古文書にみる榎本武揚 〔思想と生涯〕

著者 :
  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894349896

作品紹介・あらすじ

近代日本の万能人に資料から迫る!
裏切り者か、新政府の切り札か――日本近代史において榎本武揚ほど評価のわかれる人物は他にいない。一般的なイメージでは捉えきれないその複雑な人間像と魅力を、榎本家に現存する書簡や、図書館等に保管されている日記・古文書類を渉猟しあぶり出す。膨大な資料を読み解く中でその思想、信条に触れながら、逆賊から一転、政府高官にのぼりつめた榎本武揚という人物の実像に迫る。『環』の好評連載に大幅に加筆し、単行本化。
[附]年譜・人名索引

感想・レビュー・書評

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  • 本著を通じて榎本武揚の通史を知ることができる。

    ①榎本は何故助命されたのか?
    (黒田との信頼関係だけではない)
    ・薩長の力関係
    ・北海道における薩摩の利害、北海道は薩摩閥
    →江戸時代の北海道物産の貿易
    →屯田兵(西郷隆盛発案)
    ・伊藤第一次内閣での幕臣で唯一入閣(黒田の影響)
    ・海軍におけるノウハウ取り込み(薩摩閥に取り込む思惑)

    ・対外的な受け止め方
    →南北戦争での敵方への扱いは融和的だった。野蛮な扱いを回避。

    ・福沢諭吉も助命に動く
    →『海律全書』は榎本でないと訳せない
    →但し、後年は痩せ我慢の説

    ②外交・ロシア通
    →駐露特命全権公使(マリア・ルス事件を契機)、シベリア横断によりロシアの実態を把握。
    →駐清特命全権公使として李鴻章と懇意に
    (ロシアと清に通じる貴重な存在)
    →ロシアを過大評価して旨の進言、日露戦争へ

    ③理系人
    ・北海道の価値を理解
    →石炭等の資源の宝庫、化学者の知識、外資導入排除
    ・東京農大創設
    ・文部大臣時に教育勅語をサボタージュ
    →後に井上毅が仕上げる
    ・政治的でない、徒党を組むタイプではない
    ・技術者的な実利主義、合理主義から発想された国づくり
    →技術立国の日本の基礎を作る

    ④日本人移民政策の創始者
    ・北海道開拓での成功
    ・欧米諸国の事例(植民地政策)
    ・近代資本主義の進展に伴う農村疲弊、人口増
    ・植民協会立ち上げ
    →メキシコへの移民を開始、失敗するも中南米への日本人移民の先駆けへ

  • 新政府で難問の外交問題をこなしていった。

  • 書簡・日記・報告書など自筆資料から実像に迫る。
    日本近代史上、榎本武揚ほど評価が分かれる人物はいない。逆賊から一転、政府高官にのぼりつめた男の実像に迫る。(2014年刊)
    ・はじめに
    ・第一章 外国への視線
    ・第二章 戊辰の嵐に、立つ
    ・第三章 蝦夷の大地、燃ゆ
    ・第四章 死を前にした化学者
    ・第五章 開拓史で鉱山調査
    ・第六章 日露交渉と「シベリア日記」
    ・第七章 降りかかる国家の難題
    ・第八章 隕石で流星刀を作る
    ・あとがき

    榎本家に残る貴重な資料をもとに執筆されており、興味深い内容となっているが、行間から、榎本を称える気持ちが溢れており、ややバランス欠いているきらいがある。

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著者プロフィール

一九三四年(昭和九年)、北海道空知郡上砂川町生まれ。北海道新聞社に入社し、事件を担当。在職中からノンフィクション作品を発表。退職後は札幌大学講師など。主な作品は『日本史の現場検証』(扶桑社)、『松浦武四郎 北の大地に立つ』(北海道出版企画センター)、『北の墓 歴史と人物を訪ねて』(柏艪舎)、『生還』(柏艪舎)など。1994年より道新文化センターでノンフィクション作家の養成塾、一道塾を主宰。札幌市在住。

「2022年 『小説を旅する 北海道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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