周期律: 元素追想 (プラネタリー・クラシクス)

  • 工作舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875022046

作品紹介・あらすじ

アルゴン、水素、亜鉛、鉄、カリウム…。宇宙の、物質の源に思いを託し、アウシュヴィッツ体験を持つひとりの化学者が自らの人生の断片を綴った自伝的短編集。各篇のタイトルに元素名がつけられ、全21篇がまさに文学の周期表を形づくる。

感想・レビュー・書評

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  • 元素の名の付けられた21の短編から成っているが、『帰れない山』のパオロ・コニェッティが好きだという『鉄』だけ読んだ。
    素晴らしい。

    サンドロ。
    忘れられない短編に出会った。

  • ふむ

  • このカバーは工作舎、と目について、タイトルが気になって手が伸びた。
    プラネタリー・クラシックスの1冊。新装版が出ていることは後になって知った。どんな装丁だろう。旧版は背や袖、目次のデザイン、図版が好き。

    著者プリーモ・レーヴィの自伝的短編集。著者の名前さえ初めて知ったのにいきなり手を出すところじゃないのでは?と悩んだけど、袖と目次、そして「アルゴン」を少し読んで購入を決意。結果としてまったく問題なかった。
    タイトルの元素に著者の歴史・回想を絡めて紡ぐ、その物語りの豊かさに驚かされた。声調は淡々として低温な、それでいて繊細な色々のイメージが織り込まれていて、知の喜びを追い求める生命の躍動を思わせる。何気ないと思われた叙述がなぜか耳に残って、後からその残響が共振を呼んで導き出されたかのような叙述に出逢うこともあり、一度それに気づけば、あとは知らず息を潜めて読んでいた。美しい。
    化学はファシズムへの対抗物だとする著者の言葉が尊く眩しい。一方で物質に背を向け精神を称揚しながら、物質の精髄を掠め取って利用するファシズムの醜さに鳩尾が冷える。これと同種のものを日々ニュースで見ているという気がする。
    ヘブライ語やイディッシュ語に由来する隠語も興味深い。

  • NDC(8版) 973

  •  プリーモ・レーヴィの著書、なかでも『周期律』や『休戦』で印象深いのは、無駄を排した飾り気のない文章による人物描写だ。レーヴィ自身は「今では、ある人物を言葉で覆い尽くし、本の中で生き返らせるのは、見こみのない企てであることは分かっている」(*1)と言うのだが、特徴を巧みに捉えて生き生きと描きだすことに成功している。なお、ここで言う特徴とは、長所にも短所にもなりうるような表裏一体のものだ。それはさまざまな幸不幸の結果であり一因でもある。

     人生は、状況次第でいとも簡単に長短が逆転し明暗が分かれてしまう。「ある薄い膜や、一陣の風や、さいころの一ふりが、二人を二本の道に分け、それは一本にはならなかった」(*2)ということと、「言わなかった言葉に、利用しなかった機会に、思いを馳せながら」(*3)、偶然に左右されて生きていくしかない。それは良くもあり悪くもある。レーヴィの作品には、そんな喜びと悲しみが詰まっている。

    *1 『周期律』p.79(訳:竹山博英)
    *2 『周期律』p.195(訳:竹山博英)
    *3 『休戦』p.317(訳:竹山博英)

  • アルゴンでありたい。
    絶えず出来事を持った人でいたい。

  • また読む

  • 科学は苦手な分野だから、元素を表題にして語られていくエピソードはカッコイイと思いつつも、個人的には難しい部分もあったかもなぁ・・・。でも小説とエッセイが混ざり合ってる感じはすごく好きだった!

  • プリモレーヴィ「周期律」読んだ。http://tinyurl.com/3bwnj5w アウシュビッツから生還したユダヤ人化学者が、実験が日常だった生活の回想21作に元素のタイトルをつける。どんな不遇な環境下でも、レーヴィは実験と因果関係の究明への強い欲求を抑えられない。(つづく

    それは死にほとんど呑み込まれたアウシュビッツでも。器具や物質名など硬く無機質な単語が並んでいるのに全体は情緒的で、特に化学反応の描写は繊細で美しい。福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」もやけに叙情が強かったっけ。自然界の反応は因果が確定していても物語性が強いのかもな(おわり

  • 多分イタロ・カルヴィーノ繋がりで登録して、著者が自殺したと知って読む気になった。アウシュヴィッツから生還したイタリア人化学者。

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著者プロフィール

1919年、イタリア・トリーノ生まれ。トリーノ大学で化学を専攻。43年イタリアがドイツ軍に占領された際、レジスタンス活動に参加。同年12月に捕えられ、アウシュヴィッツ強制収容所に抑留。生還後、化学工場に勤めながら作家活動を行い、イタリア文学を代表する作家となる。その円熟の極みに達した87年、投身自殺を遂げた。

「2017年 『周期律 新装版 元素追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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