はつなつみずうみ分光器 after 2000 現代短歌クロニクル

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  • 左右社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865280326

感想・レビュー・書評

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  • レモンイエロウの表紙が目に眩しく、晴れやかな気分。

    歌人の瀬戸夏子さんによる2000年以降の歌集のブックガイドであり、この20年の間に短歌界で何が起こったのか、のクロニクルである。

    正直、私には難しく、ちょっと気が遠くなりかけていたところも多くあるが、それは本のせいではない。

    瀬戸さんの熱意と誠意をひしひしと感じる力作、労作だと思う。

    読んでいて、こんなにも様々な色を持つ歌人がいるんだ、と、短歌の世界の広さ深さに眩暈がした。

    取り上げられている主な歌集は55。
    歌集/歌人ひとりの紹介に四ページずつ、紹介と批評が割かれている。

    口語短歌、抒情、フェミニズム、ロマンティック、定型、比喩、突然変異、母音、韻律、浪漫主義、シティーボーイ短歌、幻想、匿名性、アリュージョン、ポリティカルコレクトネス、ポストニューウェーブ、下ネタ、ユーモア、主体と客体、BL、リアリズム、ファンタジー、男性性、フェアネス――帯より

    気になる歌を詠う歌人もたくさんで嬉しい悲鳴。

    でも、短歌って、というか、芸術って、危険で危ういものなのだな。

    心しておかないと。

    あと、穂村弘氏の暗躍が目覚ましい。←別に暗躍ではない。

    • 5552さん
      ベルガモットさん、111108さん、こんにちは。

      <丸裸でフライパン>短歌にできそうですか!
      でも、フライパンって鈍器にも盾にもなっ...
      ベルガモットさん、111108さん、こんにちは。

      <丸裸でフライパン>短歌にできそうですか!
      でも、フライパンって鈍器にも盾にもなって、意外と使い勝手いいかもですね♪←使う予定はないですが!

      そうなんですよね。ほむほむ、ほむほむって親しみ込めてファンは呼んでいますが(また、呼べることも魅力のひとつなんですが)穂村さんって、偉大なんですよね。

      これからも、ほむほむ大好き同好会メンバーのひとりとして、よろしくお願いします☆

      2022/10/18
    • 111108さん
      5552さん、ベルガモットさん、こんにちは。

      〈丸裸〉も〈フライパン〉も5文字ですしね!
      両方とも武器としても強そうですね!

      そうですね...
      5552さん、ベルガモットさん、こんにちは。

      〈丸裸〉も〈フライパン〉も5文字ですしね!
      両方とも武器としても強そうですね!

      そうですね〜本当に穂村さんさまさまですね。
      ほむほむ大好きでよかった♡
      2022/10/18
    • 5552さん
      111108さん、ベルガモットさん。

      ほんとだ!
      五文字ですね。
      ……いつか『短歌ください』にフライパンの題詠が出題されたときのた...
      111108さん、ベルガモットさん。

      ほんとだ!
      五文字ですね。
      ……いつか『短歌ください』にフライパンの題詠が出題されたときのために、考えときます!
      2022/10/18
  • 再読

    編者・瀬戸夏子の、各歌集/歌人の分析が鋭くて冷静で、でも所々で短歌への愛情、熱量が伝わってくる。

  • 瀬戸夏子(1985年~)氏は、早稲田短歌会、同人誌「町」(2009~11年)、「率」(2012~)に参加する歌人。
    本書は、2000~20年に出版された(かつ第1歌集から第3歌集まで)歌集55冊を取り上げ、同期間の短歌界のトピックスや流行も加えて、まとめたものである。また、山田航の『桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表』(2015年)の姉妹本にあたるが、本書は、同書が取り上げる以前の世代の穂村弘、東直子、吉川宏志、枡野浩一等から、同書以降の世代までカバーしており、年代の幅が広い。著者は、短歌を始める「スターターキット」の役割を果たしたい、とも書いている。
    私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、木下龍也等の歌集や短歌入門書を読み、半年ほど前から新聞短歌に投稿している(最近ぽつぽつ採用もされるようになった)ものの、全くの自己流のために不安を覚えていたところで、書店で本書(と上記の『桜前線』)を目にして迷わず購入した。
    即買いした理由は、55冊の歌がまとめて読めるというお得感もあるが、何より、各歌人・歌についての解説が役に立つと思ったことによる。
    そして、一通りページを繰ってみて感じたのは(全くの短歌素人ゆえだろうが)、かくも多様な型の歌を詠む歌人がいることの驚きと、かくも多数の全くわからない歌があることの不思議と、やっぱりこれは面白いと思える歌人がいることの喜び・安心感だった。(これは、たまたま先に読んだ『桜前線』の読後感と同じである)
    その中で気になった歌人・解説は以下である。(岡野大嗣と木下龍也は、『桜前線』に書かれているように、「場の詩型」を志向しているという点で、最も支持しているが)
    ◆枡野浩一「文語は絶対に使わない。五七五七七の短歌定型を守る。わかりにくい=文学的な比喩は使わない。糸井重里によって「かんたん短歌」と命名された。ただし「かんたん」とは読者にとって読むのが「かんたん」なのであり、つくるのが「かんたん」なわけでは決してない。読むのが「かんたん」な短歌はつくることはむずかしい。・・・あきらかに枡野の短歌は、短歌を詠まない人=歌人以外にもわかるように短歌をつくっている」
    ◆東直子「ですます調や、他者への呼びかけ、これまで使われることのすくなかった助詞も、東はさも当然のように導入した。思わず真似したくなる、あるいはほとんど意識せずについ真似してしまう、ナチュラルさがある。このテクニックをワンポイント取り入れると、劇的に初心者感が減り、こなれ感が出る。」
    ◆川崎あんな「近代短歌は<私性>=作者の存在のあり方から歌を読みといて味わえるようにつくられるのが基本姿勢だが、真っ向から対立する「詠み人知らず」の姿勢を鮮明に打ち出している。」
    ◆永井祐「永井の持ち味は、適切な距離感である。他人を勝手に歌のための都合のいいアイテムにしないこと。「ぼくのいる位置」から「肯定」すること。かっこいい。こんなやり方は永井祐にしかできなかった。フォロワーが多いのも納得である。」
    ◆千種創一「レバノンに在住している歌人の歌だ。昨今の中東情勢のきびしさのただなかに身を置きながら、前のめりになりすぎず、かといって身を引きすぎるわけでもなく、そのなかで真摯に歌を詠もうとする気配が伝わってくる。その生身の記録としての価値もある。」
    様々な現代短歌歌集に触れて、自分に合う歌・歌人・読み方・詠み方を見つけることができる好著である。
    (2021年12月了)

  • 2000年〜2020年に上梓された第一歌集から第三歌集までを対象にした、短歌ガイドブック。

    歌人である家人の歌集も紹介して頂いているので以前から存在は知っていたがようやく読めた。

    若い頃イメージしていた、触れてきた短歌とはやはり趣がちがう。あらためて、短歌はフィクションで(も)あるということの認識も得られた。

    紹介されている歌人たちの歌や、コラムでつづられた短歌の歴史などを読んでいると、こういう世界には入っていけないだろうな、という感じがした。

    死ぬまでに一首くらいは残したいと思っていたが、鑑賞しているだけの方が良いのかもしれない。
    どんな表現形式が自分にあっているのか、未だに見つけられずにいる私には。

  • パッと読む。すると、今度は読んだ人が短歌を詠む、そんなブームが続いているらしい。自由にうたえる自由を


    若い人はいいな。2000年以降の歌集、いろんな人。


    ”口移しで夏を伝えた いっぱいな灰皿、開きパナしの和英”
    千種創一

  • ・現代短歌のショーケースとして、これを入口にいろいろ拡げて行けそう。
    ・紹介されてる中では、枡野浩一と穂村弘しか知らなかった。
    ・正直言うと、まだ良さの分からない短歌も結構あったけど、「これは!」というのもたくさん見つけた。
    ・気になったのは高島裕、中澤系、石川美南、北山あさひ。歌集も読みたい。
    ・あと石川啄木とか与謝野晶子とかも改めて読みたくなった。

  • 升野から入り俵万智、穂村と、触れてないというには少し知ったかぶりをしたいし、触れているというには心許ない経験。この本は2000年からの短歌のシーンを解説したハードルの低い短歌スタートアップ本。

  • 21世紀の短歌史を体系的に提示してくれるスターターキット。良い短歌を「詠む」ことは良い短歌を「読む」ことなしには達成し得ない(ただし短歌という形態だからこそテクニック云々に固執するのは煩わいという理解は大前提にある)と承知しているので、「よくまとまっているな」という印象を受けた。あとがきにもあるが、短歌に対する著者のエネルギーは確実にこの本に凝縮されている。あとは、まだ混沌とした光しかもたない短歌の入門者が、本書という分光器を通じてそれぞれの波長に分かれ、短歌に邁進することを期待するのみである。

  • 短歌を読むのが大好き。いつか詠んでみたいとも思ってる。そんな気持ちで本書を手に取ると、なんというか、雑音が多すぎる。

    どこまでがニューウェーブでどこからがポストなのかとか、ライトバースとニューウェーブの違いはなんだとか、どうでも良くないか?
    そんなふうに歌人を区分わけしないと楽しめないのか短歌って?
    その区分が歌壇内での派閥?みたいなのを生んでいるような記述もあり、読んでて非常に馬鹿馬鹿しくなる。
    文壇にもそういうのあるんだろうが、小説は別にそんなの知らなくてもその本単体との出会いだけで楽しく読める。
    「私性」を全面に押し出す現代短歌だからこそ必要な解説なのかもしれないが、一般読者を幻滅させると思う。歌人は歌人に向けて歌を詠んでるのか?そんな閉じた文学じゃないと思うんだけどなあ。

    笹井宏之を初めて読んだ時の感動をもう一度味わいたい。そのための手引きになればと思って本書を手に取ったが、反感ばかり持ってしまった。
    それから、自分がこの短歌素敵と思う基準はなんなのかいまだに分からない。笹井宏之は大好きだけど宇都宮敦は全く響かない、この違いはなんなのでしょう。それも本書では解き明かせなかった。

  • 別の著作の『桜前線開架宣言』の第二弾として本だが桜前線は現在読まれている歌人の紹介が中心。
    本書は瀬戸夏子さんの思い入れに共感できると引き込まれる本。たくさんの歌人を紹介しているので興味を持った歌人については物足りなさもあるが、短歌集を読めということだろう。
    引き込まれた。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2005年の春より作歌を始め、同年夏、早稲田短歌会に入会。その後2009年の創刊から2011年の解散まで同人誌「町」に参加し、現在「率」同人。著作に第一歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』(私家版、2012年)、第二歌集『かわいい海とかわいくない海end.』(書肆侃侃房、2016年)。

「2019年 『現実のクリストファー・ロビン 瀬戸夏子ノート2009-2017』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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