「生きる力」の強い子を育てる (BE HERE NOW BOOKS人間性教育学シリーズ 2)
- 飛鳥新社 (2011年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864100878
作品紹介・あらすじ
誰の目から見ても"いい子"は、本当は非常に危うい。学歴や学業成績が人生を決める時代は終わった。ソニーの上席常務として、数多くの"エリート"たちの盛衰を見つめてきた著者による、子どもの内なる力を引き出す、新しい教育のためのヒント。
感想・レビュー・書評
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単にペーパーテストでいい点を取るようにトレーニングするのではなく、大地をしっかりと二本の足で踏みしめ、自らの存在を肯定し、自らを常に磨き、自己実現へ挑戦し、明確な意思を持って、物事を前向きに解決するように積極的に行動する事。
大自然を畏敬し、周囲と調和し、全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保し、人生を楽しむ事ができる。感受性と独創性が豊かで、好奇心が旺盛で創造する喜びを知っている者が育つ教育が望ましい。
「生きる力」の定義
1、大地をしっかりと二本の足で踏みしめて立つ力
2、自らを肯定する力
3、自らを常に磨く力
4、自己実現へ挑戦する力
5、意思の力
6、物事を前向きに解決する力
7、大自然を畏敬する力
8、全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保する力
9、人生楽しむ心
10、感受性、感性
11、独創性
12、決断力
13、好奇心
14、やる気
15、人間的魅力
16、積極性、行動力
17、バイタリティー
18、交渉力
国連加盟国の中でシュタイナー教育が公教育として認められていないのは北朝鮮と日本だけ。
国家主義教育学
国家や支配者に忠実で、隣人に親切で、社会のルールやマナーをよく守り、勤勉で国の発展に献身的に貢献する人を育てる。国に押し付けられた枠の中でしか発想できず、視野が狭く、自らの価値観を確立できず、個性や独創性に乏しく、ひとつの方向に猪突猛進する、洗脳された戦士を育てる。
どうしたらフローに入れるのか?
一つには完全な自由を与えなければならない。どこでいつ何をするか、強制があってはならない。
褒めるという行為はフロー教育では御法度。なぜならば、人から褒めてほしいという欲求(外発的動機)が強くなると、子ども達の心は外に向いてしまい、内側からこみあげてくる声(内発的動機)が聞こえなくなってしまう。内発的動機に接地できないと人は「フロー」に入れない。
セルゲイブリン、ラリーペイジ、ジェフベゾス、ジミーウェルズは、モンテッソーリ教育を受けた。
卒業生は知的独立心が強く、権威が嫌いで人から指示、命令される事を好まず、パラダイムをたたき壊してブレイクスルーする傾向がある。
何の予備知識もない母親がごく自然に自分の産んだ子に接すれば、無条件の受容はひとりでに発露される。ただし、出産直後に30分以上、母親と赤ちゃんだけで、誰にも邪魔されずに過ごす事がとても大切。
それは、出産直後は母子ともにオキシトシンやβエンドルフィンといった愛を司る機能があるホルモンが濃厚であり、心の絆が結ばれやすくなるから。僅か30分でもその絆は一生続く。
最近の出産風景は、明るい部屋で分娩台に乗せ、産婦にドンドン話しかけたり、理想の出産をイメージさせたりしている。あれでは新皮質が活性化してしまい、わざわざ難産を誘導するようなもの。
「生きる力」を伸ばすには、新皮質の暴走を抑え、古い脳を活性化しなければならない。
人間の無意識には、性欲、バーストラウマ、死の恐怖、トラウマ、シャドーなど、5匹のモンスターが巣食っており、そこから反社会的な衝動がフツフツとわき上がってくる。
その衝動が強すぎてペルソナや超自我による統制能力を超えると、問題行動となる。
一方、モンスター達のさらに奥には「もう1人の自分」が眠っており、それが首尾よく目を覚まして活動を始めると、子供たちは善良で誠実で「生きる力」の強い子に育つ。
情動に接地できなければ、動的な能力は伸びず、「生きる力」は強化されない。
あらゆる能力に関して、表面的なスキルを伸ばそうとして、教えれば教えるほど、より本質的な情動や知能の発達を妨げる事がある。それは子供たちの「生きる力」を奪う事に他ならない。
家庭教育や保育の失敗で、情動に蓋をしてしまった子は、
徹底的なフローに入る事ができれば回復し、「生きる力」を身につける事ができる。
全身を使う、長期間ひとつの作業に夢中になって取り組む、泥とまみれる、などを組み合わせると、効果はさらに大きくなる。
グラウンディングとはなにか
1、地に足をつける
2、大地に根付く
3、固い基盤に人を降ろす
4、地面との感情的ないしはエネルギー的な接触を確立する
5、自分がどこに立っているかを知っている
6、自分が何者であるかを知っている
7、自己の存在の根本実在に触れる
8、現実に根を下ろしている
9、身体、セクシャリティとつながっている
10、喜び、安心感とつながっている
11、肝が据わっている
12、人々とつながっている
私達が自分自身だと信じている、ペルソナ、自我、超自我などは、長年にわたって人の目を意識して作り上げてきた。
大自然と真摯に対峙すると、それらは存在意義を失って縮小する。それに伴い、無意識レベルに巣食っていたモンスター達もおとなしくなる。その結果、もう1人の自分、野生の自分が目を覚まし、生きる力が強化される。
生きる力が伸びる4要素
1、無条件の受容
2、大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に古い脳を徹底的に鍛える
3、フロー
4、大自然との対峙
いろいろ深く考えていくと、結局は子供を強制せず、大自然の中で夢中になって遊び回り、たっぷりフローを体験すれば、子供たちの生きる力が伸び、いい人生につながるという
きわめて平凡な結論に達する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「学力は落ちてもいい」が衝撃。
全員がクリエイティブである必要があるのだろうか? -
すごい!
・今まで自分が学んだ、コーチングの基礎になる考え方、
・学校教育に関する、モヤモヤした感情
・”ゆとり教育”失墜の本当の理由
が順を追って、わかりやすくまとまっている。
これを読むと、これまでの子育て教育感が間違っていなかった
ことが判ると同時に、人間の能力を伸ばすために必要な環境
についてのTipsが、知識として獲得できる。
後は、いかにこれらを実践するか?
だな。
本書を通じて知った、サドベリー校については、
また別の書籍を通じて見聞を深めたい。
以下、気になったキーワードを書籍からピックアップしておく。
・”ゆとり教育”は、教師の力量が問われる
優秀な教師には、スポットがあたらず、
ダメ教師のお粗末授業ばかりがクローズアップされた。
・アメリカのボストン郊外にあるサドベリー・バレー校
NHKが紹介した番組(1997年放送)のビデオを入手
ここは、「生きる力」を強い子を育てる教育の数少ない実践例
・日本ほど教育内容の規制が厳しい国は他にない
アメリカでは、デューイ教育以外にも
シュタイナーやモンテッソーリの教育など、多くの
特にな教育が許されており、サドベリー教育でさえも
公教育として認められ、政府からの補助金が支給されている。
・「与える教育」ではなく、「ひきだす教育」を
適切な環境を用意し、自然に育った子どもは、いまの社会の常識に
とらわれずに自らの価値観を熟成し、社会を改革する力を身につけていく
・「人間性教育」←著者が推奨している定義
の系譜
01.ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778:フランス)
02.ヨハン・ハインリッヒ・パスタロッチ(1746-1827:スイス)
03.ヨハン・フリードリッヒ・ヘルバルト(1776-1841:ドイツ)
04.フリードリッヒ・ヴィルヘルム・フレーベル(1782-1852:ドイツ)
05.エレン・ゲイ(1849-1926:スウェーデン)
06.ジョン・デューイ(1859-1952:アメリカ)
07.ルドルフ・シュタイナー(1861-1925:ドイツ)
08.マリア・モンテッソーリ(1870-1952:イタリア)
09.アレクサンダー・サザーランド・ニイル(1883-1973:イギリス)
10.セレスタン・フレネ(1896-1966:フランス)
11.ロリス・マラグッチ(1920-1994:イタリア)
12.ダイエル・グリーンバーグ(1934-:アメリカ)
・グリーンバーグが提唱したサドベリー流の教育は、極端
徹底的に遊び尽くして満足した子どもは、必ず学習意欲が高まる時が来る。
日本の母親達は、必死になって就学前から文字を教え、知識を教えよう
としているが、まったく無駄である。むしろ失ったものが大きいと考える。
・子どもを癒すには、「無条件の受容」が必要。
「〜ができたら、〜を与える」ではない。
・近代に入ってからは、
ルソー著『エミール』(1963年)が「性善説」の代表格
J・ズルツァー著『子どもの教育と指導の試み』(1748年)が、「性悪説」の代表格
・いまの教育は、社会の枠組みを絶対的な正義とみなして、
子どもたちを強制的にその枠の中に押し込めようとしている。
ところが、枠が存在することにより抑圧が生じ、子ども達のモンスターが
肥大してさまざまな問題を生じているというメカニズムを十分に理解していないと、
本当はまともな教育は望めない。
・昔から、「リーダーは声の大きいやつから選べ!」という格言がある。
岡田武史前日本代表監督は、それを聞いて
「そういえば俺も、昔から声のでかいやつばかりキャプテンに選んできたな。。。」
と言っておられた。 -
心身共にたくましい子に育ってほしい。1歳半の子どもに願うこと。「生きる力」の強い子を育てる、というタイトルに惹かれて読みましたが、いい意味で予想外でした。
というのは、古い脳を鍛える、フロー、大自然の中で思い切り遊ぶ、という主張の背景として教育学、歴史の観点から整理して説明していたこと。なかなか興味深いです。
一部共感納得できない部分もありましたが、読む価値ありでした。
今後も参考にして子育てを楽しみたいと思います。 -
<もくじ>
まえがき
1章 エリートシステムの崩壊
2章 なぜ「ゆとり教育」は失敗したのか
3章 「生きる力」を失った日本人
4章 世界一教育規則の厳しい国、日本
5章 お国のための教育
6章 「与える」教育ではなく「引き出す」教育を
7章 文字や計算の早期教育は不要
8章 「フロー」体験のすすめ
9章 千住家の教育白書
10章 家庭内保育の落とし穴
11章 子どもの根源的な傷を癒す
12章 育児の常識は間違いだらけ
13章 「しつけ」は子どもへの不信の裏返し
14章 無意識に巣くうもんスターたち
15章 子どもたちの中に「神」を見出す
16章 「お勉強」では健全な知能は発達しない
17章 顔から手や足が出ている絵は健全に育っている証拠
18章 教えると発達が止まる!
19章 奇跡の保育
20章 ブロックを取り除く
21章 内なる野生を呼び覚ます
むすび
付録 1996年中教審答申「生きる力」
「人間性教育学」シリーズによせて
2014.03.22 『10歳までが勝負!「生きる力」をはぐくむ子育て』を見つけた時に見つける。
2014.06.15 借りる
2014.06.30 読了 -
まさに目からウロコの一冊でした。
徹底的な受容、大脳新皮質が育つ前に大脳辺縁系を育てる、無我夢中になる集中力、大自然と対峙する。