いま、息をしている言葉で。 「光文社古典新訳文庫」誕生秘話

著者 :
  • 而立書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880594101

作品紹介・あらすじ

古典はもはや読むに値しないのだろうか、いや、噛めば噛むほど味わい深く、そこには人がものを考えるためのエッセンスが凝縮されている。古典にこそ読書の醍醐味はある。そんな信念のもと、数多ある外国文学・思想を新訳し、文庫シリーズとして刊行する企画を立ち上げた。企画段階では「そんなの夢ですよ」と一蹴され、制作に入ると文学性とビジネスの板挟みに苦悶しながらも、訳者と肩を並べて翻訳を練りに練る。編集長を退いた後も販促イベントを積極的に企画し、市場の活性化をはかる……。道なきところに道を拓く、光文社古典新訳文庫・創刊編集長の奮戦記。

感想・レビュー・書評

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  • ここ数年好んで読んでいる光文社古典新訳文庫を立ち上げた編集者が自ら語る物語。
    47歳の時に企画し、50歳で創刊。サラリーマン人生の終盤戦で本当にやりたいことを一から始められる胆力って素晴らしい。

    また、読んでみたい本が増えてしまった。
    • ホイットマン「おれにはアメリカの歌声が聴こえる 草の葉(抄)」飯野友幸
    • プルースト「失われた時を求めて」高遠弘美
    • シュペルヴィエル「海に住む少女」永田千奈
    などなど。

  • <私たちの光文社古典新訳文庫(?)はいかにして生まれたのか>


     光文社古典新訳文庫でフィッツジェラルド短編集『若者はみな悲しい』に出会った衝撃は、到底忘れられそうにありません。
     スコット・フィッツジェラルドは、短編の翻訳が大量に出回っている人気作家ですが、収録作品がよく重複するお人でもあります。「未読の作品が収録されているかも」と期待して本を開いても、既訳&既読ばかり……なんてパターンがありがち★
     ところが、『若者はみな悲しい』は、収録作品の半分近くが本邦初邦訳でした。喜びをかみしめたわけです☆

     このとき、私は大きな誤解をしました。てっきり、光文社"古典新訳"文庫とは、よく知られた文豪の知られざる傑作を発掘し、日本の読者にファーストコンタクトさせる企画シリーズだとばかり……。
     ですが、『若者はみな悲しい』は大いなる例外でした。光文社古典新訳文庫は、世に知られた古典文学にみずみずしい新訳で光を当て、再読する機会をくれるシリーズなのです☆
     他の本は本邦初公開じゃないの~? と知った瞬間、その場に突っ伏したのでした★

     勘違いから始まったお付き合いでしたが、古典名作の再読、再々読は味わい深いもの。古典文学は噛むたび増すスルメのような魅力で、以後ちょくちょくお世話になっているのです☆
     ちなみに新訳とは、私たちが普段使っているものに近い言葉遣いで訳すことを指しています。翻訳者の方々が、現代の読者に古典の素晴らしさを伝えるべく腐心されているのを感じながら読書できるのは、滅多にない幸せです♪

     私たちの光文社古典新訳文庫(?)はいかにして生まれたのか、創刊編集長が自ら振り返るのが本書。出版界の裏事情、編集者の生き方を明かすという性格も帯びていて、好奇心をそそります☆
     ただし、人の人生のネタ晴らしはしない方がよさそうですので、「読めば分かる」「とにかく読んでほしい」としか書けません……(それを言っちゃ、おしまいなフレーズですが★)

  •  光文社古典新訳文庫を立ち上げた方が、その周辺の出来事等をしたためられたもの。著者の方のそこに至るまでの編集者としての生活に始まり、光文社古典新訳文庫が出版に至るまで、そして実際に刊行されてから、それに付随して立ちあがった派生物まで、とても丁寧に辿ってあり、本を作ることというのが、たくさんの人と人との関わりによる、たくさんの手になるものだということを思い知らされる。積み上げられてきたたくさんの人たちの、本というものに対する強い愛情を思い知らされる。あらためて読み直したいレーベルだと思った。

  • お世話になっております、光文社古典新訳文庫!
    立ち上げた編集員が語る、誕生までとそれから。
    時折ちょっとジェンダー感が最新アップデートされていない空気があったのが引っかかったが、誕生に込めた思いは伝わった。
    実際動き出してからの話には翻訳者オールスターズと言って良いような方達の名前が次々登場し、エピソードにワクワクした。
    注が同見開き左端にあるのはほんといいです…。

  • honto店舗情報 - 駒井 稔さん講演会 『いま、なぜ古典を読むべきなのか――光文社古典新訳文庫を創刊して』
    https://honto.jp/store/news/detail_041000032378.html?shgcd=HB300

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    ドストエフスキー、カント、親鸞……なぜ、21世紀に古典が蘇ったのか!?
    古典はもはや読むに値しないのだろうか、いや、噛めば噛むほど味わい深く、そこには人がものを考えるためのエッセンスが凝縮されている。古典にこそ読書の醍醐味はある。そんな信念のもと、数多ある外国文学・思想を新訳し、文庫シリーズとして刊行する企画を立ち上げた。企画段階では「そんなの夢ですよ」と一蹴され、制作に入ると文学性とビジネスの板挟みに苦悶しながらも、訳者と肩を並べて翻訳を練りに練る。編集長を退いた後も販促イベントを積極的に企画し、市場の活性化をはかる……。道なきところに道を拓く、光文社古典新訳文庫・創刊編集長の奮戦記。
    http://jiritsushobo.co.jp/

  • 大手出版社編集者が、新企画「古典新訳文庫」の誕生をつぶさに紹介するエッセイ。プロの編集者の体力、教養、旺盛な好奇心、プロジェクト遂行力が横溢している。個人史と交遊史の部分も多いのだが、「古典新訳文庫」の成立が自らの人格を賭けたものであったことの表れだろう。
    第6章「本のフォーマット」の中に、「た。」の一字ぶら下げが美しくない、というくだりがあるが、その同じページ内の直後に、一字だけの「た。」の行を配置するというのは、編集者としてのイタズラ心。(p203)

  • 2022年5月25日読了

  • ふむ

  •  「古典」だからこそ、もう一度手に取ることから始まる。
     

  • 光文社古典新訳文庫の誕生のいきさつ。その様々な挑戦をつぶさに語ってくれています。翻訳者が大事なんだと、古典アレコレ、翻訳変えて読み比べしよう。

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著者プロフィール

1956年横浜生まれ。慶應義塾大学文学部卒。1979年光文社入社。広告部勤務 を経て、1981年「週刊宝石」創刊に参加。ニュースから連載物まで、さまざまなジャンルの記事を担当する。1997年に翻訳編集部に異動。2004年に編集長。2年の準備期間を経て2006年9月に古典新訳文庫を創刊。10年にわたり編集長を務めた。 著書に『いま、息をしている言葉で。 「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』(而立書房)、編著に『文学こそ最高の教養である』(光文社新書)がある。ひとり出版社、合同会社駒井組代表。

「2021年 『私が本からもらったもの 翻訳者の読書論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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