作品紹介・あらすじ
フランス北西部の港町ル・アーヴルで、名誉負傷の軍人として情報部門で英国軍との連絡の任にあたっているベルナール・ルアモー。妻を悲劇的な事故で亡くした彼は、心に大きな空虚を抱いたまま、戦局をペシミスティックに見据えている。兄夫婦や町の人々と交流し、淡々と日々を送っていたが、ある日たまたま乗ったバスのなかで、二人のかわいい姉弟と出会い…。クノーの故郷を舞台に、地方都市特有の雰囲気を伝える珠玉の郊外文学。
感想・レビュー・書評
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きびしい冬も終わりかとホッとするまもなく花粉ちゃんにやれれまくりん。目の玉はかゆいわ喉奥はいがいがするわハナタレはあまりに小僧大僧でまったくつらいわ。今年は特にきついな。なので寝そべって本読み。
こないだ『地下鉄のザジ』を見たら無茶苦茶なお話で、しかしリアルな世界はもっと無茶苦茶よってことなんでしょうプレミアムシネマさん、その原作を読む前にこっち借りちゃった。装丁がすんごく可愛い。
フランス北西部の港町ル・アーヴルを舞台に名誉の負傷軍人として情報部門でイギリス軍との連絡の任にあたるフランス軍人の短い休暇を描いた中編物。なんでかしらん「きびしい」というより「さびしい」冬物語でしたよ。戦争ってほんと邪魔くさいわ。
《「人間が実際に生きる人生はね、天気みたいにはいかないわ。あるときから雪がやまなくなるのよ。雪が降って降って降りつもって、それでも降りやむことがないと、ずっしり重くのしかかる苦悩になるわ。もう二度と晴れることはないってことが、おそらくは確実なの」
「雪の降るのは若いときよりも歳をとってからのほうがずっといい、そうは思いませんか? それに雪はきれいですよ、本物の雪は」》
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この小説で最高に美しいのは主人公が古本屋で女主人と会話をする場面だろう。閉ざされた空間で寂しいもの同士が心を通わせるでもなく過ぎて行く時間。その時間は、失われてしまう事で価値が生まれる。
自分がクノーを好きなのは、こういう寂しさを書いてしまうところだ。
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読まなくても良かった。主人公が気持ち悪い。でも、少女とは、
幸せな未来を築いて欲しい。死を覚悟して導いた結論なのかも知らん。
著者プロフィール
一九〇三年ル・アーヴル生まれ。パリ大学で哲学を学び、シュルレアリスム運動に参加。離脱後、三三年に「ヌーヴォ・ロマン」の先駆的作品となる処女作『はまむぎ』を刊行。五九年に『地下鉄のザジ』がベストセラーとなり、翌年、映画化され世界的に注目を集める。その後も六〇年に発足した潜在的文学工房「ウリポ」に参加するなど新たな文学表現の探究を続けた。その他の小説に『きびしい冬』『わが友ピエロ』『文体練習』『聖グラングラン祭』など、詩集に『百兆の詩篇』などがある。一九七六年没。
「2021年 『地下鉄のザジ 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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