植物と帝国: 抹殺された中絶薬とジェンダー

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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875024019

作品紹介・あらすじ

18世紀の植民地の暗く苛烈な文化交流史において、著者はオウコチョウのようなつつましい植物に焦点を当てる。現地の人びとから植物の知識を熱心に吸収したヨーロッパ人は、奴隷の女たちが主人を欺くために使っていた中絶薬についての知識を、あえて無視した。ヨーロッパはまさに重商主義のもと、人口増加を奨励している時代だった。植物探査のはらむ深刻なモラル問題に光を当てる。アメリカ歴史学会大西洋世界史賞、フランス植民地歴史学会Heggoy賞、アメリカ医学誌協会薬学史Ester賞-受賞。

感想・レビュー・書評

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  • プランテーションシステムが新世界を支配し始めた1670年代から様々な植物がヨーロッパの植物学者らによってカリブ(本書ではヴァージニア州ジェームズタウンからブラジルまでの沿岸地域と島々を包括)・インド・アフリカからヨーロッパ諸国に持ち込まれ、薬として用いられてきたが、カリブの女性たちが中絶薬として使っていたオウコチョウ(ポインキアーナ・プルケリッマ)は、ヨーロッパに移送されたもののその用途は伝えられなかった。19世紀の人種主義が隆盛するまで多くのヨーロッパ人は新世界の人々の知識を評価していたにもかかわらず、なぜオウコチョウの用途は伝えられなかったのか。伝えられることなく終わった知識(アグノトロジー)として、その背景などを詳しく調査している。●新世界との遭遇が古代の文献の土台を揺るがしそのためヨーロッパ人は新たに経験知を重視するようになった面もある。●オウコチョウは、18世紀を通じて女奴隷が、出産を奨励する植民者への抵抗としての意味もあった。●19世紀にはヨーロッパ諸国が中絶を犯罪とする成分法を定め、中絶への抑圧は実を結んだ。「個々人の命が国家にとって重要になると国民の命を守ることが国家の最も重要な義務となった」フランツ・グュトナー●リンネの植物の命名法は植物を原産地の文化的拠点から引き離し、まず第一にヨーロッパ人が理解できる枠組みの中に位置づける帝国の装置としてはたらいた。リンネは‘宗教的な義務として’‘植物に男たちの名前を刻み込んで不滅の名声を確保’しようとした。●分かる範囲内で、被植民地出身者で植物の名に冠せられたのは、植民者への協力者だった人一人だけ。

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著者プロフィール

スタンフォード大学科学史教授。科学史および科学にジェンダーの視点からメスを入れ、「普遍的かつ公正な科学」幻想を明らかにし、来たるべき方向を示唆する。性差に配慮した技術革新、「ジェンダード・イノベーション」を提唱し、欧州委員会の協力のもと、プロジェクトを展開。

「2022年 『科学史から消された女性たち 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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