- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879842695
作品紹介・あらすじ
本書の冒頭には、次のようにあります。「本書は、章の順番どおりに読むこともできます。あるいはタロットカードを用いて、タロットが示す順に、それぞれのカードに対応する章を読んでいくこともできます。この方法によってあなたは、カード占い、あるいはカードによる運命の予言を行うことができます。」
章の順番どおりに読むと、
ナポレオン戦争を背景にした、三つのセルビア人家族の恋の物語、三たび死ぬと予言された男をめぐるゴシック小説……
のような物語が展開されています、とひとまず言えます。
と同時に、本書の二十二の章は、タロットカードの、大アルカナと呼ばれる二十二枚一組のカードに対応していて、それぞれの章でカードの「鍵」の《秘密》が明らかにされる、という趣向になっています。手元に置いたタロットをめくりながら、出たカードに対応した章を読んでいく……そのようにしながら、作家が用意したテクスト群を、読者ひとりひとりがむすびつけて、一つの物語を完成させる――そのような読みも可能なのが、本書の大きな特徴です。
感想・レビュー・書評
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まだ読んでないパヴィチがあったんだ、ってことで読んでみた。パヴィチらしい、東欧っぽいちょっとしたダークファンタジー。タロットはまるでわからんのやけど、それでもおもしろい。
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日本で実際タロット占いをしながら、この本を読んだ人がいるんだろうか。その読み方だと、新しい世界が開けるんだろうか。私は普通の読み方しかしなかったけれど、それでも十分面白かったけど。レオ・ペルッツやキアラン・カーソンとかが好きな人にはお勧めです。
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パヴィッチの作品が日本語で読めるそれだけで意味がある。
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少し苦いような知らない風味のハーブが混ぜ込まれた黒パンのような。知らなかった読みごたえ、消化しきれていない感覚。これは何度もめくって自分の中にリンクを組み上げていくのが楽しい本なのだと思う。一度通して読んだだけでは味わい切れていない感触が強くある。
それでもとりあえずの感想を書くと、強すぎる父さんと母さん、家族としての連帯が非常に薄い各人のふるまい、自由なのかもしれないけれど自由意志があるとも思えない男女の結びつきが、海外小説のなかでも知らない部類の感触。神話的・昔話的だというのもあったのかな? なにか「とって喰われそう」な荒々しさがあって、新しい読書体験だった。
訳者解説がよい。他の作品やパヴィチ自身についてもくわしく書かれている。 -
タロットを用いた小説。
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[ 内容 ]
ナポレオン戦争時代を舞台に、セルビア人3家族をめぐる奇想にみちた愛と運命の物語が、タロットカード(大アルカナ)の1枚1枚に対応した22の章につづられる。
章の順番どおりに読めばひとつの物語があらわれる。
タロットが示した順番に読めば、また別の運命、別の物語が…。
読者参加型小説。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
うーん……ところどころ目をひく点はあるものの、自分にはあわなかったようだ。タロットに関連づけた話なら、先に読んだ『宿命の交わる城』のほうが好みだったなあ。
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セルビアの大作家ということであるが。豊富な東欧のイマジネーションの洪水はさすがに見事だが、あまりタロットのなじみのないというか理解のない人間にはよくわからない。きっとそれぞれの項目(どこから読んでもいいらしいので)に孕まれた意味があるのだろうが。他の作品も、とまではいかない。面白くないわけじゃないが。
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私にとっては「風の裏側」に次いで二冊目のパヴィチ。昨年この作品のことを知り買ったきり積んでいたが、先日一気読み。
うーん、相変わらず感想の言いにくい作品だ。
本書の不思議な仕掛けは、「占いの手引書」という副題があらわしている。
この作品は各章がタロットの大アルカナ22に対応している。作者によれば前から順番に読むのではなく、タロットの結果で出た章を読み、その内容を占いの結果として読み解くこともできるとか。
折角なので、この作品のためだけに生まれて初めてタロットカードを買ってみた。巻末に載っている方法で選び出したカードは「皇帝」。
しかし読んではみたものの、完全に初見で、巻頭のWho'swhoにも目を通してなかったのでやはり消化不良に感じ、結局は最初から順番に読んだ。
内容としては、ナポレオン戦争時代を背景にした、セルビア人3家族の物語。寓意に富んだ幻想的な文章なので、どこか神話を読んでいるような気分になる。性的なネタもばんばん出てくるのだが、乾いた筆致のためなまぐささはない。むしろ独特の表現で綴られる閨房の描写には、時には笑ってしまうこともあった。「風の裏側」にも出てきたが、「舌でボタンを外す」っていうのはなかなか好み。
それにしてもこの作家の魅力は表現しにくい。私自身、「好きな作家は?」と問われても、パヴィチの名前はまず出てこない。
しかし本を閉じた後、何とも言い難い余韻が残り、時間を置いて時折ふと心に浮かんでくる。正直、似たような雰囲気のものを挙げようとしても思いつかない。本当にパヴィチだからこその味わいだなと思う。
忘れた頃に今度はタロットを使って再読してみようかな。