- Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
- / ISBN・EAN: 9784886292247
感想・レビュー・書評
-
海、鉱物、惑星、そして女性のエロティシズム。散文詩的な作品。「朝起きてこの本を書きはじめようとしたときわたしは咳をした。なにかが喉から飛び出した。わたしは絡みついた糸を切って引っ張りだした。ベッドに戻ってわたしは言った…心臓を吐き出したのだわ。」
再読。美しい散文詩の形式で書かれたシュルレアリスティックな作品。夢の様な世界は、鉱物質な世界。アナイス・ニンの日記を読んだ後なので、この作品に出てくるサビーナは、ヘンリー・ミラーの妻、ジューンである事がわかるし、マヒ症患者、現代のキリストは、アントナン・アルトーである事がわかる。アナイス・ニンの作品は、その生涯と切り離せない関係にある。もっと他の作品も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『日記 1931~34』を倒置し、置換し、4次元的なアクロバティックな方法で詩篇にしたものだ。ジェーンとアナイスはナジャ=アルベルチーヌと化したゴモラ的関係、弟に置換された父はドリアン・グレイのように幻想のアナイスと近親相姦を。アランディ博士の精神分析と占星術、凝視する仮面のデュシャン、現代のキリストに変容したアルトー。ひび割れた鏡は分裂した自己、踊るアナイス、ヘンリーは〈近親相姦の家〉か。目眩く色彩、冷たい鋼、ゴシック的美女、ビザンスに吹きつける暑く湿ったシムーン。死と苦痛と退廃。
ランボーの『地獄の季節』の影響もあるらしいが読んでないのでわからない。ミルボーの『責め苦の庭』は『ドリアン・グレイの肖像』日記に書いてあった。金井美恵子の『エオンタ』が似てる気がした。もしかしたら金井はアナイスの影響を受けてるのかな?グールドの『ブラームス間奏曲集,4つのバラード,2つのラプソディ』を聴きながら読んだ。
無名都市のように入り組んだ迷路とドルメンを持つビザンス。吹きつけるシムーンは死と退廃、苦痛と快楽を運ぶ。剥き出しの皮膚のない身体に食い込む砂。純粋無垢な恋をした人魚。美しかった声と引き換えに。ソドムとゴモラ。オピウム。詩人の狂気。