日本人が知っておきたい森林の新常識

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 81
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862488046

作品紹介・あらすじ

森林には洪水調節機能はないし、二酸化炭素の排出量を抑える役目も果していなかった!アマゾンの熱帯林の多くは、人が作り上げた人口林だった!誤解まみれの森林・林業の"非常識"を正す31の新視点。

感想・レビュー・書評

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  • 今まで知らなかったこと、持っていなかった視点がたくさん書かれた本で、勉強になりました。
    この本はブクログで紹介されていたもので、その紹介を見なければ手に取ることがなかったかもしれないので、ブクログにも感謝してます!

  • 例えば、

    森林は二酸化炭素を吸収しない。
    森林には水源涵養機能はない。
    「極相」は究極の安定した状態ではない。
    ゴルフ場は自然破壊ではない。
    アマゾン熱帯雨林はもともとは「里山」だった。

    といった具合に、これまでの外ライフや昨今の環境報道などを通して知っていると思っていた「森林の常識」を、ことごとくひっくり返して見せてくれる本。
    論理立てた筆致で、議論のいずれも一定の説得力を持っている。

    このあと森林や樹木に関する本をいくつか読んでみようと思っているんだが、その最初に読んだ本がこういう内容だったというのは我ながら面白い選択だった。
    少なくともこれから、書かれている内容を鵜呑みにせず、いったん疑ってみることが大事かもと改めて教えてもらったような気がしている。

  • http://honz.jp/6578HONZ>12月の今月読む本より。

  •  日本の森林と林業を俯瞰的かつ客観的な目で分析し、日本人が無意識のうちに森林に対して抱いているイメージや思い込みを改め、正しく理解する手助けをしてくれる本。
     以前から知っていたこともあるが、あらためて認識したことも多かった。

    ・森林はただそこにあるだけで二酸化炭素を吸収してくれるわけではなく、成長していない森林はむしろ光合成が止まって、二酸化炭素をより多く排出する場所になっている可能性がある。
    ・森林自体には保水機能は少なく、むしろそのもっと地下の基盤岩層に依るところが大きい。
    ・山火事や洪水を前提とした森林の生態系もある。
    ・適度に人の手が加わった人工林の方が、原生林よりも豊かな生物多様性をはぐくむことができる。そういう意味ではよく管理されたゴルフ場は、豊かな里山と同じ状態にあるといえる。林業は間伐にあり。
    ・アマゾンのジャングルは、先住民が人工的に改変してできた森だというとがわかってきた。
    ・安い外材は過去のものになりつつあるが、補助金に頼ってきた結果、利益の出る林業のシステムが育ちにくくなっている。

  • 初めて知った話がいっぱいあって、すごく驚いた。
    今までの常識を覆すような気がした。
    特に良かったのが
    森は二酸化炭素を吸収しない
    里山とゴルフ場はそっくりだった
    アマゾンは里山だった
    山村は木を売らずに生きてきた
    安い外材の嘘にだまされるな
    科学の衣をまとった新月伐採の怪しさ
    です

  • 森林ジャーナリストとしておなじみの田中淳夫氏の最新刊。目次だけ見ると、ちょっと刺激されるフレーズが並ぶので、内容が気になるという方は要チェック。
    例えば、森は二酸化炭素を吸収しない、森に水源涵養機能はなかった、原生林の自然は貧弱である、生物多様性は破壊がつくった、沙漠に緑はよみがえらない、ブナを植えてはならない、ホタルは汚い水が好き?……などなど。なんとなく武田邦彦氏の「マイバッグよりレジ袋のほうがエコだ!」といった論調に似ている気がしないでもない。なるほどと思うこともあるが、まっ、そういうこともないわけじゃないけど……といった思いを抱くようなことも多い。ただ、日本の森林に関しては、本当に様々な課題が多いことは、まぎれもない事実だ。日本の森林に関心をお持ちの方は、『石油に頼らない―森から始める日本再生』(養老孟司著:北海道新聞社刊)の第4章=「現場から見た山の現状と再生への道筋」と特別寄稿=「森林・林業基本法を一からつくりなおすために理解すべきこと」をお奨めしたい。

  • 樹木を生物として冷静に謙虚に受け止める姿勢を学ぶことが出来た。

  • 興味深いのは、著者が「林業」ではなく、「森林」ジャーナリスト、である点です。
    「木」は呼吸と光合成のバランスにおいてCO2を減らす側に働くけれど、森林という単位で見れば、それはほぼ拮抗するので森林はCO2を吸収・固定化しないとか、保水力は森林の木ではなく地盤で決まるとか、むやみにブナを植えても幸せにはなれないとか、山村の収入源は、元来は建築用材ではないとか、建築用材はあくまで森林産出物の極一部であるべきだ、的な話とか。
    全部が全部納得できる話というわけではありませんでしたが、森林の「機能」に、過剰にあるいは盲目的に何かを期待するのだけではイカンなあと思ったのです。

  • 非常に興味深く読んだ。

    理由は、知らない事実、あるいは勘違いをしていた事実がいくつか見られたからである。

    暗い原生林には生物が余り住んでいない事実、マツが痩せた土壌にいる理由、竹林の怖さ、輸入材は安くなく国産は質が良くないことなどが書かれてあり、読んでいて興奮させられた。

  • 日本では唯一の「森林ジャーナリスト」を名乗る田中淳夫の著作で森林に関する世の常識、我々の思い込み、認識の違いを改めて学び直そうという試み。

    自然を大事にしよう、海を守れ、川を守れと来れば当然のことながら森林も守れとついつい云いたくなるのだが何のために守るのか、そしてどうすれば守れるのかとなると、言われるほど一筋縄ではいかないようだ。

    例えば外国資本が森林で安値で買い叩いているが、乱開発されると将来的には水源涵養機能を損われる恐れがあるので反対とか良く言われているが、実際には森林に水源涵養機能が殆ど無いのが真実だという。水源涵養機能は基本的には土壌(深層岩盤)の問題で森林があることの利点は土壌流出の防止と河川の流量振幅の抑制効果なのだ。

    原生林が自然の代表という誤解があるが原生林は植生が固定化され衰退する一方なので間伐を含め手を入れなければ守れない。里山・雑木林にしても人手を掛けなくてはならないのは一緒だし、竹林の侵食が目だつ。竹の繁殖率・生命力は異常に強いので森林を駆逐するので根こそぎ伐採しなければ里山を守れない。

    林業に関しても第一次産業の典型で小規模経営と高齢化が問題で、木材品質を守るための間伐作業はおざなりになり輸入品と比べると競争力の低下は著しいことから価格は低迷し悪循環に陥っている。

    小学校で日本の面積の70%は森林だ、と習った記憶があるが今や荒廃するに任せていると其れほど遠くない将来は禿山ばかりになるのであろうか?何から手をつけて良いのか判らないが、農業・漁業に比べると林業は格段に足の長い仕事であり日銭を稼ぐのも困難な産業であることからも再生への道筋は遠いと思われる

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。静岡大学農学部を卒業後、出版社、新聞社等を経て、フリーの森林ジャーナリストに。森と人の関係をテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『虚構の森』『絶望の林業』『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』 (イースト新書)、『森林異変』『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『樹木葬という選択』『鹿と日本人―野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』(ごきげんビジネス出版・電子書籍)など多数。ほかに監訳書『フィンランド 虚像の森』(新泉社)がある。

「2023年 『山林王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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