イワンの馬鹿

  • アノニマ・スタジオ
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  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877588113

作品紹介・あらすじ

140年以上前に誕生した、ロシアの文豪トルストイの名作。強欲な兄や悪魔の誘惑に負けずに、ひょうひょうと自らの体と手を使って生活するイワンの物語。名作にハンス・フィッシャーの挿絵、翻訳家・小宮由氏の新訳で現代に贈る、子どもも大人も読んでほしい作品です。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもの頃に、おそらく抄訳されたものを読んで以来。
    『アンナ・カレーニナ』が凄まじい上手さだったので、再読したくなった。
    拝金・軍拡主義がどんどん広がる今だから、古い話とは思えない。
    イワンの妻となる王女のことが、少ない出番ながら一番胸に残っている。
    その道を選べるの、すごいよ…。
    読み終えてから挿絵が『こねこのぴっち』のフィッシャーだと気づいて、豪華さにのけぞった。
    悪魔の絵が特にいいなぁー!
    トルストイを読んで兵役を拒否、後に本作を含むトルストイ作品を訳した訳者さんの祖父の話も心を揺さぶるもので、併録がありがたい。

  • ロシアの文豪レフ・トルストイ(1828-1910)が、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などの大作は上流階級向けものだったとして、一般民衆に理解される分かりやすく表現した有益なものを書こうと、56歳の時に発表した民話『イワンの馬鹿』の新訳本です。 馬鹿の<イワン>と二人の兄(軍人の<セミヨン>と商人の<タラス>)、耳の聞こえない妹の<マラ-ニャ>を破滅さそう企む<老悪魔>と三匹の<小悪魔>の寓話は、〝非暴力主義の思想〟と〝神への信仰〟に生きた、苦悩するトルストイの矜持がうかがえる名作です。

  • 校長を退職後、再任用で勤務してらっしゃる先生に「『イワンの馬鹿』ありますか」と聞かれ、蔵書の中から読んでもいない21世紀版少年少女世界文学館シリーズと福音館古典童話シリーズをお渡ししたところ、「2回読んだけど…こんな文章なのかな」とのお言葉。
    私自身、子どもの頃に読んだ記憶があるものの、タイトル以外はほとんど覚えておらず、小宮由さんが訳されたと知ってから読みたいと思っていたこちらを公共図書館で借りて読みました。

    こんな話だったのか、という新鮮な驚き、そして何より本編以外の「解説にかえて」「訳者あとがき」「資料『イワンの馬鹿』と北御門二郎」が読めたことがこの本を読む意味のようにも思えました。

    低学年用に出版されているものについて、
    「善意に解釈すれば、なるべく幼い頃からトルストイを噛み砕いた形で…という気持ちかもしれないが、その噛み砕き方が問題である。トルストイがもともと心をこめて噛み砕いたものを、トルストイよりうまく噛み砕ける人がいれば、その人がやるがよい。生兵法は大けがのもとなのだ。幼い心にトルストイへの誤解を植えつけることほど恐ろしいけががあるだろうか。」
    という北御門さんの言葉が腑に落ちました。

    本編の内容については、この本はドイツ語版を原書としていることから、これから北御門さんの訳等比べて読んでから、もう一度味わいたいと思います。

  • 戦争とお金と馬鹿。
    馬鹿ってなんだろう。今の世の中でも、イワンはきっと馬鹿と呼ばれるような存在なのかもしれないけど、その生き方は尊い。解説も良くて、トルストイの目指した生き様が強く反映されてるんだろうなと感じた。宮沢賢治を読んだ時と同じ気持ち。グスコーブドリの伝記とかと通ずるものを感じる。
    訳者の縁まで面白い良い本だと思った。
    あとお金の価値について考えさせられた。イワンの国の住民は、金貨が物珍しくて何枚かは欲しがったんだけど、必要以上には欲しがらなかった。イワンの国でのお金にあまり価値がなかったのもあるけれど、必要な分だけでいいのだというメッセージに感じた。

  • ちょうど今、アンナ・カレーニナを読んでいるので、イワンの暮らしぶりこそがリョービンの求めているものだなぁと、感動しながら読んだ。
    リョービンもイワンも、トルストイの思想そのままなんだろう。。
    そして訳者の北御門二郎氐もまた。
    解説もとても興味深くよんだ。それにしても素敵な挿絵と表紙!

  • 軍隊、お金、馬鹿、頭を使う労働。限定された環境において通用する常識にいかに縛られて物事を見ているか気付かされた。
    お金の意味がなければ誰も欲しがらないし、キラキラ丸い金貨は子供のおもちゃになる。
    争いをしない人には軍隊だってただの楽団になってしまう。
    それらの使い方や意味を知らないことが馬鹿だと、知っている人からはそう見えるかもしれない。
    けど、知っていることが本当に賢いのか?
    あるいは知った上で、馬鹿に見える選択をすることはできないのか?
    現代では当たり前の頭を使う労働でさえ、馬鹿の前では何の意味もない。
    勿論、頭を使う労働は必要だけど、視野は狭くなっていないか。当たり前を疑う。馬鹿=他者の目線に立ってみる。そんなことを忘れずにいたい。

  • 「馬鹿」と表現されていますが、それは悪い意味ではないように思いました。イワンには、なんというか、犬のような純粋さを感じました。
    特に、大人になるとなくしてしまいがちな純粋さ。
    今を楽しみ、与えられているもので満足し、働いて正当な対価を得る。そんな純粋で真っ正直な生き方。
    そんな真っ正直な生き方をしていると、大多数の人からは「あいつ馬鹿だなー」「もっと器用に生きればいいのに」なんて言われかねない。
    でも、私もイワンのようにある意味で「馬鹿」な生き方をしていきたいと思いました。

  • 良かった。世界名作全集にあって、小さい頃に読んでたはず。こんなに深く素晴らしい物語だったとは。小宮由氏からの繋がりに感謝。

  • 「イワンの馬鹿」だけではく、「解説にかえて」「訳者あとがき」と三部作のような一冊

    ハンス・フィッシャーの版画もぴったり

    馬鹿のイワンと
    ふたりの兄、軍人のセミヨンと承認のタラス
    耳が聞こえない妹のマラーニャ
    それと、老悪魔と三びきの小悪魔の話

    馬鹿はロシア語だと何と書くのだろうか?
    セミヨン、タラスの名前もなんらかの意味があるにちがいない
    マラーニャは、病という語源なのかな、なんとなく

    改めて読むとまた、新しい発見がいっぱいだ
    意味も違って感じられる

  • 名作をわかりやすく書いてあることに感謝。

    お金と戦争

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著者プロフィール

19世紀のロシアを代表する小説家、思想家。ロシア・ヤースナヤ・ポリャーナに伯爵家の四男として生まれる。非暴力主義の思想のもと、文学のみならず、政治や社会にも大きな影響を与え、また、自ら教科書を執筆・編集し、教育にも力を注いだ。代表作に『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。『イワンの馬鹿』は、1876年(トルストイ56歳)の作品。

「2020年 『イワンの馬鹿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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