- Amazon.co.jp ・本 (638ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879955852
感想・レビュー・書評
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去年最大の発見は辻征夫だった。
この人を読んでからは生活が変わった。音楽が変わった。
一冊の詩集、いや、一編の詩ごとに新たな形式を探している。
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「きみがむこうから 歩いてきて/ぼくが こつちから/歩いていつて/やあ/と言つてそのままわかれる/そんなものか 出会いなんて!」(きみがむこうから・・・)
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「ねむるのは/ねむいから/おきるのは/ねむったから」(みずはつめたい)
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「窓の外に/風がいる//窓辺に行くと/風のやつ/頬にふれる//(お部屋の中を/通っていい?)/(いいよ)」(風の名前)
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「鼻と鼻が/こんなに近くにあって/(こうなるともう/しあわせなんてものじゃないんだなあ)/きみの吐く息をわたしが吸い/わたしの吐く息をきみが/吸っていたら/わたしたち/とおからず/死んでしまうのじゃないだろうか/さわやかな五月の/窓辺で/酸素欠乏症で」(婚約)
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「(世界中でそこしかいたい場所はないのに/別の場所にいなくてはならない/そんな日ってあるよね)//十歳くらいのときかな/ひとりで留守番をしていた午後/そおっと押入れにはいって/戸を閉めたんだ。/それからすこうし隙間を開けて/のぞいてみた/だれもいない/(ぼくもいない)部屋を!/なぜだかずうっと見ていて/変なはなしだけど/そのままおとなになったような気がするよ。」(だれもいない(ぼくもいない)世界)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1冊の本に5000円をかけたのは初めてだったです。
辻さんの詩「学校」を読んで、ぼくは会社を5回くらいさぼっています。
読むと次の日行きたくなくなるのです。
「学校」は、仮病をつかった先生が学校を休むのですが、同じ日に先生の娘も学校をずる休みして、一緒に川辺かどこかに散歩に行きます。
お嬢さんはお父さんに聞きます。
明日学校いくの?
うーん、多分いくよ。
なんて会話をします。
彼はもう亡くなってしまったけれど、
彼の詩を読んで、学校をさぼったり、自転車でこけたり、変な俳句を作ったりするような人は稀にでてくると思います。
「辻芸に いわし雲飛ぶ 春一番」
今は秋だったかな、春だったかな、辻さんの詩をよんでると
なんだか季節がとんじまうよ。
道路の真ん中で立ち往生さ、まあいいやと眺めたらいわしが雲の上に
のって、泳いでたんだよ。うそではないよ。多分。