〈大学〉再考: 概念の受容と展開 (明治大学人文科学研究所叢書)

制作 : 別府昭郎 
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862851055

作品紹介・あらすじ

大学や学部という考え方はどのように形成され,日本はその制度をいつ導入し定着させたのか。その問いを出発点に,イギリス,フランス,ドイツ,アメリカなどの大学の歴史を分析するとともに,わが国と同様ヨーロッパから大学制度を導入したオスマン帝国の歴史を比較することにより,今日の〈大学〉とは何かを改めて考察したはじめての本格的な実証研究である。
大学はヨーロッパ・キリスト教世界を背景に12世紀から13世紀にかけてボローニャとパリで自然発生的に誕生した。その後,イングランドやスコットランド,アメリカに,そして大陸ではスペイン,ドイツなどに伝播・普及して,16,17世紀にはそれぞれの地域の特徴を備えた「大学」へと変貌していく。国際化と地域化が並行して進むなかで,19世紀には近代科学の発達や国民国家の形成と相俟って,近代市民社会を支える制度的基盤となった。
各国の歴史的,文化的条件により大学の概念やシステム,意味も異なるものになったが,わが国では学部として工学や農学という実学を取り入れ,神学部を置かず,日本独自の講座制度を発達させた。そのような歴史的経緯をへて,今日,新たな国際化と大衆化に直面し,大学のあり方が根本から問われている。本書は多くの知見と示唆に富み,大学関係者必読の一書である。

感想・レビュー・書評

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  • 表題の<再考>のプロセス、というより事象をくわしく<調べた>過程は、よくわかった。特に参考文献リストに掲げてある一次史料の一覧は、価値を見出す人も多いかもしれない。
    ただ、<再考>した上での結論への展開が私にはわかりにくい箇所があった。「大学史」ないし「歴史」のアプローチは概してこういうものなのかもしれない。

    本書の最大の特徴は、5章でトルコの大学を取り上げていることだ。読む前までは、世界の覇権争い時代に、一度も列強の支配を受けることの無かった同国の高等教育の政策に興味津々だった。が、意外にも淡々とした
    印象を与える内容だった。以下に簡単にまとめを試みる。

    オスマン帝国時代は、帝国のエリート官僚養成のために、モスクにおいてメドレセ教育(イスラム高等教育機関:ギルド型の教育・訓練)が行われていた。この教育がとられていたのは、14世紀中ごろから20世初頭までの帝国終焉までだった。その間西洋の列強の干渉を受けた。
    トルコ共和国成立後、トルコ史テーゼを早々にこしらえる必要があった。その記述内容の是非・妥当性の検討は、専門家に委ねるとして、『トルコ史概要』を国民に啓蒙した。しかしこれでは検討が不十分であったので、「公定歴史学」なる学問が創設された。

    1933年8月1日にイスタンブル大学が開校した。前日までは帝国末期に設立されたダーリュリュ・フュヌーン(諸学の館)が存在した。
    1946年に、それまでの法律学校、高等農学校、言語・歴史-地理学部と、イスタンブールの行政校、その他の学部を組み合わせて、アンカラ大学が発足した。何れの大学も「共和国」の建国に際して、国民の「統合」のために活用された。
    以上から、政治・行政の一部として大学が機能している印象を持った。

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著者プロフィール

(べっぷ あきろう)明治大学名誉教授。


「2023年 『「個」を強くする大学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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