- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877232627
作品紹介・あらすじ
パンデミック到来!
自粛するしか手立てはないのか!
ウイルスと人間との攻防を描いた17世紀の記録小説が現代新訳に。
“自粛する”しか手立てはないのか!
17世紀、ロンドンで10万人の死者を出したペスト。都市は閉鎖され、政府は自粛を要請、それでも感染はとまらない。病院は死体であふれだす。ウイルスという見えない敵に恐怖する人々。公文書や膨大な記録を基に再現されたあまりにも現代的な記録小説が、平易でわかりやすい現代語訳で登場!
18世紀に書かれた現代の予言書!
感想・レビュー・書評
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新型コロナが流行している今、話題になっているようで読んでみました。
今と符合するようなことが書かれていてゾッとしました。
人との距離が心身共に広がったり差別が始まったり・・・。
闇雲に動き回ったり油断するのはやめよう・・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
驚愕の1冊!350年前に書かれた本なのに現在の新型コロナにおける人々のの反応と同じところがありすぎました
●共通点とわたしが感じた例
・家にいるのが有効な予防法
・「自分は健康でかからない」と外出自粛の中、外出し、ペストにかかり一家が全滅する
・監視人の目を盗んで逃亡
・少し感染が落ち着いたら、「感染症は去った」として一斉に外出し、感染者数がぶり返す
・感染症のない場所に避難する(が、健康だと思って避難した人が避難先で発症し、感染症をまき散らした)
●1664年末イギリスで大流行したペストの記録
この時代には「細菌」という概念がない中で(もちろん原因もわからない)人々が感染症に翻弄され、その様子が現代の「細菌」の概念があり、原因も特定されている中での人々の行動と共通点があるということが大変興味深い一冊です。ちなみにこのとき日本は江戸時代で1663年に武家諸法度が制定されています。
●読んだきっかけ
2020年5月頃話題になっていた「ペスト」かと思って図書館で借りました。(無知すぎる・・苦笑)しかし、話題になっていた「ペスト」は「カミュ」が1947年に出版した「ペスト」なのでご注意
●この本は分厚いです(400ページ超え)
同じような話題や体験談をまとめたら読みやすくなるのになあと思いつつ読みました。そのくらい話が飛んだり、似た体験談が何度も書かれています。逆に言えば飛ばし読みが可能です。
●訳者解説を読むのを忘れずに
時代背景やデフォーについて記述があり理解を深めるのにオススメです。 -
今ほど医療も発達しておらず、「菌」という概念すらない時代に、人々がどのようにペストに冒され、あるいは生き延びたかを詳細に記録したデフォー。当時のロンドンは、死神が一軒一軒戸を叩いて回っている有り様だったという。感染による死者数の推計、大打撃を受けた職業、教訓、収束の理由など今後の為になる記録だ。疫病の流行を、“特定の都市、国、民族に向けて天から下される鉄槌であり、神の復讐の使者であり、その都市、国、民族に服従と悔悟を促す呼びかけに違いない”と思っていた17世紀という時代にも興味がわいた。
【概要】
ペストの死者が増え始め、疎開するか迷う。ロンドンには自分の商売がある。家族とともに郊外へ逃げる兄に忠告される。しかし、馬が借りられなかったり奉公人に逃げられたりし、これは神の思し召しだと思ってロンドンに留まることに決める。再び兄に忠告される。
たまたま開いた聖書のページに、「神はあなたを守る。疫病があなたに近づくことはない」という一節があり、神の意思を尊重することにする。また自身が体調を崩したことにより、出かけることも出来なくなる。
日を追うごとに感染症が増える。予言や占いが流行る。周辺では12m×5m×3mの穴を掘り、死体を埋葬している。
仕事を失った者は、①製造業特に装飾品、実用的でない衣服、家具②税関職員③建築関係④船乗り⑤召使いたち
一方、感染した家屋の監視人と看護師の需要が生まれる。
ロンドンから逃げ出した者たちから寄付金が集まり、そのおかげで貧民に施しをする。
神への信仰心が厚い。感染が少ない地域は「神様が見逃してくださっている地域」と考えるが結局増える。
感染地域から逃げ出して森などで餓死する人も大勢いる。
死神が一軒一軒家のドアを叩いて回っている有り様。2ヶ月で3〜4万人死亡した。
輸出産業壊滅的(他国が着陸拒否)、国内も絶対に必要なもの以外、売れる見込みなし。
p282
人間が何をしようと、ペストは怒濤の勢いで感染を広げていった。
p316
疫病の流行じたいは、特定の都市、国、民族に向けて天から下される鉄槌であり、神の復讐の使者であり、その都市、国、民族に服従と悔悟を促す呼びかけに違いない。
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コロナ禍で話題になっていたので。
まさにコロナの流行と同じ。
作者がロビンソンクルーソーの人だったとは。 -
著者のジャーナリストとしての知識とストーリテーリングが存分に生かされた作品である。本作が歴史かフィクションかは今なお議論されているそうだが,私はひとまず「歴史小説」として評価する。1665年のロンドン最後のペストの大流行について,確かにありうる状況を市民に訴えかける。ただし,現代の読者にはくどすぎて疲れるかもしれない。
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1665年のロンドンをペストが襲った。当時、細菌の存在さえわかっていなかった。どのようにうつるのか、どうしたら助かるのか、薬も知識もない時代のパンデミックをデフォーが資料を元に仕上げたドキュメンタリー小説。
科学的な知識が今ほどない中、近所の人が次々と死んでいく恐怖。自分が感染したかも、というだけで、気が触れてしまうほど恐れられた。
元気に見えるが実は感染者、が多勢の人にうつしてしまう。なんて、現代のコロナ禍と似ているのか。
デフォーは多分父の兄の手記を元にこの小説を書いているらしいが、当時の様子がよくわかり、こんな事が起こるよ。と知らしめるために書かれた。
行政が果たした役割も大きいし、国中から寄せられた義援金もすごい額だったようで、その辺りは今の日本は見習ってほしい。死者を埋葬する穴がすぐにいっぱいになる、とか恐ろしいが、そういう作業は夜間に行われ、昼間は布などを被せて見えないようにしていた、などは行政は配慮したのだろう、と書いてある。
とても読みやすかった。
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1665年のロンドンのペスト流行を描いたドキュメンタリー小説。本書は2020年の新訳刊行だが、パンデミックに怯える中で読むのにはふさわしい、いやむしろ気が滅入るからふさわしくない程ぴったりの内容。
ペストは接触または飛沫で感染する病気だ。苦しむ人や亡くなる人が日常的に現れ、埋葬も間に合わず大きな穴に放り込まれる地獄絵図が出現する。病気自体だけでなく、まじないの横行、火事場泥棒、自棄を起こして犯罪に走る者など、大きな災禍に直面した時現れる人間のダメな部分がこれでもかと登場する。
また死者数・感染者数等の各種数値や、市や市民による対策についてもきっちり記録されている。たとえば市の適切な対応により物資の欠乏はあまり無かったという。一方、賛否が分かれている対策は家屋封鎖。感染者の出た一家は全員自宅軟禁というもの。かえって未感染の家族まで全滅させる結果につながることもあり、隔離される側もあの手この手で封鎖破りをして、なかなかうまく機能しなかった。
読むときのポイントは、当時の医学水準を頭に置いておくことだ。なんとなく人から人にうつるという理解はあるが、まだ細菌が発見されず、感染のメカニズムが分かっていない時代。得体の知れない不安も今よりずっと大きいだろうし、おそらく現代医学の知識があればもっと効率的な対策ができるだろう。
それでも危機に直面した人間の振る舞いや社会の構造は、意外なほど似通っている。富裕層より貧しい人の方が病気の被害を多く受けたが、貧しいゆえに監視人等、感染リスクの大きい仕事に従事しなければならない状況。今でいう「不要不急」な品物に関わる製造業や、行き来ができなくなった貿易関係の人、さらにその周辺の色々な産業が大量に職を失った(p158)。有志の義援金等で生活する人が増えたという。
本書はあまりに詳細で、著者ダニエル・デフォーの実体験と思いそうになるが、著者は当時まだ5歳。親族の手記等を元にした小説と考えられる旨、あとがきでも触れられている。それにしても創作と思い難いような生々しさがあるのは、実際に体験した世代の話を聞くことができたからかもしれない。