ゼロからトースターを作ってみた

  • 飛鳥新社
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感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864101943

作品紹介・あらすじ

掘る!削る!砕く!溶かす!材料の調達から加工・組み立てまで全部自分でやっちゃいました!愛すべき若者が「手作りの限界」に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • <所要期間9ヶ月、移動距離3060キロ、費用は1187.54ポンド(約16万円)>

    やぁ。今日はちょっとおもしろい本を紹介するよ。
    「ゼロからトースターを作ってみた(”The Toaster Project”)」。書いたのはイギリスの大学生、トーマス・トウェイツだ。卒業制作として、テーマに選んだのがこれってわけ。
    ゼロからトースターを作るってどういうことかって・・・? そりゃつまり、本当にゼロから、つまり原材料から作るってことさ!
    実に大変なことだった。えっと、そりゃまぁちょっとズルもしたんだけどね。
    トーマスはその顛末をブログにアップしていたんだって。写真もたくさん撮影していて、もちろんこの本にも載っているよ。

    トーマスはまず、一番安いトースターを買ってみたんだ。約4ポンド(約530円)。これを分解する。闘うにはまず敵を知らないとね。
    本当にバラになるまで分解したら、何と404もパーツがあった。・・・うーん、大分多いね。
    最低限必要そうなものに絞り込んで、種類別に分けてみた。
    鉄。マイカ(雲母)。プラスチック。銅。ニッケル。

    さぁ、じゃこれらを調達しに行こう!
    トーマスは大学教授や企業の担当者に問い合わせたり相談したりしながら、何とか材料をかき集めていくんだ。鉱山に旅したり、近所のゴミ捨て場から発掘もしたよ。ニッケルみたいに、ひどく環境汚染されたところに行くか、あるいは不法侵入するかしか道がなくて、ちょっとズルをしちゃったものもあったけど。
    集めた材料は成形しなくちゃならない。時には高熱を掛けることも必要だ。おかあさんの電子レンジをダメにしたり、自作の溶鉱炉と奮闘したりしながら、ようやくトースターらしきものができたんだ。
    さて、そのお披露目(トーストを焼くショー)がどうなったか、知りたい人は本を読んでみてね。

    結局のところ、トーマスがトースターを作るには、9ヶ月の期間と3060キロの移動距離と1187.54ポンド(約16万円)の費用が必要だった。
    で、結論は、といえば。
    安価に手に入るものだって実は長い間の技術の集大成であり、なかなか個人が作れるものじゃないってことだろうか。ありきたりすぎるかな・・・? でもこれって結構大事なことかもしれない。
    トーマスが言うように「世界を救うにはトースターを作ろう!」とまでは言えないけど、当たり前のように使っているものについて、ちょっと考えてみようか、と思えるよ。


    *・・・こんな感じの本です。口調が移ってしまったので、感想もこの調子で書いてみました。

    *そんなわけで読みやすい邦訳なのですが細かいことで1点。有名な天体物理学者「カール・サガン博士」というのは「カール・セーガン」でしょう(フランソワーズ・サガンじゃないんだから(^^;))。この本の読者層には「COSMOS」のカール・セーガンを知っている人は結構多いように思います

    • ぽんきちさん
      bokemaruさん

      インタビュー記事のご紹介、ありがとうございます(^^)。未読でした。
      そうですね、口調は軽いけれど、実は結構精神的に...
      bokemaruさん

      インタビュー記事のご紹介、ありがとうございます(^^)。未読でした。
      そうですね、口調は軽いけれど、実は結構精神的にはハードだっただろうな、と思います。だって卒業がかかってるものね。
      何はともあれ、「無事に終了して、本になって、それがそこそこ売れて、よかったねぇ」と著者さんには伝えたいです。そして「楽しませてもらって、私もいろいろ考えるきっかけをもらったよ」とも(^^)。
      2012/12/11
    • usalexさん
      やはりお読みになりましたね!
      こちらは未読ですが、新聞の書評を読んだ時、これはぽんきちさん向きだと思ってました(笑)。
      やはりお読みになりましたね!
      こちらは未読ですが、新聞の書評を読んだ時、これはぽんきちさん向きだと思ってました(笑)。
      2012/12/19
    • ぽんきちさん
      usalexさん

      思い浮かべていただいて光栄です(^^)。

      するするっと読めて、そしてちょっぴり、自分もトースターを作った気分になれまし...
      usalexさん

      思い浮かべていただいて光栄です(^^)。

      するするっと読めて、そしてちょっぴり、自分もトースターを作った気分になれました。
      2012/12/20
  • ご迷惑でしょうが、この本ごと著者さんを抱き締めたくなりました!なんて前向きなアホ(←最高の褒め言葉です)。「文明社会とは名ばかり、君に時計が作れるか?僕だってマッチ1本作れやしない」うろ覚えながら、星新一さんの文章が蘇ります。本格的探偵ナイトスクープネタ!?若さゆえの発想力、行動力、無謀さ。眩しくて素敵すぎ!身近にいたらハラハラものですが、こういう人大好きです♡企業への無謀なテレアポのくだりや、実際に値段が付けられ商品棚に陳列された写真は思わず吹き出しました。購入希望、子どもたちにも見せてあげたい!

  • おおお面白かった!
    原材料の段階からトースターを作ることに挑んだ学生のノンフィクション。
    原文も軽快なのだろうし、訳も良くて、すいすい読めるしあちこちで吹き出す。
    しかし最後に納得の社会的主張もしっかりされていて、自分のライフスタイルをちょっと考えてみようという気持ちにまで引っ張る力がある(私はなかなか思わない方だと思うのだけど、それでも!)。
    同じ著者で、イグノーベル賞受賞のヤギになる方も是非読みたい!

  • 筆者がヤギになろうとした本から、この本を読んでみた。
    正直、材料集めのところとかはよくわからなくてふーん、ほーんとなって、ただただ原料を素人が集めて金属や高分子を作ることの大変さと今の技術の進歩を痛感した。
    実際に完成して筆者の考察を読んで、確かに今の製品は普段は見えないけれどものすごい過程を踏んでいて、値段は割に合わないし、もっと言えばその値札に現れないコストがあることに同意する。これは農業に関わってこそ思えたかもしれない。
    環境への影響だとか低価格だとかは、必ず誰かが受け持つ。そこに対処していくためには適正な価格、適正な法処理などが必要だと分かった。責任を誰が持つかって難しい。大抵の場合弱い立場の人、関係ない人が請け負わされるから、それを改善できるようにしたい。
    実感として強い学びにはならないのが残念だけど、身近なものを原材料から作るのはものすごい苦労と多くの学習が得られるだろうなと伝わった。

  • いろんなものがブラックボックスになり、なにがどうなって我々の便利な生活に寄与しているのかよくわからない現代において、”必要なものと不必要なもののボーダーラインにある”トースターという、ただパンをいい感じに焼くためだけの道具。

    そんな”些細な”ものを原料から作ってみたら?という突拍子もないチャレンジに修士論文で挑んでみたのが本作。
    既製品をバラして、どんな材料が使われているのかを分析して、同等のものがどう作られるのかを調べて、今の自分がいる足元から、とりうるオプションを探って、トースターを作り上げる。
    ウェールズの鉱山からいただいた鉄鉱石で電子レンジから鋼を作ろうとしたり、酔っ払いの助言を頼りにスコットランドの山にマイカを取りに行ったり、
    ジャガイモを溶かしてプラスチックを生成しようとしたり、”ミネラルウオーター”を電気分解して銅を析出させたり、コインを溶かしてニッケルワイヤを作り上げたり。読んでる分には楽しそうな自由研究。
    科学と工業の繋がりを足元から追っていく様がおもしろい。

    しかしたかだか数千円で手に入るものを作るのにこれほどの苦労が必要。産業が積み上げてきたもの、”巨人の肩”の偉大さを知る。
    それこそが本研究の目的である。「ほんの少しの快適さ」のために、人類はこれまで何をしてきただろう?
    バカっぽくてスラスラ読めるんだけど、立ち止まって考えるきっかけにもなった。読んでよかったです。

  • 面白い
    ガチで銅とかニッケルとかを鉱山から取って来て電気分解して作ってた
    →ほんとうにそうやって作ってたんだなあ、いや、当たり前なんだけど、元々は全部自然にあるものからできてるって忘れそうになるからさー、特にプラスチックとか、あれやっぱり相当難しいみたいね、かなり苦労してた

    最後の、経済と環境の話も良かった
    経済が発展すればこんなに作るのが大変なんだトースターがたった数百点で買えるわけで、でもやっぱりその裏では相当のコストもかかってるはずで、さらにコストの中には見えないコストもあって、例えば大量に排出される二酸化炭素とかね、こういうのが巡り巡っていつか自分に健康被害という形で帰ってくるから、今のうちに、なんとかエコな経済になる仕組みを作りたいねって話。確かになあ。

  • トースターをゼロから作ろう。
    まずは鉄鉱石を取りに行って、鉄を精製しなきゃ・・・。

    なかなかパンチの効いた青年だ。頭のネジが一本取れているに違いない。最初はそう思いながら読んでいたが、最後まで読むとそうではないことがわかった。原材料からトースターを作り上げようと格闘する過程で、人間が作っている社会がどう動いていているのか、というより人間とはどんな生き物であるのかが彼の視点で浮き彫りになってくる。
    トースターのような比較的単純な機械ですら、人類の英知の歴史の結晶である工業技術の手を借りずにーつまり人の手を借りずにーゼロから組み立てることは現実的には不可能に近い。人は、本質的に孤独ではありえない。
    そして、本来作るのに多大な労力と費用を必要とするトースター(をはじめとする様々な製品)があまりに安価に入手できるためには、どこかで大切なものが犠牲になっているはずだ、ということもジワリとわかってくる。
    一つのトースターを形成する原材料から求める旅は、現在人間が営んでいる経済活動というシステムの病理へと繋がっていく。
    最後に彼が例としてあげた2つのニッケル精製工場の対比が秀逸だった。そしてそこに希望はあるのだと思う。
    彼なりの問題提起もあるので、詳しくは本書を読んでいただいた方がいい。
    しかし、最後に僕の胸に突き刺さった彼の言葉を記しておきたい。
    ”現状では実現できなそうだからって、未来もそうだと決めつけるのは無意味だ。”

  •  日本語版が刊行された3年前に、たぶんWIREDかなんかでこの本の紹介が出ていて興味を持ったけど、その後すっかり忘れてた。
     それがひょんなことから目の前に現れたもんで飛びついて読了。
     やっぱり面白い。トースターを作るために原材料から自力で手に入れるなんてことを本気で取り組む、そしてどうなるか。「マイカ」って、雲母のことなのね。
     
     翻訳もよかったと思う。英国の学生が卒業制作の過程をブログに綴った雰囲気の文体に思えた。原文ではどうだったかとか、そういうのは分からないけど。

     で、最後のギャラリーでの実演だけど、電圧の低い日本、それも100Vの東京だったら、ちょっとはパンに焼き色が付いたかもなあ、と思った次第。

  • 一見すると面白おかしいだけの内容に見えますが
    人類が発展してきた本質があぶり出されている
    マット リドレー著 繁栄 あたりと合わせて読むとよいかも

    • よしおさん
      たまたま手元に「繁栄」があるので読み比べてみます
      たまたま手元に「繁栄」があるので読み比べてみます
      2015/03/03
  • 2013年12月20日読了。タイトルのとおり、一人のイギリスの大学生が「ゼロからトースターを作ってみた」体験の記録。一見して「なるほどそれは面白そうだね」となるタイトルと内容だが、鉱物の専門家との会談で「そもそも『ゼロから』とはどういうことなのか?何を原材料とみなすのか?」と哲学的な問答を交わしたり、原料の生産地を調べるたびに「中国、行けない!」という結論が出てきたり、自分で決めたルールを最初の「鉄鋼の精製」からすでに破る羽目に陥ったり(「いや、ルールを広義にとらえるなら違反してはいない」と自問自答するのが面白い)と彼の取り組みは想像以上の困難な道のりをたどることになる・・・。面白いと思ったのは、彼がこの取り組みをリアルタイムでブログなどで公開していたことから援助者・情報提供者が現れたり、完成品の展示・稼動デモを行う場が用意されたりすること。10年前だったら「単なるアホ」として話題にもされなかったのかもね。鉄鉱石や石油由来の製品に囲まれた非人間的な生活を送っている我々だが、それでも世界は昔よりは少しは面白くなってはきているのかなあ。

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