日米不平等の源流: 検証地位協定

  • 高文研
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874983348

作品紹介・あらすじ

スクープした外務省機密文書をもとに、日本における米軍の行動、基地使用、米兵犯罪の取り扱い…等の実態を検証、米軍側に身を寄せて地位協定の拡大解釈で対応する外務省の、「対米従属」の源流を突き止めた問題作!日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞大賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄の基地問題は大変むずかしい。本書は地元の新聞社による地位協定の不正義を問う。その主張はきわめてロジカルだ。
    長野県にいるうちの祖母は時々思い出すようにいってた。「終戦の時に沖縄の人はこっち(本土)のためにとてもつらい思いをしたんだよ」と。
    沖縄の方に思いを馳せるとしみじみとやるせない気持ちになる。

  • 本書は孫崎享さんの『戦後史の正体』を出した創元社の「戦後再発見双書」の1冊である。タイトルは硬そうだが、中味は大部分Q&A方式をとっていて、とても読みやすい。日本におけるアメリカ軍の行動、日本政府の弁解の正体を知るには、本書を読むのが一番だ。「日米地位協定」が結ばれるのは1960年のことだが、その前身である「日米行政協定」は、1952年に講和条約、安保条約とセットになって生まれたもので、講和条約、安保条約に隠れているが、(実際こっそり結ばれた)実質的にはもっとも大事な協定である。オスプレの配備に対する国民の抗議に政府はいろいろ弁解しているが、この協定があるかぎり、政府は実はなにもできない。逆に、アメリカは日本のどこへでも自由に軍を動かせるのである。軍を動かせるだけではなく、多少の改善はあったものの、アメリカ軍は日本の中で治外法権に近いふるまいができるのである。安部総理が、最近、日本復興の日を祝うと言い出したが、それは吉田首相の顕彰をしたいだけで、日本が真に独立国家と言うのは、沖縄をはじめ、日本からアメリカの基地がなくなるときである。必要ならば来てもらえばいい。アメリカ軍に経常的に基地を提供する必要はないのである。そもそも、ASEAN諸国で、外国の軍隊を置いているところはない。アジアでは日本と韓国だけであろう。だから、韓国にも同じような悩みがある。しかし、一番だらしないのは日本だ。外務省に「日米地位協定」の裏マニュアルあることをスクープした記事も面白い。

  •  外務省機密文書「日米地位協定の考え方 増補版」の存在を暴くだけでなく、日米地位協定の実態のすべてがわかる本。冒頭は2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件から始まっており、なぜ米軍は私立大学である現場を封鎖(占領)できたのか、「日米地位協定」が運用されるとはどういうことか、ということもよくわかるだろう。

    目次
    はじめに
    外務省機密文書「日米地位協定の考え方」に見る日米関係の考え方
    「増補版」の存在を突き止める
    Ⅰ 米軍ヘリ墜落事故──「主権なき国家」の実態
    米軍による日本の「主権侵害」
    事故対応に「差別」
    世界一危険な基地「普天間」
    安寧を蝕む「爆音禍」
    Ⅱ 日米地位協定とは何か
    米軍占領の残滓
    「運用改善」の限界と危険性
    米軍優位の解釈
    改定要求の「うねり」と日本政府
    地位協定の国際比較
    Ⅲ 米軍優位の「増補版」
    1 検証 日米地位協定の矛盾
    「弱腰外交」/国内法曲げてまで
    治外法権/「曲解」で国内法超越
    訓練空域/低空飛行を許す土台に
    労働条件改善/対米交渉に進展なく
    裁判権放棄/住民〝狙撃〟に罰金刑
    司法権侵害/米側追認をほおかむり
    公務米軍人への裁判権/「認める解釈」明るみに
    公共の安全配慮義務/戦車道建設問題触れず
    米軍支援/国内法を変え戦車通す
    環境汚染/認識ゼロの外務省
    武器輸出/武器輸出三原則に地位協定が風穴
    対米譲歩/強制送還の事実否定
    過剰サービス/所有権移転の〝裏技〟も
    改定拒否/使われない条文
    平時の協定/有事想定の「終了」条文
    2 解説「日米地位協定の考え方・増補版」のポイント
    一般的問題、一条──解釈で「歯止め」失う
    二条、三条──基地は「免法特区」
    五条から八条──違法でも「合法化」
    九条から一二条──武器輸出も黙認
    一三から一六条──税免除が多方面で
    一七条──司法権侵害を認識
    一八条──見解の相違を封印
    一九条から二四条──協定違反の費用負担
    二五条から二八条──「密室」で運用決まる
    Ⅳ 検証 日米不平等の源流
    1 機密
    秘密主義/米軍基地へ国内法適用せず、沖縄復帰で解釈拡大
    治外法権/論理破たんの「法不適用」、住民被害は解決不能に
    密約外交/文書は「裏合意」の宝庫、協定超える運用実現
    県庁/外務省職員のバイブル、公表要求も反応示さず
    おもねる/基地被害 逃げ腰の政府、自治体の腐心と溝
    虎の巻/対米交渉は内閣次第
    本土の目/米追従の追及材料に
    外務省改革/「米国隷属」に危機感
    マル秘指定/何でも秘密の外務省
    「環境合意」非公表/汚染を防ぐ手だて奪う
    国会論戦に臨む/改定目指す沖縄県出身議員
    2 実態
    環境行政の壁
    跡利用の影
    返還地の憂うつ
    地中のドラム缶
    横須賀基地12号バース
    免罪符
    米国の思惑
    低空飛行
    身柄引き渡し
    都市型戦闘訓練施設
    五分の一の自動車税
    日米合同委員会
    Yナンバー車庫証明免除
    仮ナンバー大量紛失
    爆音賠償金未払い
    遺跡破損
    基地従業員
    基地従業員ハンドブック
    「思いやり予算」
    忘れられた島
    Ⅴ 識者が読み、語る──機密文書と地位協定
    1 識者が分析する機密文書
    我部政明/解釈公開が国民益、米軍基地維持の論理展開 「非開示」が問題解決遅らす、法秩序からはみだす米軍の地位
    本間浩/在沖基地の使いやすさに腐心、地位協定の運用限界を露呈
    明田川融/草の根の改定要求、正当な権利の主張
    2 焦点インタビュー=地位協定を問う
    栗山尚一/運用改善が一番適当、他国と比べ不平等でない
    比嘉良彦/米国に物言えぬ日本、「五十一番目の州」からの脱却必要
    松沢成文/環境不安解消できず、安保の枠組みでの改定必要
    久間章生/検証時期に来ている、交渉と米議会の賛同が必要
    比嘉幹郎/占領時の不平等残る、「対米依存」政府に起因
    前原誠司/政府は改定の意志を、党案バージョンアップを検討
    稲嶺恵一/カギ握る国会議員、改定を阻む国民の無関心
    Ⅵ 緊急フォーラム「日米地位協定を考える」
    沖縄フォーラム/「検証 地位協定・不平等の源流」
    東京フォーラム/「日米地位協定・改定の是非を問う」
    日米地位協定関連略年表

    あとがき

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