異議あり!生命・環境倫理学

著者 :
  • ナカニシヤ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888487375

感想・レビュー・書評

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  • ●「直接意図」と「間接意図」

    「5人の生命と1人の生命」
    「killとlet dieの違い」→前者は絶対許されないが後者は絶対許されない?
    「太ったデイブを吹っ飛ばす」→killともlet dieともいえない行為は?

    ポジティブな義務・ネガティブな義務(〜しない義務)
    ポジティブな義務がネガティブな義務に優先すると考える。→但し万能ではない

    ●臓器移植は社会制度として許容できるか
    →自分はしたくない・するという答えは答えではない。献身・”命のリレー”論では答えとはいえない。
    一方が自己犠牲、一方が利益(非対象)では長続きしない。
    利益―利益のシステムにするには売買も考えられないか?

    ●権力的ネットワークに対抗するためには、自分たちの側で権力のネットワークを形成していくことが必要

    ●「自然」はくせ者
    自然=それがいい とは限らない。
    難しい本を読むと眠くなる→自然=眠るほうがよい とはならない。
    ”クローンは不自然””体外受精は不自然”ロジックでは答えにならない。

    ●動物と人間

    動物は人間にとってあくまで”対象”であり、道徳的な行為”主体”にはなりえない(動物が人間に配慮する?!ことはありえない)→そもそも非対象
    安直な動物解放・保護はしょせん人間中心的

    ●「グローバル=西欧中心主義」にみるイデオロギー

    特殊な利害や特定の権力が働くとき、しばしばそれは「自分自身を普遍的なものであるかのように偽装する」
    →普遍的に見えるスローガンのもとで、どのグループ・組織の利害や権力が働いているのか、常にイデオロギーを疑ったほうがよい。

  • 刺激的な惹句にコーティングされた入門書。

    【版元】
    著者:岡本裕一朗
    ジャンル:倫理学
    出版年月日:2002/12/01
    ISBN:9784888487375
    判型・頁数:4-6・304頁
    定価:本体2,600円+税

    クローン人間、安楽死問題から、「環境マフィア」「エコファシズム」まで、この生々しい現実に応えられない“ええかっこしい”の応用倫理学に喝! 中絶の根本問題からあの『沈黙の春』の欺瞞まで、どこかおかしなこの学問を、いま徹底批判! 
    http://www.nakanishiya.co.jp/book/b134152.html

    【簡易目次】
    序章 生命と環境の「倫理学」は必要か 003

     第I部 生命倫理学はいらない!
    第1章 中絶はいかにして可能か 021
    1 自分の身体は自分のもの 023
    2 殺していいもの、いけないもの 037
    第2章 臓器移植を効率的に 052
    3 五人のために一人を殺す 053
    4 臓器は売買してもいい 068
    第3章 「自己決定」批判に反対! 085
    5 安楽死は容認できないのか 087
    6 インフォームド・コンセントは何のために 105
    7 遺伝子改造社会の生命倫理学 121

     第II部 環境倫理学の袋小路
    第4章 人間中心主義で悪いか 146
    8 動物の解放!? 148
    9 ディープ・エコロジーと生態主義 160
    第5章 予言された「人類滅亡」!? 177
    10 環境汚染と資源の枯渇は必然的か 179
    11 「豊かな社会」と「人口爆発」のジレンマ 199
    第6章 環境保護にはウラがある 213
    12 ファッションとしてのエコロジー 215
    13 政治としてのエコロジー 228


    【目次】
    はじめに [i-iv]
    目次 [v-xi]

    序章 生命と環境の「倫理学」は必要か 003
      「倫理学」はお説教か
      生命・環境倫理学は「倫理学者」の就職対策か
      生命・環境倫理学はもう終わったか
      応用倫理学は現実に応用できるか
      応用倫理学は三面記事か
      今さら何をするか

    ■第I部 生命倫理学はいらない!
    第1章 中絶はいかにして可能か 021
    1 自分の身体は自分のもの 023
      バイオリニストを救うべきか/ヘンリー・フォンダは来てくれない/身体の所有権と自己防衛/中絶の条件とは/「不正な殺し」と「不正でない殺し」

    2 殺していいもの、いけないもの 037
      「人間」は殺してもいいか/パーソンとは何か/バーソン概念の系譜/種差別主義批判はウルトラ種差別主義だ/まだパーソンではない/論証か定義か

    第2章 臓器移植を効率的に 052
    3 五人のために一人を殺す 053
      ダブル・エフェクト論と希少資源問題/「ネガティヴな義務」が「ポジティヴな義務」より優先するく殺すこと」は「死なせること」より悪いことか――路面電車問題/サバイバル・ロッタリー/サバイバル・ロッタリーは道徳的か

    4 臓器は売買してもいい 068
      相互性の倫理と献身の倫理/臓器移植に反対できるか/反‐臟器移植論/自己利益と自己犠牲/臓器売買の論理/自己決定権の強化

    第3章 「自己決定」批判に反対! 085
    5 安楽死は容認できないのか 087
      さまざまな「安楽死」/「非自発的安楽死」は何が問題か/「生命の質」が焦点だ/「消極的安楽死」と「積極的安楽死」の区別は意味があるか/「積極的安楽死」の条件/条件に反する安楽死」は不可能か/「滑り坂理論」は成り立つか

    6 インフォームド・コンセントは何のために 105
      パターナリズムから自己決定へ/インフォームド・コンセントのある風景/訴訟モデル/商業モデルか、コミュニケーションモデルか/パターナリズムの復権か/権力モデル

    7 遺伝子改造社会の生命倫理学 121
      「クローン人間」をつくろう!/技術的な問題は本質的か/「クローン人間禁止」はパターナリズムで差別主義だ/クローン人間は「自然に反している」か/現代のライフスタイルとクローン人間/「男性中心主義崩壊」への不安/選択的な妊娠及び中絶/遺伝子改造は認められるか

    ■第II部 環境倫理学の袋小路
    第4章 人間中心主義で悪いか 146
    8 動物の解放!? 148
      種差別主義批判/動物の中で差別する/道徳的共同体のメンバー/道徳的に配慮すべき対象/クラス差別主義

    9 ディープ・エコロジーと生態主義 160
      生命の平等主義は可能か/土地倫理/生態系主義/自然主義的誤り/「カテゴリー・ミステーク」と保守主義/人間中心主義でどこが悪い

    第5章 予言された「人類滅亡」!? 177
    10 環境汚染と資源の枯渇は必然的か 179
      『沈黙の春』の恐怖/牧歌的な自然崇拝と人間中心主義/トレード・オフ問題/『成長の限界』の衝撃/「限りある地球」と「均衡社会」/西洋中心主義/未来予測と環境倫理学

    11 「豊かな社会」と「人口爆発」のジレンマ 199
      「豊かな社会」の到来/ムダを目的とする社会/人口問題は何が問題か/社会問題としての人口問題/「豊かさ」か「人口」か

    第6章 環境保護にはウラがある 213
    12 ファッションとしてのエコロジー 215
      地球寒冷化論から地球温暖化論へ/枠組みとしての「地球」/なんとなくエコロジー/ポーズとしてのエコロジー/アンチモダンなエコロジー/イメージ戦略

    13 政治としてのエコロジー 228
      環境戦略と原子力/クジラ保護の意図は何か/環境保護運動の源流/国際政治における「脅威一定の法則」/環境マフィアと環境帝国主義/イデオロギーとしての環境問題

    註 [246-260]
    ブックガイド [262-277]
    おわりに(二〇〇二年九月十一日 岡本裕一朗) [275-282]
    事項索引 [284-288]
    人名索引 [288-290]

  • 浅羽通明氏推薦

  • タイトル通り、生命倫理学と環境倫理学に異議を申し立てるというものですが、個人的には世間の「常識」に異議を申し立てているように思いました。「クローン人間?何で駄目なの?」「地球温暖化で二酸化炭素削減はいいけど、それって裏があるのでは?」という感じです。我々の「道徳」といったものが、いかに脆いものであるか。それを認識したい人にオススメです。

  • 考えを整理するために、思考のための道具を手に入れるために、とっつきやすい倫理学入門書。前半、生命倫理学部分が刺激的。中絶、臓器移植、安楽死。凝りかたまった安易な結論をほぐしてスタート地点に立たせてもらったような気もち。残念ながら、環境の方はあまり印象に残らず。

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著者プロフィール

玉川大学文学部名誉教授。九州大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)九州大学。専門分野:哲学・倫理学。主要業績:『異議あり!生命・環境倫理学』(単著、ナカニシヤ出版、2002年)、『ネオ・プラグマティズムとは何か』(単著、ナカニシヤ出版、2012年)

「2019年 『哲学は環境問題に使えるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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