ビンラディン抹殺指令 (新書y)

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 39
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862487735

作品紹介・あらすじ

2011年5月、イスラム過激派アルカイダの指導者ビンラディン殺害のニュースが世界を駆け巡った。9・11テロから10年、ビンラディンが反米テロに本格的に乗り出してから15年。その間アメリカは、CIAの特命チームの投入、対テロ特殊部隊による隠密作戦、無人機攻撃など総力を挙げて、"世界一危険なテロリスト"を捜索した。9・11以前からビンラディンを追いかけてきた軍事ジャーナリストが、知られざるCIAのビンラディン追跡極秘オペレーションの内幕を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  アメリカが膨大な軍事費を使って、正面戦力の維持以外でもゲリラ対策に多様な戦力を世界中に巡らしていることがよくわかる本である。
     しかし、ゲリラ指導者を裁判もなく抹殺することは合法と言えるのだろうかとも思えた。
     

  • とても面白かった。
    テレビの報道や新聞では知ることのできない米情報機関とアルカイダの虚々実々のやりとりが描かれる。
    あまりに多くの人物、組織が出てくるため理解し切るには時間がかかるが、逆にビンラディン一人を捕まえるためこれほど多くの組織が動いていたのかと驚かされた。
    また、テロの可能性についての情報をつかみながら9.11を防ぐことのできなかったことから、日本の官僚組織のような巨大組織の管理の難しさも感じた。

  • 「ゼロ・ダーク・サーティ」を観る前の予習になるかと思い読んでみた。
    映画を観る前に読んでいて良かったと思う。
    ただ、9.11やビンラディン殺害については大本営発表とそれを否定する説があまりにも違い、それについてまったく触れられていないのが残念。

  •  アルカイダって「来る者拒まず去る者追わず」という緩い組織だったらしい。友人・知人といった人間関係を基にしたファジーなネットワークだって。オサマ・ビンラディン亡きあとどうなるんだろ。
     本書第一章は5月2日のビンラディン襲撃作戦の詳細を記述。38分間で未明の作戦は終わった。パキスタンの邸宅内にはビンラディンとその家族など22人がいて,計5人が死亡。銃で反撃してきたのはたった1人だったという。あっけない感じだがそんなものか。
     ビンラディンは90年代からCIAが追跡していた。CIAは98年には彼の専属料理人を情報源としていて,彼の衛星電話も盗聴できていたらしい。巡航ミサイルで攻撃する間際に,ワシントンポストがスクープしたおかげでフイになってしまったという。
     911で,ビンラディンはホワイトハウスへの攻撃に執着していたらしい。でも彼の意志が絶対というわけではなく,実行犯ムハマド・アタや計画したハリド・ジェイク・ムハマドが異を唱えてあの攻撃となったようだ。物静かで慈悲深く,人の話をよく聞くのでビンラディンは慕われてたらしい。
     アメリカ情報当局は様々な兆候を手にしていたが,911を防げなかった。情報共有が不十分だったこと,油断があったことが原因。冷戦終了で人員削減されていたのもある。911以降,テロとの戦いが始まると,大幅に増強されることになる。
     アルカイダという国際テロ組織は,911で世界中にその名をとどろかせたが,その後直接の大規模なテロ活動はできていない。むしろ世界各地のイスラム過激派が,アルカイダの影響を受けてテロを頻発させる。バリ島ディスコ自爆テロ,ロンドン地下鉄爆破,サウジアラビア高級住宅街襲撃など。
     グアンタナモなんて話題になったけど,CIAがテロリスト容疑者から情報をとるやり方がえげつない。合法的に拷問が可能な国に容疑者を預けて,尋問を代行してもらうのだそうだ。CIAのダミー会社の偽装民間機で秘密裏に容疑者を運ぶ。これを「特殊移送」と言っていたとか。
     最後に,著者は狂信的なイスラムテロは低迷期に入ったと観察。極左テロや民族主義テロも歴史的には十年ほどで終息しているし,一般にテロによって人々の境遇が好転することもないと見る。一時的に盛り上がった熱気も,悲惨な流血が続くことで冷めていくとするが,どうだろう。

  • 読み方が雑なのか,人の名が憶えられない~ソ連のアフガニスタン侵攻し対抗し,パキスタンでCIAがゲリラ支援活動を開始し,80年にアラブ義勇兵として参加した建設会社の御曹司(17/50)UBLは5億ドルの遺産を持ち,指導者であった法学者アブドラ・アッサムに重用された。ソ連が撤退しアッサムが殺害され,義勇兵は行き場を失った。UBLはサウジアラビアに帰り,湾岸戦争で米軍が駐留することに反対して,サウジアラビアから追放され,91年にスーダンで工場・農場・銀行を設立し,義勇兵を呼び寄せ,各地で行われ宇反米テロを支援した。アルカイダは基地という意味で,イスラム過激派の緩やかな連合体だった。スーダンにも居づらくなって,タリバンが支配を強めたアフガニスタンに戻り,世界各地の対米テロ組織との連携を強化した。CIAがアルカイダを監視対象としたのは96年からで,CIA内のCTCにはFBIやNSA,国務省からの出向者で組織されたが,冷戦終結後CIAの組織は縮小され,特に翻訳者は払底して為,活動は制限されていたため,拉致計画も挫折していた。ケニア・タンザニアで米国大使館が爆破され,ビンラディンの引き渡しをタリバンに求めたが,パキスタンの情報機関ISI裏でタリバンの繋がっており,拒否される。アルカイダはイスラム過激派の憧れの存在となり,ボスニア内戦終結後に各地に散った義勇兵はアルカイダから資金支援を受けるようになった。ロサンジェルス空港に爆弾を積んだ車をカナダから運ぼうとして失敗,アンマンのホテル爆破計画も頓挫。アルジャジーラに露出するようになったUBLに,911テロの立案者KSM(ハリド・シェイク・ムハマド)は接近し,計画が採用されて資金が提供され,飛行機操縦訓練等の準備が始まる。離発着練習をしない不審な訓練生の報告が上がってきたが,アメリカ中枢部は大きく動くことはなかった。事件後,退職を3月先に控えていたCIAベテラン工作員が中心となり,ビンラディンを捕らえるための特命チーム「ジョ-ブレーカー」が結成され,アルカイダ掃討作戦が開始される。2500ドルの懸賞が掛けられると世界各地のイスラム過激派はテロを実行。バリ島のディスコ自爆テロ,サウジアラビアの高級住宅街襲撃,ロンドン地下鉄同時爆破テロ,ロンドン航空機連続テロ未遂,ブット暗殺。テロ実行犯を捕らえるとアメリカは各地のブラック・サイトでテロリストを水攻め中心の拷問に掛けて,重要容疑者を追い詰める。2002年にKSMと911バックアップ班のラジム・ビン・アルシブがアルジャジーラに出演し,その年の内にアルシブを拘束。取り逃がしたKSMも翌2003年イスラマバード近郊で拘束。あっさりとした自供と押収したパソコン内のデータの解析で2005年までに内部情報を掴んだが,ISIから情報が漏れることから,米軍の表立った活動は出来ず,海軍のシール・チーム6投入が決まる一方で,無人機攻撃でアルカイダ要員を追い詰めた。ビンラディンの居場所は掴めず,死亡説も飛び出したが,2002年にはアブ・アフマド・アル・クウェイティの存在を把握していた。クウェンティの消息が判明したいのが2010年夏。2011年3月14日,UBLの隠れ家がオバマに報告され,シール・チーム6のレッド部隊24名がアフガニスタン・バグラム空軍基地に派遣される。ウィキリークスがグアンタナモ収容所での尋問風景が4月24日に公開してアバマは決行を決意する。5月1日正午頃バネッタCIA長官が作戦開始を発令,隊員24名は12名ずつ2機のバラックホークに分乗し,超低空でパキスタンに越境,バックアップ要員は大型予想ヘリ・チヌーク3機で同行し,パキスタン空軍はスクランブル発進したが,米軍への攻撃はなかった。攻撃部隊12名が屋上から降下し,別の12名が壁を爆破した突入開始。地上突入班がクウェインティ兄弟と1階で遭遇し,銃撃戦で兄弟二人,妻と様子を見に来た23歳の息子を射殺。2階制圧後,ビンラディンの妻子を外に出し,3階に向かう途中でビンラディンを発見,発砲したが外し,ビンラディンは自動小銃が置いてある自室に逃げ込む。3階の部屋に一人目の隊員が幼い子ども達を外に出し,同時に二人目がビンラディンに銃口を向けるが29歳の妻が飛び出したのでその足を撃ち,すかさずビンラディンの胸も撃った。ほぼ同時に三人目がビンラディンの頭を撃つ。隊員は死体のDNA鑑定を行い,本人と確認。故障して航行不能になったブラックホークを爆破処理し,チヌークに遺体と隊員を回収。作戦は38分間で完了。現地時間は5月2日午後1時40分前後。バグラム空軍基地に帰還し,V-22オスプレイでアラビア海のカールビンソンへ移送され,簡単な葬儀の後,水葬された~アメリカのマッチ・ポンプだと思うんだけどね

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著者プロフィール

黒井文太郎(くろい ぶんたろう)
1963年、福島県いわき市生まれ。横浜市立大学卒業後、講談社入社。週刊誌編集者を経て退職。フォトジャーナリスト(紛争地域専門)、『軍事研究』特約記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、軍事ジャーナリスト。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に海外取材多数。著書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)、『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』(以上、講談社)、『インテリジェンスの極意!』(宝島社)、『本当はすごかった大日本帝国の諜報機関』(扶桑社)、『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)他多数。

「2020年 『新型コロナで激変する 日本防衛と世界情勢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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