最高の結果を出すKPIマネジメント

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  • フォレスト出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894519848

感想・レビュー・書評

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  • 【はじめに】
    著者は、リクルートでKPI講師を務めたプロフェッショナルだとのこと。ここでKPIについて言っていることは非常にシンプルなことだ。シンプルに伝えることが、このKPIマネジメントを浸透させるためには必須の条件であるためであるからかもしれない。リクルートのビジネスを特異なものとしているモデルとして、「リボンモデル」が有名だが、この新規事業を成功に導くためのツールとしてもこのKPIマネジメントは威力を発揮してきたのかもしれない。

    【概要】
    ■ KPIとは
    そもそもKPIはKey PerformanceIndicatorの略である。
    KPIは何かのためにあり、それはKGI (Key Goal Indicator)であり、その目的のために最も重要な要素であるCSF (Core Success Factor)に関する数値目標をKPIとするのである。
    それらの関係を無視して数値目標としてだけKPIを設定するのはまず誤りである。事業成功(Goal)の鍵となっていなくてはならない、つまり「事業成功」とは何かを定義して関係者で共有するところから始める必要があるのだ。
    そしてそのために最も重要なプロセス(CSF)を探し出して、そのための数値目標であるKPIを定めるという流れになる。

    著者に言われるまでもなく、この流れを常に意識することができれば、半分以上は成功したと言えるし、それを無視した場合には最初から失敗することが運命づけられると言ってもいいような気がするのだ。

    ■ 失敗するKPI
    ・(KGIやCSFを意識できていない)出せる数値をKPIに設定する
    ・たくさんの(重要でない)KPIを設定する (できればひとつのKPI)
    ・現場でコントロールできない数値をKPIに設定する
    ・先行指標ではなく、遅行指標をKPIに設定する
    いずれも、KPIの仕組みを理解していれば、それがなぜうまくいかないのかがわかるはずだ。間違ったKPIの運用をしていると管理だけが大変で効果がないということで、後々にも禍根を残す結果になってしまう。

    ■ KPIの設定
    まずはKGIとのギャップ分析から始めて、何がCSFなのかを確認するというステップを踏むこと。CSFが何であるのかを認識することが最も大事だと言っても過言ではない。
    そして、そこからKPIの数値目標を考える際にはビジネスのモデル化やそれに基づく数字の分解(利益=売上-費用、など)を行うことが推奨される。
    最後に、そのKPIマネジメントをきちんと運用できるのかを確認するのである。そのときのポイントになるのは①整合性、②安定性、③単純性、だという。
    さらに、KPIが達成できない場合に行う対処や発動基準を決めておくことも重要だという。ここまで実施できていること、かつ実際に実行できることはおそらくは稀だろうが、ここまで事前に考えを走らせておくことは、KPIの設定そのものにもよい影響を与えることと思う。

    なお、ティップスとしても有効だと思ったのは、KPIに率を設定する場合には分母が変数になっていないか注意するというもの。本当はうまく行っているわけではないのに、その影響であることもう含めて分母が小さくなることで全体のKPIの数値が良好に推移する場合などは注意が必要である。さらには、達成のために分母を増やさないようにするという正しくない行動へのインセンティブになるようであれば、弊害ですらある。ただ、気を付けないとよくある間違いであり落とし穴であると思った。

    ■ KPIの運用
    本書では、KPIの運用としてPDDSが提唱されている。PDDSは、Plan(よく考えて)-Decide(すばやく絞りこんで)-Do(徹底的に実行して)-See(きちんと振り返る)のサイクルであるが、単純なPDSでもなく、PDCAでもなく、PDDSとしてDecideを加えたのは、判断を早くしてサイクルを回すことが重要であるという点であろう。
    また、振り返りをしっかりとやることも重要で、そのために犯人捜しではなく改善のための分析であることを関係者で納得してもらうことも必要となってくる。そして、振り返りも含めたPDDSのサイクルをしっかりと定めて、できるだけ早いサイクルで回すように勧めていくべきだという。リクルートでは施策の承認の段階でいつどのようにして振り返りを行うかまで含めて承認を得るようにしているとのこと。確かに意識付けのためにも有用かもしれない。

    【所感】
    この本で言われていることは単純なことを言っていて、太字の部分を追っていけば理解できると思う。特に前半の第二章までを何度か繰り返し読むとよいのではないかと思う。そして、もちろん知識も重要なのだが、何よりも実践が大事な類のものだと思う。

    また、著者が整理したKPIマネジメントは、Googleなどを筆頭としたOKRマネジメントとも相通じるところがある。KGIがObjectivesであり、KPIがKey Resultsである。KRが達成された際にはOが達成されるように設計されること、KRの数は限定されるべきであること、見直しのサイクルを短くすること、などは重要なポイントとして共通するところである。OKRは、目標管理制度に代わるもの(改善したもの)として、1on1をベースとしたCFR (Confirmation、Feedback、Recognition)という運用の手段が設定されていることや、高い目標を設定することが推奨され、目標の達成・未達を賞与などの評価に連動させないこと、などの特徴があるが、基本的な構造は相似形であると言える。
    何よりもKGIの共有がまず初めにあるという点が強調してもしすぎることがないほど重要なポイントだろう。

    著者が情報のインプットが重要と考えて、本を読むことを習慣化し、年に100冊をKPIとしている点は完全に同じだと思った。人生100年時代において継続的でかつ過去の知識・経験とは少し離れた情報をインプットするために本というメディアは非常に適している、ということだろう。さらにFacebookに書評をアップしているとのところも同じで(自分はブクログにアップ)、読書の効果を最大化するために非常に役に立つという実感があるということなのだろう。

    いずれにせよKPIマネジメントを検討するのであれば、必ず認識しておく必要がある要素が(前半で)コンパクトにまとまっているものとして高評価。一方で書籍としては、事例で嵩増しをしているように感じるところもあり、Webサイトの記事でももしかしたら十分な内容だったかもしれない。もちろん、この内容に価値がないということでは全くないのだが。

    そして何より、リクルートの強さも改めて感じた本でもあった。リクルート特有のリボンモデル(「カスタマー」と「クライアント」の持つ「不」- 「不便」「不満」「不安」などネガティブな概念の象徴、を解消すべく両者を結びつけるリクルートの新規事業モデル)を解説した『リクルートの すごい構“創"力』でも、「価値KPI」や「ぐるぐる図(PDSの図式化)」といったメソッドが言語化されて共有されていたことを改めて思い出した。
    価値KPIの必要条件として、整合性、安定性、単純性というこの本で書かれていることがそのまま挙げられていたり、「あなたの組織のKPIの目標数値を知っていますか?」に答えられるかどうかでKPIの良し悪しが決まる、など本書とその基本価値が全社で共有されていることが伺える内容であった。そのことが素晴らしいと感じた。

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    『Measure What Matters』(ジョン・ドーア)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4532322405
    『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』(クリスティーナ・ウォドキー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822255646
    『リクルートの すごい構“創"力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド』(杉田浩章)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4532321476

  • いたずらにKPI設定してしまうと、むしろ数値管理に手間を割かれて課題達成から遠のいてしまう。まずはKGI、CSFの定義が必要。それからKPIに落とし込む必要があると分かりやすく言語化されている。

  • 自分の実業務に落とし込むのは簡単には思いつかないものの、多くの実例特に読書量やダイエットなどプライベートに落とし込むアイデアは興味深く、ハードルが下がった。
    何か自分でも取り入れたい。

  • 易しくて初めてKPIを学ぶのにぴったりな本。2時間もかからずに読める。

  • KGI、KSF、KPIのわかりやすい説明
    KPI設定時の変動要素と固定要素
    KPI悪化時対応の事前コンセンサス
    振り返りMTGの事前設定
    などが参考になった。

  • KPIについて色々と頭の中にあったものがうまく言語化されたような感覚でとても良かった。これをKPIマネジメントの型とした上で実践としてどう活用するかを考えれると良さそう。

  • 仕事のKPIチームで必要な情報が手に入って満足。
    実践できるかは別だけど…

  • マネジメントに携わり、目標設定をすることになり読み始めた。
    KPIってなんですか?って説明できないまま使ってたと反省。意外とそう言う人多い。
    KPIを複数置く意味とかKPIマネジメントと数値マネジメントの違いとか、、、

    1冊目としてはめちゃくちゃおすすめ。

  • 数値マネジメントとKPIマネジメントは違う(数値マネジメントが不要なわけではない)。
    KPIは1つの数値である。
    KPIには、整合性(KPIを達成すればゴールを達成する)、安定性(数値が安定的にリアルタイムで取得できるか)、単純性(関係者にとって理解しやすいか)が必要。
    KPIが未達になりそうな時の打ち手を予め考えておく。

    悪い本ではないと思うが、仕事上の理由で義務感で読んだのと、自分自身があまりビジネス本が得意ではないので、評価は3。

  • KPIとは、事業成功の鍵を数値目標で表したもの。
    KGIとは、最終的な目標数値でKGIの遅行指標。
    CSFとは、目標達成に最も重要なプロセス。
    KPIを達成するためにCSFを着実に実行していく。それを振り返って再実行していく。振り返っての再実行が特に重要。

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著者プロフィール

株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長

「2023年 『「本当に役立った」マネジメントの名著64冊を1冊にまとめてみた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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