ホ-ルデンの肖像: ペ-パ-バックからみるアメリカの読書文化

著者 :
  • 新宿書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880084473

作品紹介・あらすじ

ペーパーバック研究から横滑りして、ハーレクイン・ロマンスから、果てはブック・クラブ事情へ-"日本エッセイスト・クラブ賞"受賞・アメリカ文学者による縦横無尽のビブリオ評論&エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 本が売れるのは良書だからでなく、マーケティングこそが肝であるということをハーレクインロマンスシリーズこそが実証してみせている。

  • アメリカで出版されているペーパーバック本の研究者が、サリンジャーの表紙デザインへのこだわりや、ハーレクイン・ロマンスの成立と受容の歴史、市民のあいだで広がった〈読書クラブ〉ブームなどを語る。


    表紙とタイトルから、てっきりサリンジャーその他のジュヴナイルやYA系ノベルの読者研究メインの本かと思ったら、中身の6割はハーレクインの話だった。だが、これがめちゃくちゃ面白い。
    著者によると、女性向けロマンス小説の源流は18世紀にイギリスで刊行された書簡体小説『パミラ』だという。この作品自体は西洋における散文小説の第一号ということで高山宏せんせいの本にも頻出するので名前だけ知っていたが、召使いの少女が屋敷の主人を道徳で説き伏せて惚れさせるという黄金パターンの源流でもあったのは知らなかった。
    ハーレクインがビジネスとして成立した経緯や、アラブ系陵辱モノが1920年代には既に生みだされ流行していたこと、包容力のある年上優男と孤独なワイルド系のブームが交互にやってくるヒーロー像の変遷、ハーレクイン小説とフェミニズムの対立と共闘の歴史など、世に「女性向けジャンル」と呼ばれるもの全体に適応できそうなトピックに興味が尽きない。消費される〈ポップカルチャーとしての読書〉にスポットを当てた論考が新鮮で、とても刺激を受けた。

  • おすすめ資料 第288回 (2015.6.19)
     
    表紙は The Catcher in the Rye のカバーアートを元にしたデザインです。

    著者はアメリカ文学研究者ですが、この本では興味の対象をペーパーバックからハーレクインロマンス、さらにオプラ・ウィンフリーのブッククラブへと拡げて語り、いわゆる「大衆的」なものの背景を読み解いています。

    勢い余ってハーレクインの翻訳にも挑戦しているのですが、結果は......。

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著者プロフィール

1963年、神奈川県生まれ。愛知教育大学教授。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻後期博士課程単位取得。専門はアメリカ文学・アメリカ文化。著書に『S先生のこと』(新宿書房、第61回日本エッセイスト・クラブ賞)、『ハーレクイン・ロマンス』(平凡社新書)、『ホールデンの肖像─ペーパーバックからみるアメリカの読書文化』(新宿書房)、『紙表紙の誘惑』(研究社)、編著に『エピソード─アメリカ文学者 大橋吉之輔 エッセイ集』(トランスビュー)などがある。

「2023年 『14歳からの自己啓発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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