マーケティングのデジタル化5つの本質

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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883354740

感想・レビュー・書評

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  • 仕事の勉強のために購入した一冊。デジタルマーケティングの入門書としてはわかりやすい。
    デジタルマーケティングとは単純にWeb広告を打つなどの媒体のデジタル化ではなく、マーケティングプロセスの最適化のことを指す。本書ではデジタルマーケティングの本質を5つ取り上げているが、中でも3つ目の「事前のプランを実行する」から「運用して最適化する」という考え方が重要だと感じた。これまでのマーケティングではある程度プランを立ててから商品を宣伝し、ある期間が終わってからその効果を測るという手法を用いていたが、データドリブンマーケティングでは「リアルタイム」で施策と結果を相関させなければ意味がない。一度打ち出した施策をリアルタイムで見張り、どこが伸びていてどこに調整が必要かを理解することで、最適なアプローチをとることができる。これこそリアルタイムでデータが入手できるから実行すべきだと感じた。
    後半ではもっぱらDMPについての説明と今後の可能性についてだった。DMPをきちんと活用できれば、これまでマーケターが利用していた指標やペルソナ(年代、性別、デモグラなど)ではなく、ピンポイントでどのような人が自社の商品を購入したいかについて知ることができる、という点が面白かった。

  • 企業のデータ活用(デジタル化)でありがちな失敗例とあるべき考え方をまとめた本。データサイエンティストやアナリストよりはマーケティング担当者、経営者がデータドリブンな組織体制を考えるときに読んでおくと良さそうな印象。以下メモ。アナログ事業のデータ活用が本丸、事前プランありきで運用ではなく運用しながら最適化、データ活用は顧客理解のために無闇に集めればいいわけでなく最終的な施策を見据えて。Digitally Native Vertical Brand(DNVB)はファネルではなく円筒モデル。

  • 以下、書籍メモ。

    - [ ] デジタル発想は何かというと、デジタルテクノロジーやデジタルデータを駆使して、(1)リアルタイムに(2)高サイクルに(3)データドリブンに運用して施策を最適にする試み。
    - [ ] 顧客がデジタル化している今、顧客に最も近い部署の人、現場を知ってる人が、いかにデジタルテクノロジーとデジタルデータを用いて、施策実行のプロセスを変えていくかが重要。
    - [ ] 広告、コミュニケーションの領域で言えば以下が該当する。
    - [ ] テレビCMの到達量を、ターゲットが見たCMの「インプレッション数(表示回数)」にして把握し直す。
    - [ ] デジタル送稿の機能を駆使して「リアルタイム差し替え」を行う。
    - [ ] オンライン進行システムで雑誌の原稿制作作業を劇的に「短期間、かつ高サイクル」にする。
    - [ ] 消費者インサイトを仮説検証型だけでなく、消費者行動データから「文脈発見型」で洞察する。
    - [ ] スマホのロケーションデータで、「ターゲットをセグメント化」し、チラシやDMを最適解する。
    - [ ] 自分にとって価値のある見返りがなければ、誰も個人情報を提供しない時代がくるかもしれない。それならば、まず個人情報を抱えておく前提ではなく、「ユーザー一人ひとりにとって情報を提供してもいいと思える施策とは何か」「ユーザーにとっての価値は何か」を考えるべき。データドリブンとは大量のデータを集めることではなく、ユーザーの意見やニーズをまず考える姿勢のことであり、それはすなわち、マーケティング施策や打ち手から必要なデータ活用を設計するということ。

    データは入口からではなく出口(施策)から設計する。


    - [ ] 特に、企業の規模が大きければ大きいほど、バックオフィス側とフロントオフィス側に共通言語がないケースも多い。単に自社でファーストパーティデータを収集してDMPに入れればいいのではなく、顧客と接点を持つ側からも働きかけ、第三者から提供を受けるサードパーティーデータも使いながら、施策オリエンテッドなデータ活用が求められている。どんな施策を打つか、という出口からアプローチし、最適な判断やアイデアを生むために、データをいかに使うか、を起点とすべき。
    - [ ] 顧客に近いフロントオフィス側が、施策(どうしたいか)を理解し、デーすタを保有するバックオフィスとのコンビネーションでデータ活用の最適化を探るべきである。
    - [ ] デジタル化がもたらすのはマーケティングのプロセス革命であり、構造そのものの革命。これを推進するためには、デジタルの専門家や、データの専門家だけでは不十分。例えるなら、海外ドラマ24に登場する天才的な分析官、クロエ・オブライエンは、ジャックバウアーの指示があって成果が出せるように、企業のビジネスそのものを熟知している企業内マーケターが、データサイエンティストに指示をしないと、成果が出るデータ分析を行うことは難しい。マーケティングのデジタル化は、デジタルの専門家に丸投げではなく、マーケター、そして経営者こそ認識すべきである。

    マーケティングのデジタル化の本質について、5つに分類。(その1)「アナログ施策のデジタル化」こそ本丸。(その2)「ブランド単位のマーケティング」から「消費者IDベースのマーケティング」へ。(その3)「事前のプランを実行する」から「運用して最適化する」へ。(その4)「デジタルマーケティングに必要なスキル」の要件定義をする。(その5)「新たなディストリビューションパイプ」となるDNVB。

    - [ ] (その1)「アナログ施策のデジタル化」こそ本丸。これまで「職人技」と言われてきた属人的なプロセスを、デジタル化によって最適化していくと、成果が目に見えて分かり、ビジネスインパクトが大きい。例えばチラシやDMを誰に打つべきか、営業のアタックリストをどの順で並び替えるか。こうしたことにテクノロジーやデータを用いることで、最適なプロセスで顧客にアプローチができるようになる。日本企業では、「デジタル化に取り組もう」と言うと、他の企業と横並びで自社を比較して、「Instagramの施策をそろそろやっておいた方がいいのではないか」といった、アウトプットが「デジタル」である部分に意識が向きがちな風潮があるが、デジタル施策を実施することがデジタルマーケティングではない。最終的なアウトプットは、TV CMやDMのような従来からある施策かもしれないが、デジタルを活用することで、プロセスを最適化することができる。従来のアナログ施策のプロセス革命こそが、マーケティングのデジタル化の要と言える。
    - [ ] (その2)「ブランド単位のマーケティング」から「消費者IDベースのマーケティング」へ。消費の拡大を期待するのではなく、一人ひとりのライフタイムバリューを高める工夫をしなければならない。そのためには、ブランドごとに競合するのではなく、消費者一人ひとり、つまり「消費者IDベース」のブランド横断マーケティングが必要。消費者IDベースのブランド横断マーケティングとは、具体的にどういうことだろうか。例えるなら、かつての百貨店の外商。特定のニーズを持った顧客に対して、次に何を買ってもらえるかを考え、お得意さまの家に商品を持っていく。商品視点ではなく、顧客のニーズを考えて次の商品を探してくる。今、アメリカで浸透している、特定カテゴリーに特化したデジタルネイティブなブランドや、サブスクリプションのビジネスも消費者IDベース。マスプロダクトから個別プロダクトへと移行している今、マスマーケティングだけで押し切るのはもはや難しくなってきたからこそ、消費者IDベースのブランド横断マーケティングの重要性が浮き彫りになっている。ブランドごとのマーケティングから消費者IDベースのマーケティングへ移行するとなると、組織としても変革が必要。消費者視点でブランドに横串を刺し、東京在住の20代のAさんには、どのブランドのどんなメッセージがこれまで届いてきたのかを把握した上でマーケティングを行うといった役割の人が必要になってくるはず。ブランドマネジャー任せになって、ブランドごとの最適化にならずに、人口構造の変化、デジタル広告配信の今後を正しく捉え、自社ブランド競合からの脱却を、経営者が行わなければならないと考える。
    - [ ] (その3)「事前のプランを実行する」から「運用して最適化する」へ。マーケティングのデジタル化によって、マーケターの仕事は「事前のプランニング通りに実行する」から「マーケティングダッシュボードを用いてリアルタイムで状況を把握し、運用の発想で最適化を進める」へと変化していく。そのためには、マーケターは「ファンドマネージャー」のような役割を担わなければならない。投資をしていた企業の株価が下がったら「損切り」をして、違う企業の株を買って損を取り返す。運用によって利益を上げるのがファンドマネージャーの役割。マーケターの場合も、預かった予算を「消化する」のではなく、最適なマーケティングパフォーマンスにして返すのが仕事。であればマーケティング施策も、効果がないものは「損切り」をしてすぐ別のものに買い替えたり、リアルタイムでダッシュボードを見ながら様々な手を打ったりして、最適な結果を上げることが重要。
    - [ ] (その4)「デジタルマーケティングに必要なスキル」の要件定義をする。デジタル化の本丸は人材育成。今、必要とされる宣伝・マーケティング部門のスキルの理想像を描いた上で、計画的にスキルセットが組織内で養われていくような戦略が必要。

    - [ ] (その5)「新たなディストリビューションパイプ」となるDNVB。特定のカテゴリーに特化して製造直販ふる「デジタル・ネイティブ・バーティカル・ブランド」のこと。DNVBとは、デジタルネイティブを起点に特定のニーズを持ったカテゴリーのブランドを指し、特定の顧客をターゲットにしたもの。何を売るか、ではなく、顧客ありき。「デジタルにネイティブ」で、「バーティカル産業に特化」し、「ブランドを育む」事業形態と定義される。新しい価値を生む気概のあるスタートアップのDNVBが出てきていることから、従来品をECで販売する形態とは区別して使われている。「D2C」が「直接に消費者とつながる」という「販売経路や売り方」を重視し、収益を指標としているのに対し、DNVBは「新生のブランド資産を育成する」という、ブランドづくりの考え方を根源としており、成長領域への戦略的な投資として事業が位置付けられている。


    データドリブンマーケティングの準備。データを計測し、定期的に確認できる環境をつくる。
    - [ ] 良し悪しを判断するためのKPIを設定。
    - [ ] KPIを見える化。
    - [ ] 数値改善の仮説を立てる。

    データドリブンマーケティングを社内に浸透させることで得られるメリット。
    - [ ] ノウハウのデータベース化のメリット。
    - [ ] 人材教育面でのメリット。
    - [ ] 社内の意思決定面でのメリット。

    - [ ] マーケティング戦略を考えるとき、データを使って、どういう状態の「誰に」対して「どのような、どうやってアプローチするか」などのマーケティング施策を決定できる。
    - [ ] BtoCもBtoBも広告で行っているプロセスは本質的には同じ。まず、商品に興味を持ってくれる可能性がある人を「分母」に置く。例えば分母のターゲットを100人とする。そして、データドリブンマーケティングとは、データを用いて、この分母の人数のうち、(1)オンライン広告で興味を持ってくれそうな人が20人、(2)SNSで興味を持ってくれそうな人が30人、(3)オフラインで興味を持ってくれそうな人が50人と、手段(アプローチ方法)の切り口で分母の100人を仕分けし、「どの手段を取ると最適化・関心がある人の数を最大化できるか」を判断していく

    - [ ] データを用いてマーケティングや広告を行う、というと「ターゲットは20歳の男性で、関東地方に在住しておりー」と、ターゲティングの段階で絞り過ぎてしまうケースが多々見られる。しかし、データドリブンマーケティングの場合は「『分母』として適切か?」を考えることが非常に重要。ある焼酎ブランドの例を紹介。「自社のブランドページにアクセスした人」をターゲット(=「分母」)とし、そこから「ECサイト(手段)」で購入する人の割合を増やそうと広告施策を行いましたが、目標は達成しませんでした。果たしてこれは広告活動の失敗を示しているでしょうか?「焼酎ブランドのWebページにアクセスする」人達はどんな人達でしょう。ブランドのファンや、相当に関心が高い層ではないでしょうか。わざわざそのブランドサイトに辿り着いた人達は、特別な広告施策を打たなくても、ECサイトに限らず様々な販路で商品を購入している可能性が高い。とすると、そもそも当初設定した「分母」=「自社のブランドページにアクセスした人」が適切ではなかったと考えるべき。
    - [ ] データを取得するのにはコストがかかる。100人のターゲットから20人に絞って、そこからデータを用いて適切な集客の手法を導くのでは、分子(狙った成果に至った数)も必然的に小さくなり、コストに見合わない場合がある。どこをターゲットとしてすくい上げると、最終的に分子を最大化できるかを考えて、分母を設定すべき。「データを用いたけれど成果が出なかった」ケースのほとんどが、分母を限定しすぎて「当て切ってない」状態に陥っている。分母は「Webサイトに来た人」とは限らない。適切に分母を設定できれば、あとは分子を「様々な切り口」で試してデータを取得し、どのアプローチ方法が最も高い効果につながるのかを判定していけば良い。


  • データは溜めてから利用方法を考えるのでは無く、あくまでも目的を達成する為に活用できるツール。
    誰に何をどうやって届けたいか、結果どのような事が導き出せるか、導き出したいか。
    その為に、事前準備の仮説設計と取得出来るデータの環境整理を両軸で実行する事で、初めてデータドリブンでのプロセス改革が実現される。
    その為のDMP準備であり、MAの運用も結果、アナログ施策への転換や他領域への更なる利活用がもたらされる。

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著者プロフィール

(株)デジタルインテリジェンス代表取締役
82年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年(株)旭通信社入社。96年デジタルアドバタイジングコンソーシアム(株)を起案設立。同社代表取締役副社長に就任。01年同社を上場。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。08年(株)ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。10年デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。11年デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。『CMを科学する』(宣伝会議)、『新世代デジタルマーケティング』(インプレス)など著書多数。

「2017年 『デジタル変革マーケティング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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