生命と場所: 意味を創出する関係科学 (BOOKS IN・FORM)
- エヌティティ出版 (1992年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784871881623
作品紹介・あらすじ
生命の本質は分析的な方法で迫るだけではとらえきれない。「命あるもの」とは何か。生命世界には、あきらかに物質世界とはちがった性質がある。生命に普遍的な性質は、無限定な環境から送られてくる信号の意味を取り出し、蓄え、解釈し、自己創出することにある。また、生命は環境の変化にあわせて、意味を不断に創造し、破壊しつづける。生命の情報とは、これまでの科学があつかってきた信号としての情報ではなく、変化する環境のなかに生きていくための意味情報である。意味情報はどのようにつくられるのか。そこに、情報創出の問題もひそんでいる。生命を探究するための構成的方法とともに、新しい関係の科学を提唱する。
感想・レビュー・書評
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システム論的な発想にもとづく独自の「生命関係学」を提唱している著者の論文などをまとめた本です。
著者は、生命における情報の統合的創発の謎を解明するために、「関係子」(ホロン)と「場所」という概念を提出しています。関係子は、環境から生命システムに入ってくるさまざまな情報群を秩序化するために相互作用をおこない、コヒーレントな振る舞いを示すと考えられています。また著者は、このような関係子の相互作用において、情報のフィード・バックおよびフィード・フォワードがおこなわれていることに着目し、そうした関係子相互のダイナミクスを「ホロニック・ループ」と呼んでいます。
さらに著者は、自律的な秩序の創発がおこなわれる「場所」の文脈が重要であることについても触れており、華厳思想や西田幾多郎の哲学などに示された東洋の叡智に、生命科学の新しい展開を切り開くようなポテンシャルがあるのではないかという見通しを語っています。
著者のスケールの大きな構想がとくに印象的です。松岡正剛の編集工学研究所が本書の編集に加わっているということもあって、当時の思想状況をうかがい知ることができるようにも感じられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自律的に作動する生命としてのコンピュータの構想が、80年代に行われていた。いわゆる、ニューラルネットワークの系譜とオーバーラップするが、データを外からあたえて、他律的に(アルゴリズム的に)コントロールすることとは異なる言及がなされている。現代の人工知能に対する画一的なイメージを打破させる。
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ひととおりよんで,場所というキーワードが残った.