毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集

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  • 左右社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865280999

感想・レビュー・書評

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  • 図書館から借りた本だからしないけど、歌の周りに感じたことを書きたいと思った。この本が出たのを知り、短歌を作るのをやめたのかと思ったが、そうではなさそうでひと安心。ちなみに私のPCは一番に『枡野』が出ますよ。

  • 死とかちょっと暗い短歌が多くて刺さらなかったから星3、

    好きな歌を書いてみたけど、違う気分の時に読んだら刺さる歌はまた別なんだろうなと思う。栞がサラダ記念日の俵万智さんとの手紙で、よかった。



    「がっかり」は期待しているときにだけ出てくる希望まみれの言葉

    歩きだす 冬のにおいを吸いこんで 今朝見た夢を思いだしてる

    この歌は名前も知らない好きな歌 いつかも耳をかたむけていた

    あの人は元気でしたか? いや別に何もおしえてくれなくていい

    ほんとうにそのことだけをまっすぐに願えただけでいい初詣

    だれかからメールがたまに来るような よい一年でありますように

  • 短歌を好きになるきっかけは枡野さんの本でした。

    「靴下のたるみをなおす要領で俺を肯定したい日もある」

    いつ読んでもいい。自分も短歌を作りたくなる。そんな本です。

  • 枡野浩一全短歌集を読みました。

    枡野さんの本は『かんたん短歌の作り方』だけしか読んだことがなくて、その中で紹介されている作品や、創作論みたいなものを知っているだけでしたので、作品としてまとまって触れるのは初めてでした。

    素直に楽しめない部分と心に染み込んでくる部分が両方ある歌集だなと思いました。心のどこかでこの歌集に浸ってはいけない感じがして何かの抵抗が生まれたり、揺さぶられたくないところを執拗に攻め込まれているような感覚になったりもしました。

    でも、読んでいくうちに枡野短歌に対する抵抗がゆるんでいきます。言葉にできなかった、憎しみや、絶望や、悲しみが、湧いてきて、切ないなあと思いました。

    それらを言葉にしてしまったらどこにもいけなくなると思っていたけど、枡野さんはめっちゃ言葉にしてて。短歌という型の力もあって濃厚な切なさを味わいました。

    一つだけ歌をピックします

    「2022 虹」より

    飛びたいと十三歳で思ってた 五十三歳でも思ってる

    書き下ろしの歌なのでしょうか、2022年なので近々の歌のようです。

    この「飛びたい」は「自殺」と「活躍」の二つの意味がかかってると思います。

    40年間、真剣にそういう矛盾した格闘をしてきたんだと思います。だから良くも悪くもこんなに人の感情を揺さぶるのだと思いました。

  • タイトルのインパクトが強くて思わず手に取った。

    p158塩酸をうすめたものが希塩酸ならば希望はうすめた望み
    p159葬式は生きるわれらのためにやる 君を片付け生きていくため
    p184しなくてはならないことの一覧をつくっただけで終わる休日
    p246朝焼けがとてもきれいで生きていてよかったような気がする色だ

  • なかなかにめんどくさそうな人だけど、相当に魅力的。
    何度も読み返したい。

  • 911-M
    古典・詩歌コーナー

  • 独立独歩の孤高の歌人、枡野浩一の全歌集。短歌は大いなる愚痴、ほのかな希望。
    「こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう」「いろいろと苦しいこともあるけれどむなしいこともいろいろとある」「だれからも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け」「毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである」「好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君」「ほんとうにそのことだけをまっすぐに願えただけでいい初詣」「だれかからメールがたまに来るような よい一年でありますように」「ニュースにはならない日にも虹は出て消えて私がおぼえています」「飛びたいと十三歳で思ってた 五十三歳でも思ってる」「消えるから炎 やまない雨はなく いつか必ず死ぬから命」

  • 「もう愛や夢を茶化して笑うほど弱くはないし子供でもない」
    「殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である」
    「前向きになれと言われて前向きになれるのならば悩みはしない」
    「「複雑な気持ち」だなんてシンプルで陳腐でいいね 気持ちがいいね」
    「ハッピーじゃない だからこそハッピーな歌をつくって口ずさむのだ」
    「本当のことを話せと責められて君の都合で決まる本当」
    「誰からも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け」
    「陳腐だと言いたいときは「普遍性ある」というのが決め手」
    「手荷物の重みを命綱にして通過電車を見送っている」
    「いちぬけた君を時々思い出すためだけにでもこちらにいよう」
    「本当のことを伝えて憎まれてあげるくらいの愛はなくって」
    「抱きしめた夢の中では生きていて重さもあって温かかった」
    「願いごと何度も何度も言いそうで流星群は眺めなかった」
    「泣く泣くな枡野 それなりに転がる夜もあったじゃないか」
    「幸福に暮らしましたというふうに嘘なんだけど伝えてください」
    「そうだった そういうとのが好きだった 傷つけ合って別れた人の」
    「朝焼けがとてもきれいで生きていてよかったような気がする色だ」
    「心中をする相手などいないからあしたもちゃんと蒲団で起きる」
    「君がみた夢を一緒にみるような そして笑ってめざめるような」
    「気をつけて行ってらっしゃい 行きよりも明るい帰路になりますように」
    「努力とは希望を持っている人にだけゆるされたまぶしい助走」
    「まっすぐに批判されたい 宛先も差出人もわかる言葉で」
    「法律で裁かれている友達を法のすきまでゆるしていたい」
    「法律が裁かなくてもゆるせないだれかのことをゆるしはしない」
    「文章に書ける程度のかなしみを綴って君に見せておやすみ」
    「ツイッター「フォローさせる」は選べない 愛を強要できないなんて」
    「生きていてよかったなんてよく思う 明日死んだっていいとも思う」
    「誕生日おめでとう きょうも好きでした あしたもきっと好きだと思う」
    「だれかからメールがたまに来るような よい一年でありますように」
    「目がさめた場所に忘れてきた夢を中央線で思い出してく」
    「私には才能がある気がします それは勇気のようなものです」
    「眠れない私もいつか永遠に眠るからいい おやすみなさい」
    「あひるの子 みにくいままで愛される話であればハッピーエンド」
    「正義感あじわいながら気持ちよくいじめたいから起こる炎上」
    「名前すら忘れた人をくりかえし思い出しては傷ついている」
    「殺さずに生きてこられてよかったな だれかのことも 自分のことも」
    「雨上がりに虹が出るなんて 人間が作った物語みたいです」
    「ニュースにはならない日にも虹は出て消えて私がおぼえています」
    「かみさまというのはきみのしたことをかなしんでいる誰かのことだ」
    「見覚えのある絶望を二度目なら愛せるような気もしています」
    「ただひとつ悲しいことがあるだけで私の中のすべてが黒い」
    「会いたくて会えない人はあなたには会いたいなんて思ってません」

  • 今気に入った句と、これから気にいる句はきっと違うんだろうな。

    次に読む時、どれが刺さるか楽しみ。

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著者プロフィール

一九六八年東京都生まれ。歌人。雑誌ライター、広告会社のコピーライターなどを経て一九九七年、短歌絵本を二冊同時刊行し歌人デビュー。短歌代表作は高校国語教科書に掲載された。短歌小説『ショートソング』、アンソロジー『ドラえもん短歌』、入門書『かんたん短歌の作り方』、『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』など著書多数。目黒雅也や内田かずひろの絵と組み、絵本・児童小説も手がけている。

「2023年 『おやすみ短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

枡野浩一の作品

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