- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784876418060
作品紹介・あらすじ
1年の3分の1はアジアで過ごす、バンコクで缶詰をして原稿を書く、変わるアジアのスピード感に翻弄される、だけどアジアでホッとする…こんな旅をずっと続けてきた、還暦を過ぎた著者の、アジアと日本の往復エッセイ。著者の人気ブログから選んだ66編。全編に後日談を書き下ろし。
感想・レビュー・書評
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長年旅をしているとスタイルも固まってきて、それ自体に安らぎのようなものが生じたりもする。そして時代が進むにつれ、建物や風景も変わり、旅の方法も変わる。そのギャップとの折り合いもまた必然なのだろう。
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旅行作家は憧れの仕事です。
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旅行作家、下川裕治さんの『僕はこんな旅しかできない』を読んだ。
昨年出版された、下川さんのブログを追記と併せて再構成した本だ。
23歳の時、ぼくはそれまで勤めていた写真店を辞め、一月近く旅に出た。
向かったのは、ネパール。当時は王政だったので正しくはネパール王国だ。
どの国を旅するか悩んでいた際にそれを後押ししてくれたのが、下川さんによる『好きになっちゃったカトマンズ』というガイドブックだった。また鉄道台湾一周を決めた時も『鈍行列車のアジア旅』の影響があった。
若いころから、常にぼくは下川さんの旅のスタイルに共感していたのである。
共感といえば、文章から滲み出てくる人間性にも非常に頷くことが多い。
基本的に貧乏旅を望んでしている点も、お決まりの観光スポットに感心を示さない点も、忘年会が苦手で知らない人と話すのにストレスを感じる点、各地で講演会をすることが多いのに声が小さいのがコンプレックスだったり――。数え上げると切りがない。
以前、下川さんが来るという飲み会に誘われたが断ったことがある。きっと話は弾まないだろうし、そういう場で面識のない人に囲まれるのは下川さん以上に苦手だからだ。
大袈裟な旅行記にも面白いものは沢山あるが、下川さんのそれはひたすら地味だ。
作家の高野秀行さんは、下川さんを評して一番すごいのは何の変哲もないことを書いていることだという。それに対して下川さんは「僕にしてみればいろいろ変哲がある」のだと答えている。
どちらも言い得ている、と思う。
下川さんの旅に驚きの展開はない。だが、実際に旅をしている人だけが感じられる些細な感想にはリアルな旅を感じさせてくれる。ぼくは、夜ベッドの中で下川さんの本を読む。何とも心地よい旅愁、下川節に浸りながら眠るのが好きなのだ。
二十歳そこそこの若者がもう直ぐ四十歳になるのだから、下川さんだって還暦を過ぎている。
にもかかわらず今も世界中を飛び回り、アジアの鈍行列車に乗ったり、ボロボロのバスで僻地を旅している。さすがに最近は持っていく薬の量も増えたらしいが、大好きな旅を続け、そのスタイルを今も貫いていることには感動すら覚える。きっと下川さんからすれば、いや、こういう旅しか出来ないからね、と答えるだろう。
長年、旅をしていると大好きだった街が変わり、古ぼけた定宿も綺麗なビルディングに変わっていく。そこに一抹の淋しさはあるが、それもまた旅を続ける人が得られる特権なのかもしれない。
ぼくは、それほど頻繁に旅行することはないが、いつでも旅を夢想している。
いつか、長い長い旅に出てぼくならではの旅のスタイルをみつけられたらと思っている。 -
旅行ライターである著者のブログをまとめたもの。
ブログで書いた宿や街や人々がブログ記事の後にどうなったのか、気になる部分についての「その後」が追加されている。 -
私の大好きな旅行作家、下川さんの最新刊です。この本は私もいつも読んでいる下川さんのブログをまとめたもので、そのブログから選ばれた文章のあとに、その後の顛末が書き加えられています。
アジアの旅について書かれているのですが、特にタイの最近の変わりようや物価の上がり具合には本当に大きく頷いてしまいます。
ラオスもよさそうで行ってみたくなりました。
アジア好き、旅行好きにはおすすめです。