高校生でも読める「共産党宣言」

  • パルコ
3.09
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891949747

感想・レビュー・書評

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  • 題名に銘打ってあるように、非常に翻訳されている言葉や例えがわかりやすい。
    現在進行形の「いま」に当てはめていろいろ考えてみる余白が残されている。

  • 門外漢である自分を基準にすれば、
    岩波文庫の「共産党宣言」よりも、
    間違いなく本書が優れていると感じた。

    名作といわれる古典は、
    内容が優れていると思っている。
    直訳された専門用語に頭を悩ますことよりも、
    本質を理解するほうが圧倒的に大事で、
    その点、本書はとても素晴らしいと思った。

    また、齋藤孝さんの序章がよかった。
    多様性を重視した現在の価値観を含め、
    読むときの視点をアドバイスされている。
    いろんな本にこういう「序章」があるといいなぁ。

    唯一、岩波のほうが優れていると感じたのは、
    迫力というか、切迫感というか・・・
    アジる感じは本書では随分丸くなっている印象。

    結局のところ、長くない「宣言」なので、
    直訳に近い本と合わせて、
    本書を両方読むのが一番いいと思う。

  • 訳本ではありますが、初めてのマルクスの本。
    高校生でも読めるということで、だいぶ意訳されている
    ようですが、初心者にとっては読みやすかった
    と思います。
    『万国の労働者を団結せよ!!』はこの本の最後の部分
    だったのか!!古典的名著であることは間違いないの
    だと思います。意訳とは言えやはり古典を読むことは
    非常にためになると思いました。

    意訳であるので正確にはわかりませんが、150年から
    160年以上も前の人物が、リーマンショックや
    日本での東日本震災以降の閉塞した状況、2
    極化した状況を言い当てているのが非常に驚きであり、
    マルクスの頭の良さ。論理展開の鋭さに同じく驚愕して
    しまう内容だと思います。
    『資本論』等も読む機会があれば挑戦したいと
    思います。

    数ある訳本のなかで、今回この本を選んだのが
    訳者が私と同じ年で、大阪出身のい人だったので
    なんとなく選びました。

  • 『共産党宣言のすゝめ』(齋藤孝)

    このように、「法則」が断言によってつくられると、今度はそれを信奉する人々が現れる。しかも概してこういった人たちは、他者に対して不寛容になってしまう。もし、自分たちの掲げる「正論」に反対する者がいれば、彼らを異端者として切り捨てるのだ。それが一番行きすぎた形が「粛清」という名の大量虐殺であろう。これはソビィエト連邦でも中国でも実際に起きたことであり、今もなお、起きつづけている。そういう意味で、『共産党宣言』は、反面教師として、人間が持つべき寛容さ、様々な考えを柔軟にとり入れる大切さを教えてくれる。

    明治時代の始まりを象徴する『学問のすゝめ』で、福沢諭吉は「賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによりて出来るもの」と書いている。だが、今の日本では貧しすぎて学ぶことさえままならないといったことが現に起きている。学びたいという意欲を持っていても、貧しさから脱せず、学ぶことができないのだ。だが、そういった事態を起こさないようにするのが健全な社会の発展というものではなかったか。


    本文


    世の中が「金持ち組」の思いのままになると、昔ながらの主人と家来の関係や親と子の関係、のんびりとした人づきあいが壊されてしまいました。主人や親をうやまうとか、神様を信じたり、忠誠心を持ったり、人情の温かさにふれたりといったことができなくなってしまいました。その結果、人々は、もはやお金しか信じることができなくなってしまいました。損得だけを考えて動く、冷たい人間になってしまったのです。

    そもそも、「金もうけの元手を個人が持たない」という私たちの考え方に反対するのであれば、自由や文化、法律などを引きあいに出すのはやめていただきたい。それらはみな、「金持ち組」にとって都合のいいようにつくられたものなのですから。それは、今の世の中にある法律が、世の中を自由に支配している人たちにとって都合のいいようにつくられたものであり、それが世の中全体にとっていちばんよいものなんだと、みんなに押しつけているのと同じことです。

    これまでの思想の歴史からはっきり言えることは、人が思ったり、考えたりすることは、現実の状況が変わっていくにつれて、同じように変化するということです。どの時代においても、世の中を支配している考え方は、その力を持っている人たちの考え方なのです。

    私たちの考えがめざすところは、昔からえんえんとつづいてきたこと、つまり人が他人からしぼりあげるために必要なお金、設備、土地などを持つことを完全にやめさせることです。それを実際におこなっていくなかで、昔ながらの考え方やものの見方とはあいいれないようになってしまうのも当然のことなのです。

    たんなる思いつきで平等な世の中をつくろうとしても、それは歴史の流れを無視しているので、時代が流れ、発展するにしたがって、意味がなくなっていきます。

    というのも、マルクスは、一致団結した行動と活発な議論をすれば、そのようなレベルアップは確実だと思ったからです。金もうけの元手を持つグループとの戦いで生じるさまざまなできごとや変化、勝利よりもむしろ敗北によって、人々は自分たちが選んできた方法の不十分さを思い知り、労働者が自由に生きられる世の中をつくるうえで本当に必要なものを見きわめられるようになっていくでしょう。


    訳者あとがき(北口裕康)


    この本をきっかけに興味を持って先に進むか、これ以上は時間の無駄と思うかは、人それぞれ。どちらでもいいと思います。

    東日本大震災を経て、多くの人が感じていることは、その軸とは別の軸に沿った世の中の在りようがあるのではないかという疑問や期待です。例えば、努力と賞賛、貢献と信頼といった値段のつけられないようなものを軸とした世の中は考えられないかということです。幸せを感じるためにはお金も必要ですが、それ以外の価値に沿ったものも必要だと思います。
    多くの人が今の世の中に閉塞感を持ち、このままじゃダメだと思っていますが、そこで思考停止しているように見えます。そのうち……変わりません。誰かが……変えてくれません。自分がこうなったらいいのにというビジョンを持つこと。おぼろげにでも、今よりいいと思える未来をイメージすることが何よりも大切なことではないでしょうか?どんなことでも自分の頭で考えて判断し、結果を他人のせいにしないことが、よりよい世の中を作っていくために必要なことだと思います。

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著者プロフィール

マルクス
1818‐1883。ドイツの経済学者、哲学者、革命家。20世紀においてもっとも影響があった思想家とされる。資本主義経済を分析し、エンゲルスと共に共産主義思想を打ち立てた。階級の解放と廃止というその思想は今なお受け継がれている。晩年は『資本論』の執筆に専念し、自宅の椅子に座ったまま死去

「2020年 『資本論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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