毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集

著者 :
  • 左右社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865280999

作品紹介・あらすじ

短歌ブームは、ここからはじまった――。歌人・枡野浩一、デビュー25周年にして、待望の全短歌集刊行!

 世の常として、他人に言えない孤独を歌にすると、他人に言えない孤独を抱えた、多くの人たちに愛される、のです。
 そして、そのことは一切、誰の孤独も軽くはしないのです。
 でも、歌は。
 あぁ、歌は。

 枡野さんのこの御本、とてもうれしい

――小沢健二




簡単な現代語だけでつくられているのに、読むと思わず感嘆してしまう「かんたん短歌」で若い世代の短歌ブームを牽引した歌人・枡野浩一。 デビュー25周年を記念して、入手困難になっていた短歌集『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』『ますの。』『歌』全収録作に、『結婚失格』など、その他の著作からの拾遺、未収録作を加えた決定版! 特別栞として、俵万智と枡野浩一の往復書簡も収録。

【目次】
てのりくじら 1997
ドレミふぁんくしょんドロップ 1997
ますの。 1999
愛について 2006
夢について 2010
歌 2012
虹 2022
いつか 1989-2022
全著作一覧

特別栞:枡野浩一と俵万智の往復書簡


〈収録歌より〉

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう

真夜中の電話に出ると「もうぼくをさがさないで」とウォーリーの声

殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である

神様はいると思うよ 冗談が好きなモテないやつだろうけど

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君

わけもなく家出したくてたまらない 一人暮らしの部屋にいるのに

消しゴムでこすったせいで真っ黒になってしまったようなサヨナラ

君はそのとても苦しい言いわけで自分自身をだませるのかい?

ツイッター「フォローさせる」は選べない 愛を強要できないなんて

終わったとみんな言うけどおしまいがあるってことは素敵なことだ

私には才能がある気がします それは勇気のようなものです

さようなら さようなら また会いましょう また別れたら また会いましょう

ニュースにはならない日にも虹は出て消えて私がおぼえています

感想・レビュー・書評

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  • 短歌は自由だなあと最近思います。自由律というものはとてつもなくセンスが必要だと思いますが、それを気にしなければその時の自分の一行日記みたいなものなので、自分の為に書いて楽しみたいなと思わせてくれます。

  • タイトルのインパクトが強くて思わず手に取った。

    p158塩酸をうすめたものが希塩酸ならば希望はうすめた望み
    p159葬式は生きるわれらのためにやる 君を片付け生きていくため
    p184しなくてはならないことの一覧をつくっただけで終わる休日
    p246朝焼けがとてもきれいで生きていてよかったような気がする色だ

  • なかなかにめんどくさそうな人だけど、相当に魅力的。
    何度も読み返したい。

  • 詩が好きだ。

    っていうと、格好つけてると言われたことがある。

    理解できないような文章を、
    自分なりの解釈ができる詩が好きだ。

    きっとこの詩はこんなふうだとか
    そんな風に考えれることが好きだ。

    枡野さんの詩は、日常だ。
    日常の中でふと思ったことをそのまま文字にしたような文で。

    それは安直でも稚拙でもなくて、素直な気持ち。
    綺麗な言葉にしてるわけでもない。

    ふと思ったことを書いているから、
    なんとなく分かるなって思うものが多くて面白い。

    「死にたい」とか「好き」とか
    そんなことをなんか寄り添って言ってくれてる気がする。


    何が好きだっていいじゃんか。
    私は私の好きを詩の中で見出してるだけ。

  • はじめて(本で)出会った歌人は穂村弘さん(『世界音痴』というタイトルのエッセイ)だけど、はじめて買った短歌集は枡野浩一さんの歌集だった。
    どうして知ったのかは覚えてないが、16年ほど前にハマっていたヤフオクで買った。
    届いた商品には手紙がついており、丁寧な人だな〜と思いながら、本を開いて驚愕した。
    なんと、乾いたハナ◯ソがびっしりとあちこちのページについているのだ。
    わたしは混乱した。なぜ?なぜ、こんな状態に?
    やりとりのときも、手紙の文面もフレンドリーで何の問題も感じなかったので、そのことに逆に恐怖を感じ、泣き寝入りしてしまった。
    ハナ◯ソは意を決して全部取った。
    本の内容は素晴らしく、こんなわたしでも短歌が作れそうな気がして、一首作ったが、それで終わった。
    それでも、枡野さんの歌には心が震えた。
    この短歌集の前半で、その短歌を読んでいた時間と空気を思い出して懐かしかった。
    しばらく心の友として、手帳に書きつけて持ち歩いていた歌もあった。
    その歌を思い出すとほんの少しだけ強くなれそうな気持ちになった。
    全然強くなれなかったけど、気がするだけで生きのびられた。
    他人の作った歌だけど、自分の歌みたいに感じた。
    この歌集の栞の俵万智さんの枡野さんへの返信に書かれている通り、「(枡野浩一さんの短歌の)もうすでに読者のものという顔つき」に、多くの人が助けられたと思う。
    「みんなが使う言葉」で、短歌を知らない、興味ないひとたちにも、伝わるように、届くように、短歌の世界の裾野を拡げてくれたのは、うれしい。
    4月から、NHK短歌の選者を勤められるということで、今からドキドキです。
    どんな歌を選ばれるのだろう。







    • たださん
      5552さん、こんばんは。

      いや、これは凄いですね。
      というか、酷すぎる!
      そのあまりに衝撃的なエピソードに驚きましたが、それでも、今の5...
      5552さん、こんばんは。

      いや、これは凄いですね。
      というか、酷すぎる!
      そのあまりに衝撃的なエピソードに驚きましたが、それでも、今の5552さんを形作ったのだと信じたいですし、これを書かれた5552さんのこと、尊敬いたします。
      『事実は小説よりも奇なり』とは、よく言ったもんですよね。

      それでも、枡野浩一さんのこと、よく知らなかったので、歌集に興味を持つことが出来ました。
      俵万智さんの言葉も素敵ですね。
      ありがとうございます!
      2024/02/13
    • 5552さん
      たださん、こんばんは。

      今、思えばひどかったなー、抗議すればよかったのかなーと思うのですが、当時は相手がどういう思いでこんな状態の本を売ろ...
      たださん、こんばんは。

      今、思えばひどかったなー、抗議すればよかったのかなーと思うのですが、当時は相手がどういう思いでこんな状態の本を売ろうと思ったのか、それが全く分からず(今もですが)恐怖でした。
      でも、大抵の人はその本、気持ち悪くて捨てると思うのですが、ハナ◯ソ取ってまで読んだのが我ながら自分らしいと思いました笑

      枡野浩一さん、いいですよ。
      俵万智さんもですけれど、わかりやすい=浅い、ではないことが良く分かります。
      俵万智さんの言葉もいいですよね。
      生み出したのは作者だけれど、作品そのものは、読者のものでもある、といってもいい、と、作者の方に許されたような気がしています。
      2024/02/14
    • たださん
      5552さん、お返事ありがとうございます。

      いや、おそらく私も抗議出来ないと思います。
      何というか、怖い上に、揉めたら面倒くさそうで嫌だな...
      5552さん、お返事ありがとうございます。

      いや、おそらく私も抗議出来ないと思います。
      何というか、怖い上に、揉めたら面倒くさそうで嫌だなという気持ちが芽生えそうで・・・。
      それでも、5552さんにとって、思い入れの強い作品と出会えて良かったと、思います。

      わかりやすい=浅い、ではないことは、簡単に出来そうで、最も難しそうな気がしまして、本書のタイトルも何気ないようでいて、心惹かれるといいますか、そんな魅力も感じました。
      市の図書館にあれば、是非読んでみたいと思います。
      改めまして、ご紹介ありがとうございます(^-^)
      2024/02/15
  • 最高にスッキリする。
    いや、モヤっとする短歌もある。

    自分に当てはまるもの、知人にこういうひといるよねっていうもの。この本を、誰かにプレゼントする場合は「これ、あなたみたい!」と付箋をつけてから渡したい。わたしにとってはそんな特別な本になった。

    はじめから順番に読むのもよし。
    開いたページから読むのもよし。
    本を(活字を)読むのが苦手なひとは、短歌集から入ってみるのもいいのかもしれないなぁ、とも。

  • 911-M
    古典・詩歌コーナー

  • 図書館にて。
    年明けに大きい本屋に行ったとき、平積みされていて手に取った。
    失礼ながら知らない方だったが、表題の短歌がすごく良くてどうしても読みたいと思い、図書館に注文してみた。
    すごく良かった。好きな歌も嫌いだなと思う歌もあったが、そのどれもが良かった。
    ウィキでこの方の経歴などを見てみたが、そういえばかなり昔に南Q太さんの本で出てきた元夫の人がこの人だったらしい。
    この本にも離婚のごたごたが書かれている場面が出てくるが、あれがこれかとつながった。

    この本を読んでいると、私にも書けるかもしれないと思う気持ちが分かる。
    思うことを簡潔に表現するということはとても難しく、それをわかりやすい言葉でわかりやすく読むというのは本当に難しいと思うので、それを簡単に見せるというのは選ばれた人にしかできないことだと思う。
    ほめているけれど、決して上から言っているつもりはないです。(この本の中にそういう歌があった)
    手元に欲しい本だと思う。

  • おすすめにあったから読んだ。詩集の類を読むの初めてかも。
    特に前半の、90年代特有の鬱屈とした寂しい感じ、好き。

    以下、グッときた短歌
    あの夏の 数かぎりない 君になら 殺されたって いいと思った
    色恋の 成就しなさに くらべれば 仕事は終わる やりさえすれば
    誕生日おめでとう きょうも好きでした あしたもきっと好きだと思う

  • 心に染みるものがあった。
    良い歌を自分用に保存しようかと思う

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著者プロフィール

一九六八年東京都生まれ。歌人。雑誌ライター、広告会社のコピーライターなどを経て一九九七年、短歌絵本を二冊同時刊行し歌人デビュー。短歌代表作は高校国語教科書に掲載された。短歌小説『ショートソング』、アンソロジー『ドラえもん短歌』、入門書『かんたん短歌の作り方』、『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』など著書多数。目黒雅也や内田かずひろの絵と組み、絵本・児童小説も手がけている。

「2023年 『おやすみ短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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