世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761064

作品紹介・あらすじ

15カ国、2000万人の貧困脱却を可能にした単純かつ大胆な解決策とは?「残りの90%の人たちのためのデザイン」を提唱し、スタンフォード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)など最先端の研究者から絶大な支持を集める社会起業家が贈る、本当に貧困を解決したい人たちへのメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 1.稼げる仕組みをつくるにはどうすればいいのか?

    2.貧困層がどのような手段で「稼ぐ仕組み」を生み出してきたのかが分かる本です。いままで、開発途上国に対しては援助中心のアプローチが主流でしたが、上手く行かないことが多くの失敗を経てわかってます。
    著者は、このようなやり方ではなく、彼ら自身に力をつけさせることが重要だと述べています。12章立てになっており、どのようにして稼ぐ仕組みを作り上げてきたのかを詳細に述べています。主体となっているのは農業であり、どのように改善してくのかをストーリーで書かれてます。
    貧困を解決するために必要なのは、多額の資本ではなく、彼らと対話し、どのように稼ぐ仕組みを作っていくかということを教えてくれる本です。

    3.まず大切なのは現状分析だと思いました。彼らに寄り添い、なぜこのような生活をしているのか、なにが問題なのかを見極めることから始めなくてはいけません。一方的な寄付は彼らの自立心を失わせ、結局何も生み出さないことは歴史が証明しています。また、国と話をしても、汚職が蔓延っているため、支援は貧困層に直接届ける必要があります。そのためには草の根事業が必須となってきます。一度に全てのことを変えることは無理なので、何か1つでも現場を変えることができれば、何かしら良くなるということがこの本を読んで理解できました。

  • 世界中の最も貧しい層の生活を改善するために何が必要か、という問いに対し、著者は自身の知識と経験を踏まえ、「貧困層が買える値段のサービスを提供する」ことが重要だと説く。

    貧しい人々にも自らに投資できる力があることを忘れてはならず、自らの力で収入を高め、生活を高められるという経験を積ませることが彼らの糧となり、さらに生活をよくするための投資を生んでいく、というのが著者の主張。それを著者が実際に出会い、関わっていたネパールの寒村の男性の事例を示すことで、夢物語ではないという説得力がある。このネパールの男性の姿を追っていくことで、ビジネス書でありながら物語性もあり、サクサク読み進められる良い構成になっている。

    著者は最初の章で、「現実的な解を導く12のステップ」を紹介しているが、うち10個ぐらいはNGOや国際開発協力の世界では結構、当たり前の話。違うのが「目に見えて良い影響をもたらし、大規模化できる手法を探す」というものと、「具体的な費用と価格目標を決める」というもの。前者は即ち事業を大きく拡大することを最初から考えるということであり(これは持続発展性とはまた少し違う)、後者は明らかに実利的、ビジネス的な視点。この2点は、資金的な制限からプロジェクトを想定したり、そもそも現地の人から収益を得ることを考えなかったりするNGOや国連には全くない視点。

    この2つの視点が、一般的なNGOや国連による「国際協力活動」と、著者の理論による支援との違いを生んでいる。著者は「貧しい人々が収入を増やすことに力を貸すことが重要であり、そのためには低コストで強力な解決方法が求められる。収入が増えれば、貧困の原因のうち必要と思うものを自ら選択し、自ら解決できるようになる」という考え方を持っている。

    「とにかく収入を増やす手助けをするから、そのあとの自分たちの生活向上のために必要なもの(医療、教育、生産性の高い農業手法などなど)は自分たちで考えて選び、サービスを買いなさい」という考え方は、「貧しいために手に入らないサービス(医療、教育、生産性の高い農業手法など)を提供します」という国際機関の従来の支援とはある意味で逆のアプローチ。要は、貧困をスタート地点とするか、不健康や未就学などをスタート地点とするか、その違い。

    でも、サービスや支援を提供する側がしっかり利益を得つつ、貧困を解決するというのは一筋縄ではいかない。その点が、著者の理論を面白く、魅力的に見せている一因だろう。

    ちなみに原題は『Out of Poverty : What works when Traditional Approaches Fail』で、『貧困からの脱出:伝統的な手法が失敗した時、どんな活動が実を結ぶか』といったところか。ここで言う「伝統的な手法」とは、言うまでもなく従来、国際機関や先進国政府がやってきた「必要なモノやヒトやカネを提供します」という支援のやり方。
    「失敗」という語をタイトルで使ってるあたり、原題はなかなか攻撃的。邦題も、この本に関してはそれほど大きく本の内容を損なってるわけでもなく、なかなか巧いタイトルを生み出してると思う。

    原著の出版は2008年。著者が言う「伝統的な手法」による国際協力そのものが、まだ大して長い歴史を持っていないが、その中でもさらに新しい理論と言える。出版から11年経った今でも著者はご健在。彼のアプローチを継ぐ人たちがこの先20年後の国際支援の在り方をどう、変えていくかが楽しみでもある。

  • すばらしい本なので読んでください
    問題解決、ビジネス・起業のヒント、1日1ドル以下で暮らす人たちの本当の姿などが詰まっています
    先進国に住んでいると裕福な10%の人々にだけ目を向けがちですが、残りの90%の人たちにどういう価値を提供出来るか考えたいです

  • 掛け値なしに面白い1冊。 1日1ドル未満で生活する、8億人の貧しい人々。彼らを貧困から救い出すための現実的な解法を、著者のポール・ポラック氏は貧しい人々が自らの労働でいかにより多くの収入を得られるかに焦点を絞っている。25年にわたって現場の貧困層に話を聞き、彼らの自立に本当に役立つ道具を開発・販売・指導してきた実例をあげて、徹底してビジネスの観点から語っている。貧しい人々は金がなく、農地も1エーカーの小規模であるといった状況のため、先進国での高価格・最先端機器が役に立たないといった実情は目からウロコ。

  • 368

  • 寄付という手段が必ずしも効果的でないこと、巨大な思い込みの投資が持続的な流れを作れずに終わるケースも多いこと、貧困の解決が地球のあらゆる分野の解決に向けた可能性に繋がるということ。
    彼はその為のアプローチとして「現実的な解を導く12のステップ」という極めて汎用的で具体的な道を提示しています。
    一方でこの巨大で難解な課題解決に向けては、我々含めた多くの人々のマインドセットを変えていくことが必要だということ、ソーシャルビジネスとして資金回収まで含めた循環モデルへ昇華していくことに向けた更なる宿題があるということなど、色々考えさせられる本でした。

  • 途上国の開発援助に関わる人は是非読むべき本。貧困をなくすためには、貧しい人が収入を増やすことに対して力を貸すこと。寄付では貧困は無くならない。非常に簡潔で明快なメッセージを著者自身が取り組んできた事例を紹介しながら説明している。エピソードを追う形なので、非常に読みやすい。本旨は最初の方に全て書かれているので、最初の方だけを読めば、何が言いたいのか分かる。

  • 1ドル未満で生活する貧困層が豊かになるのに必要なのは彼らが稼げる仕組みとその為に必要なサービスを販売すること。付加価値が無意味に高くても意味はなくて、求めるレベルの付加価値があり、幅広く手に入れやすい値段であることが大切。
    今2017年だと何が変わって、何が変わっていないのかは気になった。

  • # 12のステップ
    - 問題が起きている場所に行く
    - 問題を抱えている人と話,その話に耳を傾ける
    - 個々に特有の状況について,可能な限りすべてを知る
    - 大きく考え,大きく行動する
    - 子供のように考える
    - 当たり前のことを見て,実行する
    - すでに誰かがやっているかどうか調べる(やっていればする必要はない)
    - 目に見えて良い影響をもたらし大規模化できる手法を探る(少なくとも100万人が活用でき,大きな生活改善につながる手法)
    - 具体的な費用と価格目標を決める
    - 現実的な3カ年計画に基づいて実行する
    - 顧客から学び続ける
    - 他の人の考えに流されず,前向きでいる

    # 安いことは素晴らしい
    - 道具の重量を厳しくダイエットさせる
    - 余分なものはつけない
    - 時代をさかのぼってデザインすることで未来へ進む
    - 最先端の材料で昔のものに色を添える
    - レゴブロックのように無限に拡張できるものにする

  • テコになるのはどこなのか。
    どこのボタンを押せばいいのか。

    つまりそういうことかな。納得。
    Design for other 90%のファンとしては、感動した。

    2017年再読
    馬一頭の価格と運べる荷物量、これを単純に貧困層が購入できる価格帯まで運べる荷物量も比例してさげさせるという考え方、基本的には購買力がカギとなるという事だと思う。また貧困をなくすために多面的なサポートが必要とのトレンドに対し、収入の増加があれば自分達が自然とその他の項目に対してはお金を投じていくという考え方も興味深い。スラム街における陶磁器作りを担う人たちを、世界有数の博物館等で売られているレプリカ作成に回せないかというのも興味深い。

    IDEは農民たちに可能性を信じてもらう所から始める。砂漠に水をやるような作業のこともおおく、行動を起こす事が出来る人はごく一部である。だが一人生まれれれば、それをロールモデルに多くの人が変化を信じるようになるのだ。

  • 他の人のレビューが良かったので読んでみたが、期待通りでした。

    貧困問題の解決について具体的で明確に書かれていて素晴らしいと思った。私も何か実践してみたいと思わされた。ビジネスとしても成功することが必要というのがミレニアムの目標とは違って良いと思う。

  • 農業を使った貧困からの脱却。安かろう悪かろうで十分な市場が大きいことが分かりました。

  • まだ半分しか読んでないけど、今まで複雑でcatch22だらけだった問題が本当にシンプルに解決できる(かもしれない)方法が沢山紹介されている。高校生の時にこの本を読んでいたらデザインを進路に選んでいたかもなぁ。デザインに関わる人は是非読んでもらいたい。もちろんこの不平等で不条理な世の中で無力さを感じている人にも。生き方が横柄になっている人は必読!

  • 2011年の年の瀬に読んだ本で、大きなヒントを貰った本があったので紹介する。
    世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと
    元々途上国支援、特にそこでの社会起業?に興味を持ちそういった本を読み漁っていたのだが、若干、巷間溢れる途上国支援、社会起業の本に違和感を感じていた。 チョコレートやコーヒー等の従来の大規模プランテーションからフェアトレードで買い上げるモデル。更に進んで、先進国でも単純に「かっこいい」「可愛い」ブランド価値をつけたマザーハウス(途上国でのバッグ生産)のようなモデル。どれもアイディアは面白く共感する部分は大きいのだが、どうも先進国で「買ってやる」ことを前提としていて、本当に現場の生活の延長線上にある、彼らの力を活かした支援のような気がしないなぁ、というのが漠然とした実感だった。  
    今回本書のIDE(International Development Enterprise)のモデルに感心したのは、以下の二点。
    ●途上国の生活の延長線上、現在その地域で作られている作物の生産性/付加価値をあげ、貧困のループから抜け出すことを支援している。  具体的には低コストで大きく生産性をあげることができる農具の開発/提供/技術指導。
    ●先進国のデザイナー・技術者たちに夢を与えるような「技術・デザインと貧困撲滅を結びつける」可能性を示している。
    また、本書ではクリシュナ・ババドゥ・タパ一家が1日1ドル未満の生活から2エーカーの農場で年間4800ドルを稼げるようになるケースを取り上げており、これがとても現実感に溢れエキサイティングなストーリーだった。この本に溢れる魅力をなんとか紹介してみたいと思う。  

    1.貧困支援の最先端は農村の生産性向上だった!
    この着眼点から全てが始まっているといってよい。 現在多くの貧困層が生活の基盤としているのは小規模農場だった。国際食料研究所(IFPRI)の調査官であるオクサナ・ナガエッツが小規模農場に関する2005年の概要報告書をまとめた際に発見した事実は注目すべきものだった。 世界に存在する5億2500万の農場のうち、約85%にあたる4億4500万の農場は5エーカー(2ヘクタール)未満だったのだ。 また、ポール・ポラックは現場で多くの農民と話す中で以下のことに気がつく。 80歳近い彼の素直な好奇心が掴みとったポイントは以下

    <貧しい人たちから学んだ4つのポイント>
    ・貧しい人たちが貧困状態にある最大の理由は、十分なお金を持っていない、ということだ。
    ・世界で極度に貧しい人たちのほとんどは、1エーカーの農場から収入を得ている。
    ・高付加価値で労働集約的な作物を育てる方法がわかれば、貧しい農民たちはもっとお金を稼げる。たとえばシーズンオフの果物や野菜を育てるのである。
    ・そのためには、非常に安価な灌漑装置、良い種子と肥料を手に入れる必要がある。利益の出る価格で作物を売れる市場にもアクセスできなければならない。
    地球上に生きる人間は誰でも水に対するアクセスを持っており(そうでなければ数日で死んでしまう)、小規模農場はバケツで水を汲み上げて散布するといった方法で灌漑を行なっている。 ポール・ポラックが取ったアプローチは、この世界人口の1/3の生活を支える農場(1つの農場に4人家族がいるとして)の生産性を上げることだった。IDEのアプローチの主要技術はドリップ灌漑である。

    ※IDEのドリップ灌漑のプレゼンテーションをここでみることができる。 ロスの大きい従来の灌漑技術から、非常に低コスト(1年間に元が取れる技術だ)の導入により需給が逼迫し野菜の価格が高くなる乾季にも作物を育てることができ、年間を通じて安定した現金収入を得ることが出来る。   またIDEは無償での設備供与はしない、Business Relationであるというのも大きな特徴だ。寄付により掘られた井戸や学校が誰も管理する人間がいないため打ち捨てられるといったケースを聞いたことはないだろうか。無償で与えられたものは自ら管理するインセンティブが生まれづらい、一方で本当に必要だと認知された技術で、それが手の届く価格設定であれば、成長への梯子の序段に手をかけることができるのだ。そして一旦そのサイクルに入ってしまえば無限にその成長を拡大していける。本書ではクリシュナ・ババドゥ・タパという農夫の一家のケースを切り取っている。ポール・ポラックはババドゥ一家が1日1ドル未満の生活から2エーカーの農場で年間4800ドルを稼げるようになるまでのケースは決して稀なる成功体験ではないという。また、IDEは専任のスタッフを派遣し技術指導も行なっている。その内容はドリップ灌漑だけでなく肥料の作り方や低価格の害虫駆除方法にも及ぶ。  

    2.学ぶべき問題解決手法
    ポール・ポラックの問題解決手法について、12のステップを提案しており、これはすべて非常に重要だと考えるが、特に重要と思う点を挙げてみる。

    12のステップ
    ①問題を抱えている人と話し、その話に耳を傾ける
    途上国開発に於いて陥りがちな罠として自らのアプローチを押し付けてしまうことがあるが、そこにある課題を共に認識し、自分が差し出せるものを提案し、相手の決断により取らせるという支援のありかた。
    ②具体的な費用と価格目標を決める
    理念や信念がどれだけ立派でもその効果が出なければ開発支援にならない。コストを数字に落としこみ具体的なViabilityを測らなければならない。
    ③現実的な三カ年計画に基づいて実行する
    できることを確実なステップに基づいて実行することが重要である。ビル&メリンダ財団は「長期ビジョンは、3000万世帯の年間収入を1年間に500ドルずつ増やす」というIDEのアイディアを気に入った、より形になってみえる2ヵ年計画を求めたという。最終的にビル&メリンダ財団は14百万ドルの支援を約束する。  

    3.デザインの可能性
    ポール・ポラックは「D-Rev:残りの90%の人たちのためのデザイン」という組織を2007年に立ち上げた。現在のデザイナーは世界の富の10%を持つ先進国の人々のために働いているという。勿論それが彼らが「喰う」ための道なのだが、残りの90%を相手に仕事をすることへの可能性の大きさを、ポール・ポラック率いるIDEはその活動で示している。MITでも適正技術と開発と普及を目指しD-Labが設立され学生たちの注目を集めている。技術者とデザイナーを勇気づける動きだと思う。 その他にも例えばTABLE FOR TWOでもそういった途上国と先進国が共に生きるモデルが通底しており非常に共感する。やはりキリスト教的な「可哀想」だけでする援助や寄付だけでは世界は変えられないのではないか。※ちなみにTFTに注文をつけるとしたら支援先の情報発信充実。オペレーションを行なっている提携団体の姿がみえづらい。  

    最後に。幾多ある途上国開発の本を読んできたが、ここまでクリアな戦略性を持ち、具体的な成果を残している団体は稀だと思う。 他地域にも横展開できる汎用性と無限の拡張性を備えている。非常に夢が広がる本だった。

  • 著者が批判する有名な本を事前に半分くらい読んでたからさらに面白く読めたし、実用的な内容豊富のがわかりやすい結論がまさにタイトル通り「シンプル」に示されていたところが良いところでした。
    寄付とビジネスの関係性をケーススタディーで学んでいるような感覚で読めたので、幅広い方にお勧め出来る本かなと思います。
    難しくないし、ストーリー性があるから飽きません。買っていい本ですね。

  • 途上国の、特に農村地域の所得向上に尽力してきたIDEの創設者による
    貧困解決に関する書籍である。
    実際に、これまでの25年間で約1700万人の人の所得を向上させているそうだ。

    このIDEは実践のビジネス手法を用いて、1日1ドルで暮らす人の収入を増やすという目的で創設された。その解決手法はすばらしいの一言。
    彼によれば、国際機関や大学は彼らの視点にたった支援を行っていないという。支援金額だけ大きく、現場の話を徹底的に聞いたりして構築された支援策でないというのがその理由。

    貧困問題をビジネスで解決したいという起業家、各種援助機関、研究機関関係者の方は必読だと思う。

    ■参考になった箇所
    【貧しい人たちから学んだ4つのポイント】
    ・貧しい人たちが貧困状態にある最大の理由は、十分なお金を持っていないということ
    ・世界で極度に貧しい人のほとんどは、1エーカーの農場から収入を得ている
    ・高付加価値で労働集約的な作物を育てる方法がわかれば、貧しい農民たちはもっとお金を稼げる。たとえば、シーズンオフの果物や野菜を育てるのである。
    ・そのためには、非常に安価な灌漑装置、良い種子と肥料を手に入れる必要がある。利益の出る価格で作物を売れる市場にもアクセスできなければならない。

    ・貧しい顧客のための製品を開発する場合、小型化と低価格、拡張性がキーワードになる。

    ・なぜ世界は、1エーカーの農場と小作地の灌漑という2つの現実から目をそらすのか。
     ①普段高いマージンを得ようとしている企業にとって、利益を上げられるか不明確だからだ。
     ②大企業のほとんどは、貧しい人たちのニーズや希望に合う低価格製品やサービスをデザインする方法を知らない。
     ③いつも世界の上位10%の人たちに製品を売っている企業は、先進国のインフラや集中化されたサプライチェーンに慣れている。

    ・世界に存在する5億2500万の農場のうち、約85%の農場は5エーカー未満。

  • 良書。
    一日一ドル以下で暮らす人々をはじめとした貧困層が豊かに暮らせるようにするための、実践的なアイデアを紹介しているのだが、アイデア事態に限らず、提言されている内容はほとんどすべてが素晴らしい。また、海外の貧困問題に限らず、様々なところにも応用できそうだと思った。

    この本を読んで、僕の将来に対する考えは大きな影響を受けた。それほどまでに大きなインパクトを持つ本。
    研究者だけじゃなく、ビジネスも立派な「力」になりうるし、下手をしたらそれは研究者の貢献度を大きく凌駕するのかもしれない。

    一読を勧める。

  • 読みやすかった!し面白かった。
    ただ、解説にもあるように、バハドゥのようにやる気があり、イノベーティブな人がどれだけいるのか、そういうチャンスがあったらやる人をどう育てるかというのが難しいのだろうなと思った。
    この本にあるようなアプローチの仕方が日本でも使っていけたら…

  • 立ち読みした感じかなりいい

  • 社会的起業家による実践的な貧困問題対策のアイデア本。

    <印象的な箇所>
    貧しい人たちが貧しいのは何故か。お金を稼げないから。お金を稼げないから貧しいのだとは、同語反復的な回答だが、これが真実。

    力がないから? 権利がないから?
    違う。収入があれば、健康、住居、家庭が維持できる。
    貧困層向けのビジネスを拡大することで、貧困層の収入拡大、貧困問題の解決にもなる。

  • 貧困撲滅を「1日1ドル以下で暮らす人々の年収を向上させる」ことで
    解決しようとする、企業家であり社会貢献のリーダーでもある、ポール・ポラックの著書。

    すごい。いや実にすごい。
    貧困層をメイン顧客と認識して、その貧しさの裏返しとして持っている「労働力の安さ」に
    着目して、農業を中心としていかにビジネスを成り立たせるかという話を
    30年にわたる現場活動の蓄積の記録として、これ以上ないリアルさで
    読者に対し、「本当に貧困を撲滅するとはこういうことなのだ」と伝えてくれている。

    過去私が出会った、どの社会貢献に関する提言よりも
    「リアル」で「現実味」があり、
    「無限大に広がる可能性」を持つものだと思った。


    本書を読んで強烈な印象を受けたポイントをいくつかメモ。


    p.195

    足りない麦や米やトウモロコシを稼いだ金で買うのである。

    p.217

    民間サプライチェーンをつくるための8ステップ

    ・助成金をなくす
    ・コストを下げる
    ・小規模の製造業者を探す
    ・地元の販売業者を雇う
    ・井戸掘り工を育てる
    ・マイクロクレジットを使えるようにする
    ・マーケティングと宣伝活動
    ・戦略的なデモンストレーション用の耕作地を設ける

    →つまり助成金はマーケティング活動に使うということ

    p.244

    「どうすればスラム企業がグローバル市場で効果的に競争できるかを考える。
     この答えも驚くようなものではない。小規模農場の同胞と同じく、
     スラムの住民も労働賃金が世界で最も低いから、それを活用するのだ。
     正々堂々、『アウトソーシングを引き受ける』と名乗りを挙げるのである。」


    p.286

    「ほとんどの開発団体は物資を寄付し、市場の力を損なうような形で
     運営している。
     そして、何か価値あるものを貧しい人たちに寄付したときに感じる気分の
     良さを核として、ミッションや資金集めの戦略を築いてる。」



    著者は貧困層に対して助成金で支援することは無意味どころか悪影響が大きいと
    ズバッと斬っているが、
    それも読んでみればなるほどである。

    お金を使うならば「啓蒙」「教育」が一番だと著者は考えているようだ。

    「文字が読めなくては豊かになれない」
    なるほど、それはそうだ。
    だが、実は識字できても、老眼によって文字が読めない人が世界には
    たくさんいる、ということを教えてくれた人はいるだろうか?
    少なくとも私にとってはポール・ポラックが最初の人だった。

    貧困解決には「これでOK」なんていう安易な方法は存在しない。
    まずは著者のいうように、とことん現場に足を運び、彼らを顧客として
    その考えや、知らないこと、可能性あることについて生の情報を得るのが最優先。
    そこから、いかに安くて実効性ある対策がとれるかを考え、
    PDCAをガンガン回し、ビジネスとしての成立までを加速させていく。
    これに尽きる。

    本書は日本では東日本大震災のあとに刊行されており、
    日本人解説者から、巻末にてポール・ポラックの考え方を東日本大震災からの
    復興を目指す日本のプロジェクトにも活用してみてはどうか、という
    提言がなされているが、
    まさに同意である。

    たしかに日本の低所得や失業は、世界の貧困とは質が違うかもしれない。
    ただし、「付加価値のとれる事業を低コストで実現させることで利益を生んでいく」
    というビジネスの当たり前の原則については、
    なにひとつ変わりはない。

    それを改めて教えてくれた。

    たとえば、被災者ではなかった人の、
    義援金を出すという志は評価されるべきだが、
    それは問題解決の本質にはほとんど貢献しないことは認識すべきだろう。

    一方、有効そうだと思われる貢献スタイルがあるとすれば、
    たとえば企業活動として現地での付加価値をつけられる事業展開
    (もちろん、現地の方々の支持を得られるような内容の)
    といったことだろうか。

    それを声を大にして啓蒙してくれる人が日本にはあまりに少ない。
    惜しい。
    せめて本書が、日本の人々に、1人でも多くに読まれることを祈りたい。

  • 貧困、特に小さな農地しか持っていない農民をどうやって貧困から抜け出させるかを非常に具体的に書いている。
    さまざまな援助がかえってその国をダメにしていることが多いいま、現場にいる人間のニーズを細かく拾って現実に沿った形で実現させることで貧困から抜け出せる、そんな道筋が示されている。
    日本だってこれを読んでから震災復興に取り掛かったっていいに違いない。

    意外と農業って重要でお金を稼げる仕事なのかもしれない。

  •  貧困に対して、持続可能性のある手法で取り組むという、新たな視点を吹き込んでくれた。
     貧困に対して、補助金、寄付、は効果がないだけではなく、弊害を生むという。寄付は、常套手段なだけに、この指摘は厳しい。しかしながら、補助金、寄付が、ゆがんだ市場を生むことは、どの世界でも知られている。とくに社会がしっかりしていなければなおさらだ。当事者意識がないと、結局、資金も有効に使われないようだ。
     貧困に対して、収益性を議論することも、一種のタブーになっているが、この考え方に真っ向から反対し、貧しい人が、少しだけでも儲けられることが大切とうたう言葉は、共感を覚えた。
     そして、最後は著者の強い想いに動かされる。自分にも何かできる、と思わせてくれるすがすがしい読後感だった。

  • 筆者の意見に全く同意見です。私自身将来は世界に出て貧困に苦しんでいる人々を救う仕事をしたいと考えているので大いに参考にさせていただきたいと思いました。

  • 今年の川上読書大賞。いまのところ。本としてはかなり冗長で、もうちょっと編集さんがきちんと仕事すればいいのにとは思うけど、すばらしい。以下内容だけど、ぜひ買って読んでください。世界の90%は一日一ドルで生活している。その人達も、土地は持っている場合が多い。しかし得られる年間の利益は50ドル。その中から洪水へのリスクなどを考えながらできる投資は少ない。賭けて洪水になると土地も取られて死ぬから。だから40ドルの投資でできるドリップ灌漑、足踏みポンプが有効。寄付は悪影響。ボトムの人に投資させるという形でないとだめ。世界の10%(の上澄み)に向けて仕事をしている自分。

  • 日経日曜書評

  • IDEのポールポラック氏が実践する残りの90%の人たちのデザインに関する取り組みなどが載っている。
    徹底した現場主義と収益性のあるビジネスの追求によって、一日一ドル以外で暮らす農民を救う。

    訳者があとがきで挙げてい2つの課題も参照の価値あり。

  • ・より多くの人が恩恵を受けられるプロジェクトを選ぶ

    ・「貧困から抜け出すには、人は自分自身のお金と時間を投資しなければならない」

    ・貧困地域の経済成長≠国の経済成長

    ・食料問題は、生産性の低い農地がやまほどあるから問題ない-なんて意見もあるけれど、この本を見ると、生産性を上げようにも金が足りないよなと分かる。もっとも食料が不足するようなことになったら、作物価格も上がって、投資も出来るようになるのかもしれないが

    ・大規模より小規模の方が効率的なこともある

    ・支援対象者自身が何を一番必要としているのかを見極める。自分たちの考えを進めることばかり考えて、そこを見誤ってはならない

    ・生物多様性についての記述は的外れ。狩りの対象になるような生物は絶滅危惧種の一部にすぎない

    ・あとがきで「世界を変えるデザイン」が紹介されていたことに衝撃を受ける。今まさに手元にある本…

  • 貧困問題はボランティアや援助では解決されない。
    貧困で苦しんでいる人たちが本当に求めているものは「収入」「お金を稼ぐ方法」。

    自立することができなければいつまでたっても問題は解決されない。

    この本では、貧困に苦しんでいる人々に低資本で収入を得られるビジネスアイデア・技術を紹介している。しかも自分たちもちゃんとビジネスとして成り立つという。

    ボランティアや援助が救えなかった問題をビジネスとして救う。
    素晴らしい。痛快だ。

    偽善はいらない。
    金じゃない、みんな知恵を出せ。

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