- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784891768522
作品紹介・あらすじ
推進/反対の立場を超えて集成された、日本初の原発文学アンソロジー。現在では入手困難な傑作五篇を収録。
感想・レビュー・書評
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原子力発電
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<閲覧スタッフより>
戦後日本文学にとってのひとつの大きなテーマ「核」。それは原爆であり、同時に安心なクリーンエネルギーとしての原子力であった。3.11の震災以降その存在は広く世に問われることになった。賛否を問わず、まずその存在を考えるヒントとして、先人たちの「核」文学を読んでみよう。
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所在記号:913.68||ニホ
資料番号:10225398
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野坂昭如の乱離骨灰鬼胎草が風刺的で面白かった。
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ボクは、原発推進派ではありませんが、
原発のある県で生まれ育った人間として、
今の脱原発論議には、違和感を持っています。
もちろん、今回の大震災をきっかけに、
原発問題に関心を持ったということは、
とても大切なことだと思います。
しかし、今の脱原発論議は、あまりにも感情的で短絡的です。
京都議定書はどうなったの? CO2削減はどうなったの?
原発と共に生きる地元の人々の生活のことを考えているの?
今、足りない電力はどうするの? 日本の景気回復はどうするの?
某有名人やデモもしかりですが、本屋の平台に積まれた
脱原発関連の本を見る度に、何を今更感がふつふつと。
ジャーナリズムと言いつつ、単に便乗しているだけじゃないかと。
それに近いことが、本書の最後でも、脱原発派の文芸評論家によって、
国民総意のような立場で、「解説」の中で原発文学を歪曲しており、
勝手に代弁するなという気持ちでしたが、それが‘今’なのでしょう。
しかし、本書の本編は、今の脱原発論議とは一線を画しています。
執筆当時は、誰の目にも止まらなかったであろう
原発を題材とした小説(短編、中編)を拾い集め、
小説集としてまとめています。
各小説が書かれた時代は、一編を除いてバブル以前のもの。
原発に対する賛否両論それぞれを題材としており、
時代背景も古めかしく、批評的にはB級評価かもしれませんが、
ビックリするほど辛辣で、今なら大変な物議となりそうな内容も…。
しかし、四半世紀を経て、
時代は、ようやくこれらの小説に追いついたのかもしれません。
来年には、
原発問題を題材とした小説も、たくさん刊行されることでしょうが、
本書に掲載された小説以上の小説は、なかなか出てこないでしょう。
巷にあふれている脱原発本などよりは、本書の方をオススメですね。 -
原発に賛成反対うんぬんではなく、純粋に読み物として読んだ。
最も印象深いのは、西海原子力発電所(井上光晴)。
原発(通常稼働中)の反対派、賛成派の混在する、不穏な空気が流れていた地域で、反対派の女性と賛成派の男性が火事で同時に、同じ場所で死亡した。その真相を追う一種のサスペンスなのだが、長崎の原爆の被爆者なども相まって、登場人物らの立ち位置、エゴが、何とも言えぬ読了感を与える。
ちなみに、カバー写真の提供は東京電力だそうな。