シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする (宣伝会議Business Books)
- 宣伝会議 (2008年11月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883352081
作品紹介・あらすじ
もっと都市は楽しくなる、もっとまちが好きになる。
感想・レビュー・書評
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シビックプライドとは、言葉通り、「市民が都市に対してもつ誇りや愛着」のこと。私は、いわゆる技術的な、ハード的な意味での都市・都市計画・建築といったものに対しては、最終目的としての関心は薄いです。
むしろまちへの愛着とか生活の幸福感のほうに興味の重心がある身として、この本はど真ん中の本でした。
シビックプライドは曖昧な概念です。
それゆえ、この本ではあえて厳密な定義をせず、西欧の都市事例(少し持ち上げすぎではないかと疑う。笑)を畳み掛けるように紹介することで、シビックプライドへの期待を高めてくれます。
みんな(この"みんなとは誰か?"問題は残る)が自分のまちを好きになると、こんなにワクワクするんだ、QoLが向上するんだ、という夢を持たせてくれました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オープンハウスロンドンに関する記事を探していて見つけた本。
「I Amsterdam」で成功したアムステルダムなどシティプロモーションやシティブランディングに関する海外事例を集めている。
「まちづくり」という言葉が好きではないのだけど、都市に愛着と誇りを持とうとする「シティプライド」という言葉は私は割と好きかもしれない。
2015年に「シビックプライド2」が発売されていて、こちらは国内編となっている。 -
シビックプライドとは何か?聞き慣れない言葉ですが、日本のまちづくりでしばしば出てくる地域の誇り灯、まちへの愛着灯、おらがまち灯といったところが意味合いとして近いでしょうか。
【シビックプライドは、愛である。】産業革命の大混乱(よそ者の集まり)の後に工業と交易で富を得た市民階級が力を持ち始めたヨーロッパで生まれた概念と書かれています。
本書の中では近年のヨーロッパで、広告、Web・映像、ロゴ、ワークショップ、都市情報センター、フード・グッズ、イベント、公共空間、景観・建築の8つのデザイン観点からシビックプライドの醸成に成功している事例を紹介しています。そのうちフランス・ボルドーは仙台と類似点があるので紹介したいと思います。
フランス・ボルドーは仙台と同様に、かつては川を象徴として中心に据えた都市で、近年まで「眠れる都市」として静かにたたずんでいました。近年になるとフランスの地方分権化が進み、ボルドーのアラン・ジュペ市長は「市民に開かれた公共空間」を唱えLRT導入や広場整備などの都市再生プロジェクトに取り組み、
『私たちはボルドーを愛するべきなのだ!』と訴えました。
整備された公共空間では「ワイン祭」や「川の祭り」といったまちの資産をより一層身近に感じることができるフェスティバルが開催され、市民生活の舞台となり市民の誇りとなっています。そしてプロジェクト発足のきっかけをつくったのが、アルカン・レーヴという建築センターのワークショップや教育プログラムによる市民への呼びかけだと言います。
「誰もが体験できる公共空間は、ボルドーのまちの魅力を伝えるメディアのように、人々の心を揺さぶり、それぞれの誇りを形成していく。」
本書では最後に「シビックプライドの育て方」を提案しています。
[誇りの種を探す][誇りの種を植える][誇りの芽を育て世話をする]を循環させる【シビックプライド・マネジメントサイクル】を提唱しています。
地域活性化を目的にしたイベント・フェスティバルなどが一過性で終わりがちなのは、このサイクルの全容を事前に把握することができていないからではないでしょうか。
都市のプロジェクトは、誰がどのように関わってどのように進めているのかが非常に見えづらいものですが、本書では成功事例のプロセスを中心に取り上げており、日本でのまちづくりにおいてもとても重要な内容と言えます。
※仙台でも広瀬川周辺をはじめとした公共空間の魅力を伝える「せんだいセントラルパーク」という取り組みを、都市デザインワークスが地域・市民と一緒に推進しています。
レビュー:豊嶋 純一 -
10年以上前の本になるが、今でも気付けることが多々あり、また、それを求められていると言うことが、この「シビックプライド」と言う考え方が日本でなかなか浸透していないことを表しているのかなと思う。
都市計画のあり方として、今般、「シビックプライド」と言う言葉を掲げている自治体はいくつもあるが、本当にこれを市民に抱いてもらえるように醸成しようとしているのはどれくらいだろうか。
本書で示している海外の事例のほとんどが、市民と一体となって行う、市民を巻き込んで行うために、細やかなワークショップをベースに、魅力的な情報発信を行なっている。
しかしながら、日本の自治体における計画は、読むのに一苦労する雑誌ほどの厚みの計画を作るだけ作った後、これを広く市民に知ってもらおうとする努力が足りていないと思う。
何のための計画なのか、誰に知ってもらいたくて作っているのか、このポイントを打ち砕かなければ、市民が自治体を見てくれようとはしないのでは内かなと思う。自治体が、基本となる計画を市民に伝えようとしないのだから。
本書に記された海外の事例を海の向こうの別次元の話として捉えるのではなく、自らの自治体でどのようにいかせるかを、真剣に考えなければいけいない。
遅い、と言うことはあっても、間に合わないと言うことはない。
そんな
、自治体のあり方を見直そうとさせてくれる良い一冊でした。
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改めて地域を考える、自身の活動とどう関連させていくか、インプットとアウトプットのバランス、toではなくwith
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ヨーロッパの地方都市の再生について、主にデザインの観点から書かれています。都市の写真が美しく、この本自体の見た目もいいです。
もちろん、外見だけでなく、都市を育てるためのヒントが多く書かれていて、ためになります。 -
"You are Your City"「あなた自身があなたのまちです」
このメッセージに代表される「シビックプライド」という概念は、「当事者意識を持つ自負心」を指す。プライドは個人が持つものであるが、そのプライドは個人の力だけでは完結し得ない。理想や救いが、都市とそこに暮らす人たちから与えられ共有されることで、自分自身が都市のかけがえのない一員であると認識し、都市に誇りを感じるようになる。
本書では、この「シビックプライド」を醸成するためのコミュニケーションデザインを、欧州各都市の事例を挙げて検討している。
特に英国での事例が多く取り上げられているのは、シビックプライドという概念が産業革命時代の英国各都市で先駆的に醸成されたものだったからだと本書は指摘する。
当時は市庁舎・大聖堂・ミュージックホールなどの大規模な公共建築を通じて、都市のプライドが礼賛された。そして両大戦を経て英国病の苦しみを体験した英国では、サッチャー政権からブレア政権の時代に各地で都市再生が叫ばれるようになる。それは物質環境に留まらないソフト面での充実、すなわち「人の再生」を志したものだった。
都市が人々の中で誇らしく偉大な存在になれるかは、都市が彼らのエモーションを喚起し、それに真摯に応えられるシステムとなっているかどうかに拠る。
そのツールとなるのコミュニケーションをどうデザインするかは、長期的な視野に立ち戦略性を持ちながらも試行錯誤していく他はない。
紹介されている事例が、日本の各都市にそのまま置き換えられるものでないことは当然だが、シビックプライドを醸成するために必要な要素がシンボル的に可視化されてくる。
マクロな視点の本だけに、ミクロな部分への示唆に富んだ一冊。繰り返し読みなおしたい。 -
環境システム学科の先生が特におススメしていた1冊!豊富な図版で読みやすい。
(芝浦工業大学大宮図書館スタッフT) -
都市のアクションの立脚点と技術の編集
9の要素
情報⇆空間(デザイン対象)、理解⇆体験(都市の受容のされ方)
共感する⇆アイデンティティを感じる、アクティビティ⇆シンボル
広告・キャンペーン ウェブサイト・映像・印刷物 ロゴ・ヴィジュアルアイデンティティ
ワークショップ 都市情報センター フード・グッズ
フェスティバル・イベント 公共空間 都市景観・建築
アムステルダム
I amsterdam
住む人・来る人を対象とした長期的マーケティング
都市の資産は人である。
異教徒の受容、自由と寛容の風潮
課題意識…世界的文脈におけるポジショニングの低下←EU発足による都市間競争
コンペによるデザイン競争
バルセロナ
都市の再生
開発に関してのTVCM
課題意識はコミュニケーション。意欲的な都市計画の自分ごと化
地区に権限と意思を持たせる
ハンブルグ
ハーフェンシティ。開発計画に対する徹底的な情報開示
12000人の居住者、155ha、既存の市街地の40%拡大
成長する大都市
新たなウォーターフオント。観光都市+競争力
12エリアに分割。
昔は倉庫・商店。
港湾地区と商業地区の分断。市街地が水辺を向かなくなった。
職住近接の複合的都市再生
市の委託業務。コミュニケーション関連がポインと
施設より先にオープンスペース
発電所リノベinfoセンター
自ら引き出す情報
visit watch study join
関与意識の循環
ニューキャッスル・ゲイツヘッド
造船・炭鉱ー文化主導の都市再生へ
観光産業の雇用
経済効果+アートの浸透
クリエイティブな都市再生
考えられたデリバリー
ザ・セージのws空間
マンチェスターの再生ー
テロがきっかけ。都市問題の解決マスタープラン
都市生活のミュージアム
産業博物館とは異なる。シンボリックなもの
社会弱者の子供への職業WS
URBIS都市を社会現象の面からとらえる
CUBE
フランス、ボルドー、ガロンぬ河岸開発
LRT、都市再生PJの税金、公共空間
水運貿易、道路拡幅による断絶
両岸を緑地で一体化する景観憲章
ブリストル・レジブルシティ
わかりやすい都市
単なるサイン計画にとどまらない都市デザイン
人の都市体験が都市の情報。都市が住民・来訪者と直接コミュニケーション
連結統合・アイデンティティ・都市マーケティング
イメージカラー、オリジナルフォント
不要なサインの撤去
政治勢力の拮抗→大きな開発がない。
断片を接続する。小規模デザインの統合
City ID きっかけをつくる、情報を与える、教える
ブラッドフォード
け織物、多文化主義政策
都市再生会社
地区を分割して計画。段階的コミュニケーションで徐々に拡大
オープンハウスロンドン
建築の解放
デザインワークショップ
政策立案者+子供
観光客ではなく市民がロンドンの建築を知るため
英国建築都市環境委員会
都市を楽しむことが理解への第一歩
デザインレビュー、日本の審議会制度や景観法規制とは異なる。法的義務はない。
シビックプライドとは何か
拡大を止めたことに自信を失うのではなく、在りように誇りを
地方分権と都市間競争
シビックプライドの原型たるヴィクトリア朝イギリス、産業革命
都市ー市民社会の象徴。自治の感覚基づくプライド
→差別化、都市間競争
ヴィクトリア朝の特徴、かつてないよそ者の集積
シビックプライドを象徴するメディアの創出。
1世紀を経て都市再生
サッチャー、自由経済、大規模再開発
都市再生
現在はグローバルなヒトモノカネ獲得競争。人口構成も複雑に。
行動の結集であるシビックプライド
プライド…都市戦略の道具の一つ?No。
そもそも個人のモノ。しかし個人のみでは獲得し得ない。
都市ブランディングの問題点
現状、ただの外部向けプロモーション
都市のイメージ形成には 3つコミュニケーション必要。
1都市計画・組織作り・助成といった具体的環境整備
2広告等によるイメージ形成
3派生する口コミイメージ形成
デリバリーのためのデザイン
デザイン…企画立案を含んだ設計または意匠
スペース・プロダクト・コミュニケーションに大別。
思想が視覚化・実体化されていることが重要。感性価値を創出。
都市は体験をデザインしているか??
段階的に体験を伝えるコミュニケーション・デリバリー
地域文化の歴史的発展過程=山崎正和
地域が文化を作る、地域で文化を作る、地域を文化が作るの三段階
すなわち都市づくり=市民を巻く込んだ文化形成活動
パブリックライフが作る風景
都市が再生する意義=集まって住むことの意味を最大限に
公共空間をコミュニケーションのメディアとして
価値判断が都市の総体として現れる
to Cから with Cまで
エンゲージメントリングの考え方
時系列ではない循環的モデル
選択、共有、絆を感じる
AIDMA、消費行動の心的プロセス
attention-interest-desire-memory-action
地域を出ない理由
航路削減した今治港の事例
地域資源と交流
街に自身が属すか、街が自身に属すか
まちを表現の舞台とする。
競争意識(外部視点)
編集意識(内部視点)
シビックプライドの主要構成概念
誇り、愛着、共感
共分散構造分析ー構成要素、決定木分析ーコミュニケーション要素
これらの直接効果/関節効果によって継続居住・推奨意向が醸成される
函館・高松・新潟・幕張
アルビレックス、幕張の小学校など
見過ごされたもの、新しく導入されたものの新規性
誇りの種を探す、 -
綺麗な写真で、シティブランディングの事例がよく分かる。
プランナー的に使いやすい要素が多々あり、とても助かった。