- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865280463
作品紹介・あらすじ
"マンスプレイニング"を世に広めた新時代のフェミニズムを代表する作家、ソルニットの歩んだストーリー
「若い女となること。それは数え切れないほどさまざまに姿を変えて出現する自分の消滅に直面することであり、その消滅から逃避し、否認することであり、時にはそのすべてだ。」
父のDVから逃れるように家を離れ、
サンフランシスコの安アパートに見つけた自分の部屋。
女に向けられる好奇や暴力、理不尽の数々を生き延び、
四半世紀暮したその部屋でやがてソルニットは作家になった。
生々しい痛みと不安とためらい、手放さない希望を描くはじめての自叙伝。【9月末刊行】
通りすがりにつばを吐きかけてきた男。元恋人に刺されて死にかけた友人。
アパートの管理人が語ってくれた、追い立てられ続けた黒人の歴史。
歩くことの自由を知ったこと、女性が自由に歩けない理不尽への怒り。
ゲイの友人たちのファッションとおしゃべりがもつケアの優しさ。
バロウズのパーティに潜り込み、美術雑誌に書いた記事。
はじめての本をまるごと葬ろうとしてきた編集者──。
自由と抑圧が交錯するアメリカ西海岸、1981年。
拾い物の家具、ガラクタ市で見つけた年代物のソファとともに始まったのは、
女をいないも同然にあしらう男たちに抗い、自分の声を持ち、なるべき私になるまでの物語だった。
感想・レビュー・書評
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シックでおしゃれな表紙の次に飛び込んできたのが原題。それらはあまりに相反しており引っかかった。(邦題も意味はほぼ同一だけど、詩的に映っちゃってどうしても響いてこない…)
話はサンフランシスコにあるアパートへの引っ越しやその地域での交流、まるで古き良きアメリカにでも触れるような情景から始まるから一瞬何がテーマなのか忘れかけてしまう。しかしその中から筆者の言わんとする事が徐々に見えてきた時、これは間違いなく自分も知っておくべきテーマだと感知した。著者のことをよく知らないまま手に取っちゃったけど、妙に説得力があって言葉の一つひとつがジワジワと思考に広がっていく。これでもかと悔しさも覚えていった。
気を紛らわす(筆者はそれを「消失」と呼んでいる)方法が延々と語られた時は、著者も自分も心が虚しくなっていくのが見て取れた。
ノンフィクション作家を目指す過程では、作品名といった固有名詞とか正直分からない部分も多かったけど、読書が彼女の救いになっていたのは一番共感できたことかもしれない。と言うか、それを知れただけで今回は充分だった。
「いろいろなものの断片を組み合わせて新しい絵を描いてみたかった。その見えない世界の市民権を得たかった。私は本によって、本の中で、本のために生きたいと思っていた」
過去の著書を未読のまま、それでも何とかなるだろうといつもと同じ勢いで開いてみたけど今回は読んでおいた方が良かったかなって。そうした上でまた今作に戻るってパターンなんだなと汗
でも前述の読書やジェンダー論(「開かれること、信じてもらえること、重んじられることの欠落」)、また著者の視野を拡げてくれたQueer Cultureを目の当たりにしたことで決して無駄足にはならなかったとも言える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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私のいない部屋 レベッカ・ソルニット著: 日本経済新聞(会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZ...私のいない部屋 レベッカ・ソルニット著: 日本経済新聞(会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD0123V0R01C21A1000000/2021/11/13 -
私が「声」をみつけるまで 米作家レベッカ・ソルニットさん:朝日新聞デジタル(有料会員記事)
https://www.asahi.com/ar...私が「声」をみつけるまで 米作家レベッカ・ソルニットさん:朝日新聞デジタル(有料会員記事)
https://www.asahi.com/articles/ASQ154JX3PD9UCVL00N.html2022/01/06
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邦題はもちろんウルフの「自分だけの部屋」をもじったものだが、原題は自分が存在しないことの回想といったところか。回想記。人類=mankaindで女性が何者でもなかったのはそう昔の話ではない。沈黙してきた女性が声を上げること。「声をもつことには3つの鍵となる要素がある。それは声が聞かれること、信じてもらえること、そして重んじられることだ。」本書もソルニットが発する声。
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レベッカ、ソルニットをフェミニストにしたのは、一つの机なのかもしれない。
もちろん、「女や子どもを殴るのは自分の権利」だとして実行してきた男と、それを受け入れてきた女の娘であったことや、その後の自分に起きた出来事も影響はあるだろうが。
机をくれた友人は、彼女を黙らそうとしたかつての恋人から15回刺され生還した。そして、彼女のくれた机はソルニットの「声のプラットフォーム」になった。
「説教したがる男たち」を書くことになった経緯や、その後彼女の耳に入る多くの女の勇気ある決断が書かれている。
沈黙せず声を持つということ。
「声をもつことには三つの鍵となる要素がある。それは声が聞かれること、信じてもらえること、そして重んじられることだ。」
聞かれることは、嫌がらせや脅迫によって場から締め出されないこと。
信じてもらえることは、語られたことがそれ自体の内容と文脈で判断されること。
重んじられることは、自分におきたことを明確にする権威となることだ。重要で無い人物として、言葉に何も力がないと、声は届かない。
最後に書かれた「金継ぎ」のメタファーは、なるほどなあ、いい考え方だなと思った。器が壊れたことを隠すのでなく、むしろ目立たせて、以前とは違うやり方でその器をかけがえのないものにする。
年を取ると誰しもが、「金継ぎ」だらけになる。傷の修復そのものを美しいものとする。
本当に美しいと思う。
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hasemaさん
あなたの書評を読んで、骨がありそうな本書だけど、がんばって読みたい!と思いました。
『声をもつことは……三つの鍵とな...hasemaさん
あなたの書評を読んで、骨がありそうな本書だけど、がんばって読みたい!と思いました。
『声をもつことは……三つの鍵となる要素がある……』
『金継ぎ』のメタファー……傷の修復そのものを美しいものとする……
これらの言葉にグッときました。多分、ブクログやってなかったら、一生知ることのない分野の書物だと思うので…!
ブクログで紹介してくれたことに感謝します(^人^)2022/11/27 -
workmaさん
コメントありがとうございます。
今日、「説教したがる男たち」の読書会でした。この本は、今日に備えて読んだ本でした。この本...workmaさん
コメントありがとうございます。
今日、「説教したがる男たち」の読書会でした。この本は、今日に備えて読んだ本でした。この本と「沈黙させられるいくつかの問い」の3冊を読むことで、いくつかのことが見えてきたなと思いました。かなりつらい読書でしたけど(笑)
男の説教と女の沈黙は対になるもので、(家父長制度というクロノス的時間と、より複雑で微妙な現実をじっと持ち続けるカイロス的時間)レベッカ・ソルニットは声を持つことで変えていこうとしているようです。
でも、同時に、ネガティヴケイパビリティの発想が、違った切り口にもなると思いました。二項対立ではなく、その二つの構造そのものを変えることも、次の時代にはあるのでは?
workmaさんの感想も楽しみにしてます!
またいい本紹介してくださいね。2022/11/27
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「ダメージはそれまでとは別の運命を人に与える。しかし自分の人生を生き、意味のある仕事をすることが妨げられるわけではない。時として、何か悪いことが起きたにも関わらずではなくそれゆえにあるべき存在になり、すべき仕事に踏み出すことがある。」
現代アメリカで偉大な書き手のレベッカソルニットが、小さな部屋を借り、自らの声を見つけてゆくまでの回顧録。まるで歩くように彼女の半生をめぐってゆく。それは、無いものとされる性を生きる、不在の生を生きることでもあった。
自分の人生を見つめることが、彼女の書くことの主題につながっていく。それが、自分の生きづらさから連なり、他の虐げられた人へのメッセージになってゆく。
悲しいことがあったからこそ、痛みがあるからこそ、聞こえることもある。できることもある。
背筋を伸ばして、心の向かう方へ生きていこうと、励ましをもらった。
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■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001200756
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不安、生を無効化される恐怖が身の回りにあった若い日々から模索し苦しみ、『なにはともあれ、なるべきものになった』までを綴る、したたかで美しい文章。構成が整っていて読みやすい。文学的表現や歴史や紀行文的な要素が散りばめられていて、たとえばフェミニズムに戸惑いを感じているひとにも勧めやすいと思った。
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