〈大学〉再考: 概念の受容と展開 (明治大学人文科学研究所叢書)

制作 : 別府昭郎 
  • 知泉書館 (2011年3月31日発売)
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表題の<再考>のプロセス、というより事象をくわしく<調べた>過程は、よくわかった。特に参考文献リストに掲げてある一次史料の一覧は、価値を見出す人も多いかもしれない。
ただ、<再考>した上での結論への展開が私にはわかりにくい箇所があった。「大学史」ないし「歴史」のアプローチは概してこういうものなのかもしれない。

本書の最大の特徴は、5章でトルコの大学を取り上げていることだ。読む前までは、世界の覇権争い時代に、一度も列強の支配を受けることの無かった同国の高等教育の政策に興味津々だった。が、意外にも淡々とした
印象を与える内容だった。以下に簡単にまとめを試みる。

オスマン帝国時代は、帝国のエリート官僚養成のために、モスクにおいてメドレセ教育(イスラム高等教育機関:ギルド型の教育・訓練)が行われていた。この教育がとられていたのは、14世紀中ごろから20世初頭までの帝国終焉までだった。その間西洋の列強の干渉を受けた。
トルコ共和国成立後、トルコ史テーゼを早々にこしらえる必要があった。その記述内容の是非・妥当性の検討は、専門家に委ねるとして、『トルコ史概要』を国民に啓蒙した。しかしこれでは検討が不十分であったので、「公定歴史学」なる学問が創設された。

1933年8月1日にイスタンブル大学が開校した。前日までは帝国末期に設立されたダーリュリュ・フュヌーン(諸学の館)が存在した。
1946年に、それまでの法律学校、高等農学校、言語・歴史-地理学部と、イスタンブールの行政校、その他の学部を組み合わせて、アンカラ大学が発足した。何れの大学も「共和国」の建国に際して、国民の「統合」のために活用された。
以上から、政治・行政の一部として大学が機能している印象を持った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 高等教育
感想投稿日 : 2012年1月6日
読了日 : 2012年1月6日
本棚登録日 : 2012年1月6日

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