渡辺一夫 敗戦日記

著者 :
制作 : 串田孫一  二宮敬 
  • 博文館新社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891779597

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  • フランス文学者の渡辺一夫の終戦前後の日記とその他の書簡など。日記は特高や憲兵の捜索を恐れてフランス語で書かれている。戦争末期の状況や知識人としてこの戦争に対する批判が書かれている。戦時下に仏文科の書籍の疎開に心を砕かれ、戦後その書籍が東大図書館の中庭に戻ってきたときの喜びと、自身の書籍の幾箱かが行方不明となったことの悲しみが書かれていて胸に痛い。

  • 夕日が射す居間にて読み終える。世間は三連休らしく、近所は静かで、西日だけがうるさい。わたしは先生の引くことばのように、太陽を直視することはできないらしい。南の空を見上げて、先生のことばを読み返す。

    「負けてはならない。さう思ふ。己の精神・思想に生きつくすのだ。死は恐ろしい。しかし、己の思想が敗れて死ぬのではなく、勝つならば死も欣ばしい。必ず勝つ。一日一日の情勢がこれを教へてくれる。決して情報局製の信念ではない。勝つものは勝つといふ現実の教へる確信だ。妻子に別れるのはつらい。しかし、これは思想の為に生き且つ死ぬ人間の忍ばねばならぬことだ。Rolland〔ロマン・ロラン〕のことばを想起せよ。封建的なもの、狂信的なもの、chauvinisme〔排外主義〕は、皆敗ける。自然の、人類の理法は必ず勝つ。Vive l'humanité.〔人類の栄んことを〕」

    まるで遺書を認めるかのような心、その底にある希望。正義は勝つとヒーローは高らかに笑う。実際の世界はべつとしても、それでも夢みるだろう。Vive l'humanitéと声をそろえるだろう。

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著者プロフィール

フランス文学者。1901年、東京生まれ。1925年、東京帝国大学文学部仏文科卒業。東京高等学校(旧制)教授を経て、48年、東京大学教授、62年、同大学名誉教授。文学博士。1975年、逝去。主な著作に『フランソワ・ラブレー研究序説』『フランス・ユマニスムの成立』『フランス・ルネサンスの人々』『戦国明暗二人妃』『世間噺・戦国の公妃』『世間噺・後宮異聞』など、おもな翻訳書にエラスムス『痴愚神礼讃』、ラブレー『ガルガンチュワとパンタグリュエル物語』など。



「2019年 『ヒューマニズム考 人間であること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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