- Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
- / ISBN・EAN: 9784886114273
感想・レビュー・書評
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柄谷行人の最新刊。政治を巡る対談ものです。
60年安保や全共闘運動、80年代終わりの冷戦終了、湾岸戦争での文学者アピール、9.11と帝国論、NAMの運動などについて語られています。
対談ものはわかりやすくなる分、この人独特の言葉の重みが減じられるので、どちらかというとあまり好みではありません。ただ、この本はそんなに悪くありません。
NAMの幕引きなどは批判があったにせよ、自らの責任として幕を引いたという下りは柄谷節が垣間見られて好きです。ただ最も政治的な運動であった湾岸戦争に対する「文学者の集い」を中上健次にまつりあげられたというようなことは、実情そうであったにせよ言うべきではないのではないかとも思ってしまいます。
またあまり論旨において本筋ではないかもしれませんが、『探究I』と『探究II』に触れた箇所で、
「当時僕の本(*『探究I & II』)がどうして読まれたのかわかりません。いま、これを読むと、ひどく抽象的な議論です。ただ、そのときには政治的なリアリティがあったのではないか。僕について、そのころの仕事の方がよかった、鮮烈だった、という人がいるのですが、それはそのときの話です。僕の考えが変わったわけではない。しかし、それ以降の状況では、もうそのときの言葉ではやれないのです」
と話す柄谷さんはひどく率直です。確かに『世界共和国へ』の言葉と『探究』の言葉はひどく違っています。『探究』の方が鮮烈だと感じるのも含めて納得できます。
ということで、星4つで。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
柄谷行人政治を語る (シリーズ/六〇年代・七〇年代を検証する 1)
(和書)2009年07月26日 14:00
柄谷 行人, 小嵐 九八郎 図書新聞 2009年4月
柄谷行人が政治について語ると言うことで大変興味深く読みました。内容的には柄谷行人の言う理念をいうものが現在の政治情勢・世界システムとがリンクした形で語られていて分かり易く面白い内容でした。
如何にも柄谷行人らしい内容で、理論的に可能性を追求しそれを根拠立てているところが凄い。アソシエーションと共同体の関係・中間勢力、単独者と原子化する個人。アソシエーションの中で単独者が鍛えられていくいうこと。モンテスキューを読んでみたくなった。 -
非常にわかりやすかった
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柄谷さんの学生時代がいちばん興味深かった。率直に、強固な信念を持ち続けているところ、その頭の良さに、とても感心してしまう。すごいですほんと。ただわたしの生きている時代と柄谷さんの時代はあまりにも違っていて、良くも悪くも柄谷さんは時代のひとであって、文芸批評はともかくその政治思想がいまもリアリティを持っているかと言われると、どうなのかなあみたいな。
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柄谷 行人の著作を初めて見たが、本質をついた見解がおおく、とても納得いく話が多かった。
他の著作も見てみようと思う。 -
(2009.07.23読了)
シリーズ名の「シリーズ60年代・70年代を検証する」に惹かれて読んでみました。
柄谷さんは、60年安保闘争ということなので、西部邁さん世代のようです。僕は、68年全共闘世代、団塊の世代です。
著者・柄谷行人の名前は見たことはあるのですが、何をする人なのか知りませんでした。読み終わってもわかりません。思想家?評論家?文芸評論家?文明評論家?
柄谷さんの個人的な話は、興味深かったのですが、世界の見方に関しては、言葉が上滑りしてよくわかりませんでした。
●なぜ経済学部に入学?(39頁)
僕は数学をやろうと思っていた。同時に、文学をやりたいと思っていた。それで、数学と文学の両方を満たすようンものはないか、と考えた。それなら、経済学ではないかと思ったのです。しかし、この考えは完全に間違っていました。
●「資本論」の構成(41頁)
「資本論」の第一巻、流通過程。第二巻、生産過程。第三巻、信用過程。
ふつう「資本論」というと、第一巻、第二巻しか読まないですね。面白いと思ったのは、信用過程ですね。
資本主義は信用の体系です。ある商品が、実際に売れるまで待っていたのでは、つぎの生産ができない。だから、売れたことにして、事を進める。その時に、手形が使われます。これが信用です。
●宇野経済論(44頁)
一般にマルクス主義者は、恐慌は資本主義の崩壊、社会主義の到来をもたらすと考えますが、宇野弘蔵は違った。彼は、「資本論」に書かれているのは、恐慌の必然性である、しかし、それは革命の必然性や社会主義の必然性ではないのだ、と言ったわけです。社会主義は、倫理的な問題だ。つまり、各人の自由な選択の問題だ、と。
●大学院は、英文科へ(46頁)
アテネフランセに通いフランス文学を読んでいたのですが、フランス文学科の大学院に進むには、卒業論文を提出しないといけなかった。英文科だと、論文が不要で、試験だけでよかった。だから、英文科の大学院を受けた。
●文学批評(50頁)
僕がやりたかったのは、マルクスを読むこと、しかも「資本論」を読むことです。それが文学批評だと思う。
●歴史の周期は、60年か120年
易の考え方では、60年周期。柄谷さんは、その倍の120年ではないかと考えています。
著者 柄谷 行人
1941年、兵庫県尼崎市生れ
東京大学経済学部卒業
東京大学大学院英文科修士課程修了
1969年、漱石論により「群像新人文学賞」を受賞
1978年、『マルクスその可能性の中心』で亀井勝一郎賞受賞
法政大学および近畿大学で教授
イェール大学、コロンビア大学、コーネル大学、UCLAなどで客員教授
現在、著述に専念
(2009年7月26日・記)