戦略の断層――その選択が企業の未来を変える

著者 :
  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862760715

作品紹介・あらすじ

企業は生き物だ。人と同じように生まれ、成長し、発展し、成熟し、そしていつかは老衰する。その各局面において企業がとるべき戦略は異なる。自社や事業が成長過程のどのステージに位置するかを見極め、適切な戦略をとれるかどうかが、企業の明暗を分けるのだ。企業ライフサイクルに潜む7つの「断層」を切り口に、ビジネスパーソン必修の戦略理論とフレームワークを豊富なケースで解説。

感想・レビュー・書評

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  • ベンチャーの成長を7つのフェーズに分類し、それぞれのフェーズに適用できるフレームワークを豊富なケースとともにわかりやすく解説されている。
    内容は豊富だが、その分一つ一つの解説は要点だけがまとめられていて、軽く読み流してしまうと理解できた気にはなっても身につかない。行間を読んで咀嚼するか、さらに詳しい別の参考書も併読するのがいいだろう。

  • 【気になった場所】

    経営の断層
    =企業が継続的に成長or衰退の起点や転換点
    →戦略の選択と意思決定をする機会

    企業が抱える7つの断層
    ・備える→事業や創業の準備
    ・突く→綺語と市場参入
    ・構える→事業基盤やモデルの足固め
    ・攻める→事業展開と拡張
    ・守る→高度な事業運営を工夫する
    ・破る→戦略と事業の転換を企図する
    ・離れる→原点回帰とイノベーション

    経営戦略の本質とは
    →当事者の強い志ある決断と実践
    →組織全体が、この戦略が正しい!とどれだけ信じて取り組めるかで、実効性が変わる

    経営戦略=普遍的戦略+個性的戦略
    ・普遍→企業存続のため+CSRのため
    ・個性→競合との差別化のため

    戦略として成立する条件
    ・定量目標がある
    ・具体的行動の集合である
    ・現実的である
    ・全体最適の整合性がある
    ・継続性がある

    備えの断層戦略
    →重点思考、仮説思考、MECEで経営と事業の効果効率を高め、戦略を立案する

    重点思考
    →情報や課題を整理し重み付けを行う思考法
    例)
    パレートの法則、20-80ルール、ABC分析

    参入の断層戦略
    ・ニッチプレーヤーを目指す
    ・バリューチェーンで事業を実体化

    足固めの断層戦略
    →ぶれない戦略方針と軸足と体制を固めるため、競争優位の基本戦略と仮説検証スキルを駆使した上で、7Sにより組織体制を作り込む

    競争優位の基本戦略
    ・コストリーダーシップ戦略→広いターゲット×低コスト
    ・差別化戦略
    ・集中戦略

    仮説検証法
    →3C分析、PEST分析、AIDMA、AISAS

    企業の組織体制の作り込み
    →7S
    ・ハードの3S=Strategy+Structure+System
    ・ソフトの4S=
    Shared Value+Staff+Skill+Style

    攻めと展開の断層戦略
    →PPMによる経営資源の確保と、事業拡大マトリックスによる戦術レベルでの資源投下、そして機能戦略や事業部制のあり方を考える

    PPM=プロダクト、ポートフォリオ、マネジメント
    →縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェアを置き、スター+問題児+金のなる木+負け犬に区別

    事業拡大マトリックス
    →縦軸に新市場or既存市場、横軸に既存製品or新製品を置き、市場開発+多角化+市場浸透+製品開発に区別

    事業部制のメリデリ
    ・メリ→環境変化に素早く対応し、継続的な人材育成の機会が多い
    ・デリ→全社の企業方針から逸脱し、事業部ごとで利益を追求しがち

    成熟の断層戦略
    →成長に代わって持続力の獲得がテーマとなり、ROICや経験曲線などを活用しながら、改善を通してコスト削減を目指す

    ROIC=投下資本利益率とは
    =営業利益÷(現預金+運転資金+固定資産)×100%
    →事業の財務健康診断を表す

    経験曲線とは
    →経験値が貯まるとコスト低減ができる
    ・労働者の熟練
    ・作業の効率化
    ・生産技術の向上や改善
    ・生産設備の改良や簡素化
    ・製品そのものの改善

    転換の断層戦略
    →より優位で絶対的な市場地位を模索し挑戦するため、SWOTや5つの力で戦略のあり方を根本的に見直し、必要に応じてM&Aや戦略的提携などの選択肢も視野に入れる

    V字カーブと死の谷とは
    →売上水準の高い企業と、規模は小さいがニッチプレイヤーは、収益性が相対的に高い
    →上記以外の企業は死の谷に属する

    5つの力
    →業者間の敵対関係+新規参入の脅威+代替品やサービスの脅威+売り手の交渉力+買い手の交渉力

    イノベーションの断層戦略
    →他社の破壊的イノベーションを防ぐため、コアコンピタンスにより己を知り、自らイノベーションを起こす

  • 経営戦略とは何かということを、PPMや3CやSWOT分析など、様々なツールの説明や使い方、実際の会社名を記載しての事例を通じて学ぶことができる。
    起業化支援を行っている著者だからこそ、これから新商品を売り出そうとしている企業のあり方も、成熟産業での振る舞い方も、企業の様々の状態に応じたアドバイスができるのだと思う。

    この手の本は、実際に自分が考えて手を動かしてなんぼだと思うので、手元に置きながら、自社のあり方や研究対象の企業の状態を自分なりに分析する時に役立てたいと思う。

  • 経営戦略について、企業の発展段階7つを「断層」と捉えながら事例研究を豊富に交えて紹介している。ビジネスマンでなくても分かる構成となっていることなどを評価し、☆4つです!

  • 「経営戦略・マーケティング」についてのリファレンスモデル(参考書)として使える本。
    ・アプローチ:企業のライフサイクル×フレークワーク適用方法
    ・特筆点:企業のライフサイクルに合わせて、既存のフレームワークをどう使っていけばよいかをまとめている。個々のフレームワークの説明・事例集としても活用可。

  • 経営戦略やマーケティングに関するフレームワークを4PやSWOT、、マイケル・E・ポーターのバリューチェーン、5フォース、ボストンコンサルティングのプロダクトポートフォリオからアンゾフの事業拡大マトリックス、リーダー・チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーのポジショニング戦略など、様々な理論や仮説を事例に絡めて紹介した本。

    いかにも経営コンサルが書いた教科書的な本。様々なフレームワークの考え方そのものはほとんど理論としては知っているものばかりだが。まあこれだけ網羅的な本は初めて読んだかもしれない。ありったけの理論が紹介されているような感じだ。その網羅性ゆえに教科書的な印象を受けるが、本書の本質はそこではない。

    事業の展開を新規事業の企画立ち上げ段階から成長期、衰退期までを「備」「突」「構」「攻」「守」「破」「離」の7段階に分けて、それぞれのステージごとに考慮すべき項目、戦略の考え方を解説したところが本書の特徴だ。

    ステージによって、重視すべき、あるいは注意すべきポイントが異なる。それは道理。

  • K'sWork 菊池さんお勧め


    「戦略の正体とはなにか?」

    戦略の良否が企業の命運を変える大きな要素であることは間違いありません。しかし、上等な戦略が必ずその企業を勝利に導くかというと、そんなことはありません。私のささやかな経験(及び信頼すべきコンサルタント仲間の言)によれば、上等な戦略は多くの場合実行が難しく、宝の持ち腐れになる可能性が(きわめて!)高いのです。「カッコいいけど、こんな高級なこと、ウチの会社じゃできないヨ」というわけですね。つまり、戦略は内容よりも実行により本質的な問題があるのです。

    『プロフェッショナル・サービス・ファーム』でおなじみのデービッド・メイスター氏もそう考えました。彼は、新刊『脱「でぶスモーカー」の仕事術』で、タバコをやめられず、ダイエットも続けられなかった自分自身の経験を手掛かりに(!)、企業が戦略をせっせとつくり出しながらさっぱりそれらを実行できない理由を追究しています。

    メイスター氏はこう述べています。
    「私は37年間『でぶスモーカー』だったし、そのままでいる権利があると思っていた。私にとっても、ほかの人にとっても、変化に対する唯一最大の障害は『いまのところ大丈夫』と感じることだ。将来、煙草をやめれば有益であることに誰も反対しないが、それをいましなければならないと言われると反発する。」

    問題は「いま」それができないということにつきるのです。態勢が整っていない、ふさわしい人材がいない、社内の理解が得られていない等々の理由が「いま」をずるずると先送りしていきます。重要なのは、(多少半端であっても)まず始めることであって、整えるために時間をかけることではありません(耳が痛い)。

    「いま」という時間について、友人の古我知史さんが書き上げた『戦略の断層』は、また別の角度から示唆を与えてくれました。

    著者は、企業の成長線とは「つねに『非連続』に集積する変化点の集合でしかない」と述べ、その非連続点を「経営の断層」と呼んでいます。本書は代表的な戦略論のフレームワークを事例付きでていねいに紹介していますが、戦略に対する視点は決して古典的ではありません。「いま」が常に判断と決定のタイミングであり、「未来戦略の構想」と「過去からの戦略足跡」がぶつかり、せめぎあう断層であるという認識は、企業が一般則ではなく、個別的・具体的な歴史を生きているという考え方から来ています。

    戦略は確かにシナリオのような趣きを持っているため、我々はカン違いを犯しやすいのかもしれません。演出家は背景を設定し、プレイヤーの動きを制御しようとします。しかし、演劇と違って、企業の戦略ディレクターは、社内を中心としたごく一部のプレイヤーにしか影響力を及ぼすことができないので、芝居はたちまち行き詰ってしまい、あらぬ方向へずれ込んでいき、「こんなはずじゃなかった!」という悲鳴が上がる。

    だったら、最初から、シナリオに期待せず、変化と変更を楽しむような芝居を企てた方が良いのではありませんか。

    「いま」から始められることを始める。「いま」を常にクリティカルな判断の時と捉える。戦略の本質は、ひょっとしたら、階層的な知識の体系ではなく、そのような「時」の感覚に近いのかもしれません。これを<戦略時制>と呼ぶことにしましょうか。

  • 戦略コンサルティングファームを経て、現在独立系ベンチャーキャピタルにてインキュベーション業務に勤しむ著者の大作。この著書が極めて優れている点は、いわゆる「コンサル的思考法」が豊富な具体例と共にストーリー分解され、あらゆる読者にその真髄を追体験させることに成功している点である。
    3Cやバリューチェーンなどの各種ビジネスフレームワーク、仮説思考、ゼロベース思考などの抽象的思考法は、概してその説明を読んだだけでは具体的発想に結びつかず、習得は往々にして難しい。本書は著者のあまたの実戦経験から厳選した具体例と共に、何を、いつ、どの段階で、どうやって、なぜ使う必要があるのかを詳細に説く。

    日々新たな問題に対処を迫られるビジネスマン、コンサルティングファームに就職希望の学生、またロジカルシンキング系の本などで挫折した方にお薦めする。

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著者プロフィール

ベンチャーキャピタリスト/ウィルキャピタルマネジメント㈱代表取締役/アリストテレスパートナーズ㈱代表取締役,京都大学産官学連携フェロー/県立広島大学大学院客員教授/龍谷大学経済学部客員教授.早稲田大学政経学部卒業.Citibank,McKinsey & Companyなどを経て,独立系ベンチャーキャピタリストとなる.22年間で累計78社のスタートアップベンチャーに特化した投資と事業開発パートナーの実績を持つ.現在もIPOを目指すベンチャーや成長企業の取締役等を兼任.九州大学大学院客員教授,FBN JAPAN理事長,㈳衛星放送協会外部理事,大阪府市統合本部特別参与,日本生物科学研究所評議員などを歴任する.

「2022年 『リーダーシップ螺旋(DNA)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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