コッド岬

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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875022275

作品紹介・あらすじ

1849年、友人の詩人とともにマサチューセッツ州コッド岬を訪れた詩人博物学者・ソロー。「森の哲人」とも呼ばれた彼が、海に見られる自然の厳しさと、そこで暮らす人びとのたくましさを活写する。
ユーモラスで軽快な文体の旅行記は、『ウォールデン 森の生活』とならぶ代表作。長らく品切だった本書が、ソロー生誕200年を記念して待望の復刊! 人為より自然のままを愛するナチュラリストの価値観が溢れ出る。

感想・レビュー・書評

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  • ガンジーやキングの「非暴力」の考えの背景には、ソローの「市民の反抗」があるということで、とりあえずそのエッセーが入っている本を買って、いくつか読んでみた。なるほど感はあるが、今ひとつ、そのすごさがわからない感じであった。

    では、ということで、主著「森の生活」に挑むも、これまたどこが面白いのかよくわからない。

    なにかとっかかりになる本はないかと思い、軽い旅行記ぽくて近づきやすそうな「コッド岬」を読んでみることに。

    冒頭、海の事故で多数の死者が浜辺に打ち上げられた様子の描写から始まり、驚くものの、あとは淡々としていて、ときどきユーモアが感じられることもあるが、やはりどこか近づき難い文章が続く。

    そういうわけで、しばらく読むのをやめたのだが、意を結して、通読。あいかわらず、読みにくい感じはあるのだが、すこしだけソローの面白さ、味わいを感じることができたかもしれない。

    全体としては、コッド岬の自然の描写やそこに住んでいる人々の温かいユーモアを感じる対話や観察がいい感じ。また、海というものが、生命の源であると同時に、簡単に人の命を奪ってしまうダークサイドをもつことを繰り返し暗示する書き口も奥深い。しばしば、「イリアス」からの引用がなされて、そこにはなんか神話的な響きがある。

    で、通常だったら、最初のほうに書きそうな、コッド岬の歴史、つまりだれが最初に「発見」したのかということが最後の章で書いてある。

    「コッド岬」は、自然として、大西洋に奇妙な形で突き出した海を観察するのによいところというだけでなく、アメリカのピルグラム・ファーザーズが上陸して、最初に住み出した土地なのだ。

    そういう歴史があるわけなのだが、ソローは、ピルグラム・ファーザーを神話にすることなく、その前にもバイキングなどたくさんの冒険家がコッド岬を発見していたこと。北アメリカ大陸には、イギリスだけでなく、フランスも「開拓」に力をいれていたことに注意をむける。

    この辺の立ち位置がなんだか捻くれていておもしろい。

    今度は、「森の生活」にチャレンジ。読めるかな?

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著者プロフィール

(Henry David Thoreau)1817年、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン近郊のコンコードに生まれる。詩人、作家、思想家、ナチュラリストなど多彩な顔をもつ。ハーバード大学の学生時代から、古代ギリシャ、ローマ、中世ヨーロッパの文学を深く愛し、また東洋思想にも興味をいだく。大学卒業後、『自然』の著者で超絶主義者のエマソンらと親交を結ぶ。自らの実践と観察、思索から生みだされた『森の生活』、『メインの森』、『一市民の反抗』、『生き方の原則』、『ウォーキング』など数多くの著作のほか、アメリカ先住民や考古学、民俗学、博物学、生態学への関心を深め、最晩年まで続く膨大な日記に書き記す。1862年没。

「2009年 『ソロー語録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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