- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877282233
作品紹介・あらすじ
プラハへ。死者をたずねる旅に出る「新世界」ミステリー書き下ろし長編。
感想・レビュー・書評
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恋人の調香師が自殺。
残された主人公は、プラハヘ、遠い香りの思い出を手繰り寄せる旅へ出る。 -
自殺した恋人の過去を求めて彷徨う主人公。
隣にいるべき人がいてくれさえすれば、過去など要らない。
過去が必要なのは、あるはずだった未来の代わりに、こぼれ落ちてしまった空白を何かで満たさずにはいられない、切実な喪失感からだと思う。
知れば知るほど自分の知らなかった過去が掘り起こされる。
けれど、それは主人公が恋人のことを知らなかった、ということにはならない。
本当に繋がっている者同士においては、たとえそれが虚構(あるいはその人の一部)であったとしても、相手が自分に見せている部分が、その人が与えたかったものの全てなのだから。
ましてそれを貫き通したまま去っていったのであれば、それこそが相手の本質、最も大切な真実なのだと思う。
だからこそ死者の気持ちを代弁するのは不粋に過ぎる。としても、敢えて最後に香水を送った気持ちを想像で補完するならば。
語ることのなかった過去の全てを、言葉にすれば嘘になってしまう種類のものを、自分にとって唯一真実に値する、香りという形で主人公に贈りたかったのだろうか…。
それだけでもう、あぁこの人は心から愛されていたのだろうな、と、そんな風に思う。 -
丁寧な描写で死んだ恋人の過去を探っていく作品。
日本での話とプラハでの話が交互に来ていて、少しずつ自分の知らなかった恋人の姿が明らかになっていく構成。
自分が過去を偽られていたという虚しさや自分の知らない過去を知っている人が居るという嫉妬心を決して激情するわけではなく静謐に描き出していた。本当にこの人は日本語が綺麗。
最後まで読んでも、自分が教えもしなかった過去を何故香水に込めて贈ったのかは分からなかった。読み直したら何か分かるんだろうか…? -
2度目・・・
凍ってはいないんじゃない
モヤモヤは続く
面白かったけどね -
死んだ恋人が作った香水から始まる旅の話。
作者らしい、奇妙なエピソードが次々と待ち伏せしていて、想像力の豊かさに圧倒される。
文章も端正。
ただ、イメージの広がりは彼女の優れた特色だと思うのだけど、私は一点に集約していく物語が好きなこともあり、最後まで幾つかの点に物語が散らばったままに感じられ、読み終えて少し戸惑った。
けれど読後感は良い。 -
数学の規則性が持つ静謐さや、調香師など一般的ではなく謎めいた職業を描くところが小川洋子らしくてよい。
ただ謎にうっすらと包んだまま終わるには長編だと物足りない感じもある。 -
あなたをどんな香りとしよう。