サイテーなあいつ (子どもの文学・青い海シリーズ 17)

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  • 童話館出版
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887501201

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  • 最低とサイテーとは、どこが違うのだろうか?
    この本で面白かったのは、小学4年生のカオルが同じクラスにいるソメヤに対して使う「サイテー」のニュアンスが次第に変化していくところ。
    つまり「サイテー」は文字通り負の感情を相手に爆発させて使うときの「最低」の意味じゃない場合がある。それどころか、まったく逆の意味のこともあるのだと教えてくれた。

    小学4年生のカオルは、親や先生やクラスメイトからは「いい子」と見られ、それを当たり前として学校や家で過ごしてきた。

    一方、同じクラスにいるソメヤはと言うと、逆にクラスのみんなから「サイテー」と言われるようなタイプ。自分ではなんでそう言われるのかがよくわからないみたいだけど、つばを相手に向かってとばしたり、キーという金切り声をあげたり…ソメヤ本人に悪気はないんだけどね。

    そんななか、カオルが楽しみにしていた一学期の席替えで、なんとソメヤと席がとなりになってしまう。カオルは思わずつぶやく。「サイテー」

    カオルがソメヤのことを周りと同調してサイテーと避け続けたのなら、この話はそれでおしまい。でもそうはならなかった。
    はじめはとなりの席のソメヤを持て余していたカオルも、ソメヤの一挙手一投足に嫌でも接しているうちに次第に気づいてきた。ソメヤって言うほどサイテーかな?
    たしかに幼稚だし汚らしいけど、ソメヤも心の底では自分と同じように悩み考え、そして不器用だけれども相手のことを思いやっているんだなあ、とカオルは段々わかってくる。

    さらにカオルには見えてきた。ソメヤよりも本当の意味でサイテーなものは別にあると。
    ・ソメヤを寄ってたかってサイテー呼ばわりするクラスメイト-
    ・仕事が忙しいからといって自分の子どもを1人で放置して「いい子」であり続けさせようとする親-
    ・普段は子どもの立場にいるように見えるのに、切羽詰まると上から目線で子どもの話を聞こうとしない先生-
    ・そして、いい子でないのにいい子で振舞おうとする自分-
    それらのサイテーと比べたら、ソメヤなんて全然サイテーじゃない。

    もし大人が子どもにすすめるためにこの本を手にしようとしたとき、「サイテー」とかの上品と言えない言葉がたくさん出てくるからと言って、大人から避けられる結果になるのだろうか?でもそれは違うと思う。
    ソメヤの言動はわけわかんないことがいっぱい。だけどカオルはゆっくり時間をかけてソメヤのいいところや悪いところなどのいろんなことを知った。読書もそんなものだと思う。

    でもやっぱり他人に対して軽い調子で「サイテー」と使う風潮にはなじめない。
    なぜなら、食事中に思わずゲブッと息が出たとき、小学生のときの娘から「サイテー」と言われたのが心の傷となって残っているから(笑い)

  • 「クラスの男の子ソメヤは、トロくてジゴチュウで、みんなからは浮いた存在です。でも、カオルちゃんが、かかわっていくうち、ソメヤ自身が変わっていきます。子どもたちが、悩み、悲しみ、よろこび、生きていく姿が描かれます。
    およそ9~10才から」

  • 読みはじめ、つまらない?と思ったが、どんどん面白くなってハマってしまった。

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著者プロフィール

花形みつる 編訳・絵
神奈川県生まれ。『ドラゴンといっしょ』で野間児童文芸新人賞、『サイテーなあいつ』で新美南吉児童文学賞、『ぎりぎりトライアングル』で日本児童文学者協会賞、野間児童文芸賞、『徳治郎とボク』で産経児童出版文化賞大賞を受賞。作品に「荒野のマーくん」シリーズ、『アート少女』『Go Forward!: 櫻木学院高校ラグビー部の熱闘』など多数。

「2021年 『落窪物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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