウモロコシは干ばつに弱く、飢饉が発生した(p53)

    ・アフリカ人の自作農を賃金労働者追い込むために、現金で払う必要のある住宅税と人頭税を導入した、ケニアの人口は1902年の400万人から1921年には250万人(p55)

    ・燃料(木材)の不足から、16世紀にはフランス国内に460あった製鉄所に対して、燃料消費量を6分の1にする布告がだされ、1789年の調査では鉄生産量が14%に落ち込んだ(p62)

    ・徳川家康も大量の木材を消費したが、秀吉との相違は、木材生産でもっともコストのかかる輸送の改善と、森林資源の保全につとめたこと(p80)

    ・最古の森林統計の1891年の森林面積と現在を比較すると、ほぼ50%増えている、燃料や国産建材への依存が大きく減ったことが原因(p80)

    ・最初に家畜化されたのは羊、その後に、ヤギ、遅れて牛、共通の利点としては、エサが人間の食料と競合せずに肉やミルクが供給できるので、6500年前に競合する豚が家畜化された(p89)

    ・古代都市が崩壊したのは、紀元前2700年には1ヘクタール2トンの小麦収量が、同1700年には0.7トンになったから(p90)

    ・1934~36年の干ばつで、大平原の農耕地の80%が被害を受けて、そのうち15%が完全に砂漠になった、それはアリゾナ西部からユタ、カリフォルニア東部、ネバダ州(p100)

    ・1959~61年の3年間で中国で多数の餓死者が出たのは極秘であったが、1982年に行った人口調査から判明、安徴省では1959年の3.1%増加が、60年にはマイナス57%(p109)

    ・北米のタラ漁は、奴隷労働(砂糖、煙草等)により成立していなかったので、奴隷制度の批判が起きた(p123)

    ・大型動物では群れの3割が無差別に殺戮されると再生率を上回って絶滅が起こり得る、4年に1頭しか子供を生まないマンモスは特に弱い(p144)

    ・ペストによる人口急減から荘園領主と農民の力関係が逆転して、年貢を払っていた農民が逆に賃金をもらって農耕するようになった、賃金の高騰から農地を賃貸、払い下げするようになり、中世社会を破壊させる力となった(p184)

    ・スペインのコルテスは実はアステカ軍に撃退されて敗走寸前であったが、スペイン軍からの天然痘により救われた(p188)

    ・北アメリカや欧州の古い樹木の年輪からは、536年以来23年間にわたって生長がとまったと読み取れる(p193)

    ・東北で奥州藤原氏が栄えたころは人口10万人であり、京都に並ぶ大都市、この繁栄はコメと砂金、コメができるほど気候は温暖であった(p202)

    ・1783年による浅間山の噴火は噴出物は4億トン、アイスランドのラーキ山は340億トン(p203)

  • 著者もあとがきの中で「タテの方向」と表現していますが、環境問題を理解するには歴史から学ぶ方がより効果的なのではないかと思っています。現在進行中の環境破壊は、その問題の大きさや重大性がわかりにくい場合も多いですが、歴史は結果が出ており、ある意味、壮大な実験結果とも言えるからです。

    森林、農業、魚、大型動物の絶滅、感染症、火山噴火といったテーマごとに章分けされており、読みやすい構成になっています。最終章の火山噴火は自然現象なので、人間は受け身の対応をするしかありませんが、それ以外は人間自らが引き起こしている問題であり、人間の賢明さが問われているテーマです。

    特に、農業の章は読み応えがありました。農地の拡大とともに土壌侵食が進行し、それによってアメリカや旧ソ連では干ばつや砂塵が、中国では干ばつと大洪水が発生した様子が生々しく記載されています。

    新書版のわりに情報量も多いので、環境史の入門書としても良いのではないかと思いました。

  • 2010.04.25 日本経済新聞に紹介されました。

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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